トランプ関税と石破訪米

トランプ大統領は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を新規に課し、中国からの輸入品には追加として10%の関税を課す、と公約通り発表した。

これに対する各メディアの報道は、たとえば2日の『時事通信』が「米経済に打撃不可避 3カ国への関税、1日発動―トランプ政権」との見出しを付けたように、どちらかといえばトランプ関税に否定的な論調が目立った。

また週明け3日の東京株式市場の日経平均株価の終値が、前週末比1052円40銭安の3万8520円09銭と急落し、ニューヨーク株もダウ工業株30種平均が続落し、前週末比122.75ドル安の4万4421.91ドルで取引を終えた。台湾株は3.5%、韓国株も2.5%それぞれ下落した。

が、メキシコ大統領は早々に麻薬密売に対処すべく国家警備隊1万人を国境に派遣することに同意し、報復関税を公表したカナダのトルドー首相も、トランプに電話して国境警備に関する追加協力を約束した。トランプは両国への関税を1ヵ月、交渉期間として延期すると発表した

トランプ関税に対して、市場が過敏に反応するのは仕方がないとしても、報道の論評が右往左往するのは如何なものか。トランプの「MAGA」や「America First」の基本的手法が「deal」、すなわち「商取引」であることは誰もが知るところではないか。

余談だが、「トランプゲーム」で「deal」といえば、「カードを配る」ことを意味するが、彼の父親がこうした彼の将来を予期してそう名付けたかは定かでない。

閑話休題。加・墨のトップによる上述の対応と併せみると、これまでのところトランプの「deal」は彼の思惑通りに進んでいるようだ。一方、10%の追加関税を課せられた中国は、当初、WTOに提訴するとの穏便な対応が報じられたが、2月10日から米国からの液化天然ガス、石炭、原油、農業機械の輸入に10~15%の関税を課すと発表した。トランプの対応が注目される。

そんな折、石破総理がトランプと相まみえることになった。課題は山積しているが、あれこれ言うよりも、筆者は例のUSスチールの一件を冒頭に持ち出したらよいと思う。そしてこう言うのだ。

日鉄は米国に工場を立地することが出来ますよ。それにより雇用創出も出来るし、米国車が米国製の日鉄の高品質な鋼板を安く使うこともできます。でも、それでは米国の鉄鋼業の仕事を少なからず奪うことになる。それなので、日鉄はUSスチールのインフラと雇用を維持するために投資を決意したのです。この投資は、米国の国益に必ずや資すると思います。

かなりの確率でトランプは乗って来るように思うが、どうだろうか。