
Yusuke Ide/iStock
石破茂は選択的夫婦別姓の法制化問題を前に進めたいと考えている。そして、この問題は時間が無いとも指摘する。果たして、それほど喫緊の問題と言えるだろうか?

日本は戸籍制度により、姓を夫側にするのが慣例のようになっているが、では社会的にもそれが優先されているかと言えば、そうではない。既に日本社会では旧姓、或いは通名制度が一般化している。在日外国人の中で、日本名の通名使用をしている例は枚挙にいとまがない。
では、何故、社会で一般化していることをわざわざ法制化する意味があるのだろうか?野党議員の中には、選択的夫婦別姓にならないことで悲しんでいる人がいると言う。本当だろうか?選択的夫婦別姓が法制化されないことが、人を悲しませている事態を引き起こしているのだろうか?
しんぶん赤旗によれば、「選択的夫婦別姓訴訟弁護団の寺原真希子弁護士は、改姓を望まない人が婚姻に際して不合理な二者択一を迫られ、その不利益は女性に偏り続けている。一日も早く制度を導入して」と、何か天地がひっくり返りそうな勢いで報じている。この弁護士の言う論理を推し進めれば、それは女性の権利、つまり人権問題ということになる。
では、選択的夫婦別姓問題の法制化の先にあるのは、一体、何だろう?
自民党の保守系議員の多くは、選択的夫婦別姓制度の法制化を進めることで、夫婦間の問題ではなく子供の姓を親が勝手にどちらかの姓にする人権問題に発展しかねないと危惧する。だから自民党は、むしろ通名使用を法制化すべきだという主張だ。

一方、パスポート記載の姓名の部分で、イミグレーションで問題が発生しているという人もいるらしい。「パスポート使用で不都合があるなら、戸籍名の通りの名前でパスポートを作ればいいではないか」と言う、ごくごく当たり前の指摘をされるのが、当然だと思うが、どうもこの人はイミグレーションでのパスポート問題が殊更、人生の大きな問題らしい。馬鹿馬鹿しいと、笑う前に、こういう変わった人もいると一旦、理解はしておこう。
では、パスポート使用の際、各国のイミグレーションでトラブルが起きている確率は、果たしてどれくらいだろうか?そもそも、そんなデータを誰も有してない。データが無いのは、大した問題じゃないからだろう。
また、巷間言われているのが、どちらか片方の姓に変わることによる喪失感だが、姓が変わることが、人生を左右するほどの喪失感を伴うと言えるのだろうか?これは感覚や感情の問題なので、個人の内心を他者が理解することは出来ないが、ただ、一般の感覚というのは、一般化されたものなので、これらも実際にアンケートを実施すれば良い。その際、独身者に聞くのか、既婚者に聞くのかでも結果は違ってくるだろう。
内閣府の調査によると、どちらかの姓に変更した際の利便性の問題点を指摘した回答は80%を超えている。確かに、婚姻により姓が変わることにより、様々な公的書類や金融機関、職場における姓の変更には、煩わしさが伴うものだが、それは手続き上の問題であり、それも含め、社会人としての責務の一つと捉えることは出来ないだろうか?
一方、感情的な喪失感を伴うと回答しているのは1割程度だ。これが、選択的夫婦別姓制度の法制化の根拠にはならないことが、データで証明されている。
また、仮に通称使用が広がれば、多くの問題が解決すると考える人は6割に上り、通称使用が拡大しても、利便性の解決には繋がらないと考えている人よりも多い。

自民党内で選択的夫婦別姓制度の法制化に慎重論を訴える多くの議員にあるのが、この子供の姓の問題だ。
■
以後、続きはnoteにて(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。