Yalta2.0っていうホラー

ホントはこんなに長い引用しちゃいけないんだろうけど、Bloombergを購読してる人は少ないと思うので、悪しからず。

Bloomberg Webが2月12日付けで”A World Order According to Trump, Putin and Xi”というコメンタリーを載せていて、“Yalta2.0”って別のタイトルも付いている。ちなみにヤルタ会談が終わったのは80年前の一昨日(2月11日)。

中身はホラーだ。曰く;

今年は第二次世界大戦勝利80周年の年。プーチンは2010年の65周年行事※)に準って記念行事を準備していて、既に習近平を招待、習は既に出席を承諾しているそうだ。

プーチンはトランプも招待するのだろうか?もし対独戦勝利記念日の5月9日前に露宇戦争を停戦に持ち込むことができれば、トランプは自分の外交成果をアピールする格好の場だと考えてモスクワ行きが現実味を帯びる。

しかし、プーチンはトランプよりもっと大きな絵を描いているかもしれない…以下はこの記事が描くありうべきホラーの絵姿。

Putin may have bigger plans in mind. He has long sought a modern version of the 1945 Yalta agreement
Putin argued last year for a new “Eurasian security system” stretching from Europe to China. With Xi and Trump in Moscow, he’d have a chance to form a new Big Three of strongmen rulers.
Trump covets Greenland, Canada and the Panama Canal in the western hemisphere.
Xi wants to control Taiwan and the South China Sea.
Putin aims to restore Russia’s dominance of Europe and a superpower status that was lost with the Soviet Union’s collapse.
Trump says he gets on well with Xi and Putin, and a pact to reshape global security might appeal to all of them.“

上掲Bloomberg 2025-2-12

FTの外交チーフコメンテータ、ギデオン・ラックマンも ”Now welcome to the age of neoimperialism”って書き出しで、ヤルタ会談には言及していないが、よく似た趣旨の警告コラムを載せている。こんなホラーが現実化したらどういう行く末が待っているかについては、こちらのコラムの方が雄弁だ。

昨今「戦後国際秩序は動揺している」と言われる。「秩序」の実体は、人々がそれに信頼を寄せて信任している心理の集合のことだとすれば、こんなホラーが語られるくらいに信頼や信任が動揺して疑心暗鬼が膨らんでいるということは、秩序は既に崩壊が始まっているということだろう。

※)65周年戦勝記念行事は2010年の対独戦勝利記念日5月9日にモスクワ赤の広場で行われた。ロシアだけでなく米、英、仏、宇、波の兵士が一緒にパレードを執り行った。


編集部より:この記事は現代中国研究家の津上俊哉氏のnote 2025年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は津上俊哉氏のnoteをご覧ください。