米実業家のイーロン・マスク氏は10日、対話型AI「ChatGPT」を運営するオープンAIの買収を974億ドル(約15兆円)で提案したことが明らかになりました。
マスク氏はオープンAIの共同創業者の一人ですが、同社の営利化方針をめぐって対立し、2018年に経営から離脱しました。その後、オープンAIの営利企業化が創業時の理念に反しているとして、同社とCEOのサム・アルトマン氏を訴えていました。
マスク氏の弁護士によると、買収の提案はオープンAIの理事会に対して行われ、NPOの買収を通じて同社の支配権を握る意図があるとされています。
アルトマン氏とマスク氏 Wikipediaより
オープンAIは2015年にNPOとして設立され、NPOが傘下の営利部門を監督する独特の企業構造を持っています。しかし、2024年12月に営利部門をNPOの支配から外し、グループ全体の中心に据える再編計画を発表しており、この計画が現在進行中です。
マスク氏の提案は、NPOの資産価値を高く評価し、再編後の持ち分を増やすことで、外部投資家の株式取得を抑える狙いがあるとみられます。
マスク氏は、自身のAI企業「xAI」や複数の投資ファンドを通じて買収を進める考えを示し、より高額での入札も検討しているとされています。一方、オープンAIのアルトマンCEOはこの提案を即座に拒否し、X(旧ツイッター)上で「お断りします。もし望むならツイッターを97.4億ドルで買いましょう」と投稿しました。これに対し、マスク氏は「詐欺師」と返信し、応酬を繰り広げました。
アルトマン氏とマスク氏の仲はもともとよいものではありません。
オープンAIのCEOであるサム・アルトマン氏は、「マスク氏の生き方は、おそらく不安から来ているのでしょう。彼のことは気の毒に思います。彼は幸せな人ではないと思います」と語りました。また、アルトマン氏は、マスク氏が政策や大統領の意思決定に大きな影響を及ぼしているとは考えていないとも述べました。
マスク氏は、オープンAIの理念を元に戻すことを主張していますが、これまでの訴訟はOpenAI独走に対する焦りの表れと見られています。
今回の買収提案は、オープンAIの今後の経営戦略や資本構造に大きな影響を与える可能性があります。
オープンAIはこれまで営利企業を通じて資金調達を行い、NPOへの出資は受け入れていませんでしたが、2024年10月時点で営利企業の評価額は1570億ドルに達しており、さらなる資金調達により3000億ドルを超える可能性も報じられています。