ホンダと日産自動車は13日、昨年12月から本格的に進めていた経営統合に向けた協議を打ち切ることを決定しました。これにより、日本を代表する自動車大手同士の統合は実現しないこととなりました。
両社は協議打ち切りの理由について、「意思決定や経営施策の実行スピードを優先するためには、統合を見送ることが適切であると判断した」と説明しています。
しかし、実際には統合に関する意見の隔たりが大きく、社内での反対の声が強まったことに加え、互いに不信感が募ったことが、協議打ち切りの要因となったとみられます。これに伴い、日産自動車の筆頭株主である三菱自動車工業も、ホンダと日産の経営統合協議の枠組みへの参加を検討していましたが、今回の協議打ち切りを受け、関連する覚書を解約することを発表しました。
ホンダの三部敏宏社長は記者会見で、「敵対的TOB(株式公開買い付け)を検討したことは一度もなく、今後もその予定はない」と強調しました。
経営統合の協議が打ち切られたことで、日産はより一層、経営の立て直しを迫られる状況となっています。今年度の決算では、最終損益が800億円の赤字となる見通しで、業績の悪化が鮮明になっています。
この要因として、アメリカ市場での販売不振によるテコ入れ費用の増加や、希望退職などの人員削減に伴う損失計上などが挙げられています。
こうした状況を受け、日産は経営再建策として、
- 2026年度までに生産能力を現在の500万台から400万台へと削減
- 9000人規模の従業員削減を実施し、うち6500人については2025年度までに削減する
- アメリカでは生産ラインの集約を進め、工場の稼働率を引き下げることで人員体制を見直し、希望退職を募る
- タイでは工場の生産を集約し、人員削減を進める
この再建策により、合計で4000億円規模のコスト削減を目指すとしています。しかし、収益改善には十分ではないとの指摘もあり、さらなる対策が求められています。
こうした状況の中、台湾の大手電子機器メーカーでEV事業にも参入している「ホンハイ精密工業(フォックスコン)」が日産に関心を示していると報じられています。これについて、日産の内田誠社長は「ホンハイ側の経営陣と直接協議したことはない」としながらも、「単独で生き残るのは厳しい状況であり、新たな提携先を探す可能性は排除しない」との考えを示しました。
ホンダと日産の経営統合は、戦略の違いや社内の反対意見、信頼関係の悪化によって実現には至りませんでした。特に日産は深刻な業績不振に直面しており、大規模なコスト削減と再建策を進めながら、新たなパートナーを模索することになりそうです。