自衛隊の予備役制度が不十分といいつつ「不都合な真実」を隠す元将官

防衛省HPより

元陸将補の矢野義昭氏の記事ですが、あれこれ細かな諸外国の事実を述べていますが、自衛隊に対してはべき論、根性論に過ぎず、そのくせ自衛隊の予備役に将校、将官が極端に少ないという事実には言及していません。

自衛隊は将校の予備役が殆どいません。いてもジュニアオフィサーばかりです。しかも将校の予備役の多くが医官や語学などの専門分野のエキスパートばかりです。これは世界的にモテも極めて怪異な予備役システムですが、そのことは矢野義昭元陸将補もよくよくご存知のはずですが、触れていません。これは極めて不誠実だと思います。

日本の周囲は世界一の軍隊過密地域、あまりに見劣りする自衛隊 周辺国の充実した予備役制度と日本の弱体な予備自衛官制度【JBpressセレクション】

「安保三文書」が、中期的に自衛隊員の総数を据え置くとしている判断の根拠としている日本の少子高齢化は、世界平均の兵員比率からみれば、本質的理由とは言えない。

人がいないのではなく、世界各国が行っている平均的な国を挙げた国防努力を怠っているため人が集まらないということが、自衛官の募集難、人員確保の困難の根本的原因である。

まず国民の国防意識が世界一低いことが挙げられる。

要は人集めの根性が足りんと仰っているわけですが、米軍にしろ英軍にしろリクルートは相当苦労しています。英軍など総兵力を減らしてもそうです。

それから他国との比較においても単純すぎます。陸続きの国境を有する国々と日本のような島国では国民が感じる脅威の度合いは違ってきます。また陸続きであれば、国境線に頭数を揃える必要があるので、とりあえず鉄砲は撃てますレベルの予備役を積んでおいてもある程度抑止力になります。逆に陸の国境線が多ければそれが必要ですが、我が国は違います。

自衛隊が募集難なのは、一つは待遇が悪いこと、これは岸田、石破政権で手当や施設を改善するなど環境は良くなりつつあります。

もう一つは、自衛隊がカルト宗教のような独善的で他責思考の組織だからです。

いじめやパワハラ、セクハラが蔓延しており、改善や提案をすると余計なことをするなといじめられて、追い出されます。

そのような陰湿で閉鎖的な文化を改善しようと努力もせず、悪いのはマスコミや政治だ、国民だと他人のせいにする。それは昔とちがってSNSなどで知る人が増えているので、「騙されて」隊員になる若者が減っており、またさっさと退職する隊員が増えているわけです。

更に申せば陸自では兵隊が足りないと言いつつ、銃剣道というOB利権のチャンバラごっこを専業で隊員にやらせているわけです。これで隊員増やせというのは世の中舐めています。しかもそのOB利権の維持の銃剣道大会の成績が部隊長の評価に関わってくる。更にその隊員に道具一式を押し売りする。やめる隊員が増えるのはあたりまえです。

ちょっと前まで陸自でトイレットペーパーやコピー紙をカネがないからと自腹で買わせていましたが、空海自衛隊ではそんなことはありませんでした。単に陸自が無能で、予算配分が歪んでいるからです。こういうことも外部から批判されて渋々と直していく、そういう組織に志願しようという若者が減るのは当然です。

陸自の元偉い人たちはこういう事実を隠蔽して、根性論や他責思考で部外者にせいにするから信用されないのです。

また、高等教育・研究機関でも国際情勢教育、軍事教育がなされていないことの影響が如実に表れている。

教育のみならず、日々国内外情勢について報道しているメディアの責任も大きい。占領下のプレスコード等に端を発する、メディアの反国家、反体制、反軍という偏向は今も継承されている。

こうやって全部悪いのは他人だというわけです。確かに教育機関の軍事教育の欠如は問題ですが、それと隊員の募集難は別でしょう。

わいせつ被害後も加害隊員の接触禁じず元空自女性隊員が国を提訴

航空自衛隊の女性隊員が2020年夏、九州の基地内で2階級上の男性隊員からわいせつな行為をされ、上司に被害申告後も職場で加害者から接触を受けていたことが関係者への取材で判明した。女性は国と男性隊員に計1210万円の損害賠償を求めて福岡地裁に提訴しており、「自衛隊側が被害申告後に配置転換などの適切な措置を怠り、精神的苦痛を受けた」と訴えている。

男性隊員は両基地間を往復するバスの運転業務を担当。女性は20年夏、昼休みに基地内の娯楽室で男性隊員からキスされたり、胸を触られたりするなどのわいせつ行為を受けた。

女性は即日、上司のセクハラ相談員に被害申告したが、男性隊員の運転業務は継続された。自衛隊側は21年3月、女性が被害申告後も男性隊員と基地内で遭遇したとの情報を把握したため、男性隊員に基地内への立ち入りを禁じ、同月28日付で運転業務から外した。

男性隊員は基地警務隊から強制わいせつ容疑で書類送検されたが、福岡地検は同年12月に不起訴処分(容疑不十分)とした。その後、女性は退官。自衛隊側は男性隊員の行為を「セクハラ」と認定した上で「故意かつ悪質」として停職1年の懲戒処分とした。

こんな胡乱な組織に大切な娘さんを就職させたいと考える親御さんが少ないと思いますよ。

国民一般の国防意識の欠落という問題とは別に、兵員比率が世界平均より3分の1も低く、約1億2500万人の人口規模がありながら、わずか4万8000人前後の予備自衛官すら募集難で、充足率が7割程度にとどまっているのは、国として真摯な世界平均並みの国防努力特に兵員の徴募に対する真摯な取り組みを怠っていることの証左でもある。

>少子高齢化は、怠慢の口実に過ぎない。

将官ともあろうものが、「断じて行えば鬼神も退く」みたな大本営作戦参謀みたいな根性論展開してどうするんですか。少子高齢化と人口減は歴然とした事実であり、根性論ではなんともなりません。事実を無視した根性論を現場に押し付けるからやめる隊員がおおいんじゃないですか?

また英独などの兵員比率は日本よりわずかに多い程度で、日本と大差はない。

その両国でも人員の補充には大変苦労しています。少しはJDWなどの英語の専門誌を購読してはいかがでしょうか?

予備役制度の拡充、予備自衛官の大幅増員を伴わなければ、「安保三文書」に述べられた防衛任務は完遂できない。予備役制度拡充は、啓発教育と国家施策により可能である。

いや高級将校の予備役を嫌ってきたのは貴方でしょう。予備役編入が容易になれば自分たちの解雇される可能性が増えますからね。国防よりも御身大事で他国に例のない歪んだ予備役制度を作ってきたのは貴方がた、自衛隊の偉い人たちでしょう。他人のせいにするのやめてもらっていいですか?

ぼくが英海兵隊の訓練センターを取材したとき夕食と一緒になった予備役の高級将校は普段はスイスの投資銀行で働いていた人でした。自衛隊ではこういうことはないですよね。

将校がほとんどいなければ戦闘の維持なんてできませんよ。そんなアタリマエのことがわからない組織に何兆円も予算をつけるのは税金のムダ遣いです。まるで戦争しない前提です。国営サバゲチームであるならそもそも予備役いらないでしょう。戦死傷者はでないのですから。全廃でいいでしょう。

こういうべき論を振り回して、ダウンサイジングすべき部隊を縮小しないで新しい部隊をボコボコ立ち上げるから既存の部隊の充足率は低くなって北海道の部隊など充足率4割程度の部隊がゴロゴロです。とても戦闘できる体制にない。それでも無帝国軍を気取って部隊も定員も下げない。

人員は拡充できるはずだ。できないのは政府とマスコミと国民が悪いと喚いているだけ。

率直に申し上げて、現実見ろよと言いたくなります。

まるで注射を嫌う子どもが、注射は嫌だ、風邪になったのは親と医者が悪いからだ。
オレは悪くないから、注射するなと喚いているのようなものです。

身を切る改革をする度胸も、責任感もなく他人に責任を押し付けるような連中が戦争指導して勝てるわけがないでしょう。

手榴弾と軽装甲機動車の後継の小型装甲車について陸幕広報に質問していたのですが、回答がきました。

Q1 手榴弾が更新されるという話を聞きましたが事実でしょうか。

⇒手りゅう弾の訓練等での使用状況や残りの保有数を踏まえつつ、必要に応じて
更新してまいります。

以前の大臣会見の質問時は更新はしないという話だったので、なにか心の変化があったようです。

Q2 手榴弾ポーチを支給していないと聞いておりますが事実でしょうか。

⇒手りゅう弾ポーチについては、中央即応連隊、各師旅団の普通科連隊等の部隊
に対して整備しております。各部隊の保有数は、保全上回答を差し控えさせていただきます。

ぼくが聞く限り、普通科のひとたちから手榴弾ポーチは支給されていない、と聞いております。回答はこれと矛盾しており、これは現場での取材を続けます。それに保有数が保全の対象というのは普通の軍隊でありえない発想です。

Q3 小型装甲車ですが、候補2つとも落とされ仕切り直しと聞いております。その理
由を教えていただけますか。また、担当部署に取材できますでしょうか。

⇒お尋ねの小型装甲車は、現在、陸上自衛隊で研究開発している「次期軽装甲機
動車」の取得にかかる事業と認識しております。次期軽装甲機動車」に係る試験等は、現在も継続して実施しております。なお、具体的な試験等の状況は、今後の事業推進に影響を及ぼすことから、回答を差し控えさせていただきます。

これは他国であれば公開する内容です。税金を使って選定して、トライアルを行った候補が全部不採用だったというのであれば、陸幕と装備庁には相応の説明責任があります。

この回答であれば、それが事実だか検証のしようがなく、最終的な候補が決まって予算を要求されて初めて納税者は知ることとなります。以前のコマツの8輪装甲車の不採用は公表したのですから、これが事実であれば公表すべきです。

【本日の市ケ谷の噂】
ウクライナとガザでの戦闘から洗練された戦闘外傷救命の教育プログラムであるITLS High Thretコースを日本国内でも開催する動きもあるが、アメリカ本部で受講したことが無く、国際会議にすら出席していない清住哲郎防衛医大教授が主催するので、現行の救急法を民間人に教える程度の内容に小さくまとまり、自衛官の救命には役に立たないばかりか大きく後退する、との噂。

財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)

財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年1月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください