令和に大学へいくと貧乏になる

黒坂岳央です。

文部科学省の学校基本調査によると、2024年度の日本における大学進学率は59.1%と過去最高を更新している。今や中卒、高卒がマイノリティになる「大学全入時代」へと突入した。

その一方で大学の価値はひたすら低下が続いている。アメリカ市民の5割超が「大学の学位は取得コストに見合わない」と回答しており、AI失業も話題になり、ブルーカラー職が見直されている。

もちろん、全員そうなるとは言わないし、今後も依然として大学で学ぶ価値は残るだろう。実習などを伴う医学部などはその筆頭である。

しかし、これまでのような「とりあえず大学で将来を考える」といった多くの人が考える「モラトリアム進学」は全く勧められない時代になった。

CrispyPork/iStock

大卒になると職業の幅が狭まる

よく言われる意見に「大卒になって損をすることはない。給与も優遇され、仕事の選択肢も中卒、高卒より幅が広がる」というものがある。筆者もこれまで散々、このような意見を聞いてきた。これは事実としては正しいが、現実として正しいとは言えない。

一度、大学生を経験してしまうと周囲の学生との就職先や周囲の意見の影響を強く受けることで、大卒というプライドも手伝って「デスクワーク職」ばかりが目に入るようになるなど、逆に職業の幅が狭まると思っている。

大卒で現場仕事についた人を「せっかく親が大学まで行かせてくれたのに」といった職業を下に見るようなことを言う人もいる。今どき、さすがに表立ってそんなことを言う人は少なくなったが、平成からの時代の変化についていけず、そのように考える人はまだまだ少なくないだろう。

だが、完全に時代は変わった。もうこれからの令和の時代に「せっかく大学を出たのだから」という考えを持つと、職業の幅が極端に狭くなり、人生で大きな損になりかねない。

AIと戦う時代へ

そしてこれからの競合相手はAIである。一部の人を除けばAIに勝ち目などあるはずがない。

議事録作成や簡単な翻訳、デザインや添削などすでに一部の業務はドンドンAIに置き換わっている。今後、この流れはさらに加速し、簡単な事務職を始め、これまで大卒者がやっていた仕事は本格的に不要になっていく。

産業革命では肉体労働が機械に置き換わった。当時は大きな混乱が起きたが、今の時代にそれに文句を言う人はいないし、コスト面でもパフォーマンス面でも機械に勝負を挑む人はいない。勝ち目がないからだ。単純労働はもちろん、分野によっては知的労働でもAI失業は起こり得る。

そうなりたくなければ、AIを使いこなす側に行く必要がある。翻訳の分野では「ポストエディット」といってAI翻訳後の仕上げの職が新たに生まれている。しかし、そのような職業の空席はこれまでと違って限定的だ。

今後は高い進学コストや受験における機会費用を払ってモラトリアム進学をしても、人生が有利になるどころか逆に貧しくなってしまう。

確かに大学は楽しい。一部の私大文系は義務的に単位だけとったら、後はひたすら遊び回る楽しい大学生活を送る人もいる。だがその代償はあまりにも高くつく。大学入学後は全身全霊を込めて付加価値向上を目指すつもりがないなら、高卒から人手不足の業界で働くほうがよほどコスパが良いし、会社を選べば、給与も大卒を上回るところもある。

そう、令和という時代は(モラトリアムの)大学進学は「最悪のコスパ」なのだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。