農水省が備蓄米の20%にあたる21万トンを放出することを発表しました。去年の6-7月頃にすべきだったはずで「遅すぎる」と思います。昨年は23年より18万トン多く生産されたはずなのに市場から消えたとされ、挙句の果てに「本当に18万トン多く生産されたのか?」という疑問符をつける専門家もいます。今回の放出は32億杯相当で日本人全員の30膳分となりますがさてどうなるのか?スーパーに行けば確かに4000円台もありますが、安いものは3200円程度でした。メディアで「異常!」と叫ぶ主婦らに石油ショック時代のヒステリック先走りの様相も見て取れなくないです。メディアが煽っているような気もします。
では今週のつぶやきをお送りします。
物価高と株価
上記のコメの価格上昇を含め、報道では来月は〇〇が値上げとか、〇品目が値上げというニュースをわざと報じているのかと思うほど聞こえてきます。一方、賃金の上昇も確実に見られ、新入社員の給与も一流企業は30万円台から一部は40万円台に届く水準となっています。日本企業の第3四半期である10-12月期の決算が発表されていますが、見る限り私の感覚では悪くないのです。つまり、企業の売り上げは上昇し物価高のコストを吸収してもまだおつりがくる、そんな状態に見えます。
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売り上げが上がり、収益が上がるなら株価が堅調になるのは当然であります。現在の日経平均株価は昨年の10月から下は38000円弱、上は40000円強のレンジ相場なのですが、ここに来てチャートはレンジから三角持ち合いの形成に変わってきています。私のチャート分析が正しければ39000円から39500円の間に収斂しそうでそこで上か下にブレイクしそうです。私の見立ては当然ながら上です。日本の株価がバブル崩壊以降冴えなかった最大のひとつは理由はデフレだったからであり株価もデフレしてたのです。ところがこの1-2年、実際の価格上昇のみならず、国民が価格上昇の耐性を持ち、それを超えるメリットも感じ始めているとみています。金利の上昇は高齢者にとり預金金利として反映されるのでまんざら悪くないし、年金だって上にスライドするかもしれません。
東京で飲食系の友人と談義した際、「いまいくら払えば本当に旨いものが食べられるか」と聞いたところ、一人1万円が最低だろうと。焼き鳥ですらこだわればそれぐらいになると。別の友人と上野の老舗の居酒屋で鍋をつっつきながらさらっと飲んだだけで一人1万円は軽く超えました。今回、東京で感じているのは物価が西欧の水準にすり寄り始めている点です。そして古い価格に固執すると取り残されるのです。もう一つ気がついたのは建設現場が減っている点です。建設物価がかなり高騰しており、施主が工事に踏み込めないのでしょう。時間差を伴い、価格耐性があった家賃などにも波及するでしょう。街のべた張り不動産屋で賃料を見ると5年前とは比較にならない水準に来ています。ここから先は業績を伸ばせるところは伸び、淘汰されるところは淘汰されるように感じます。
トランプ氏に我慢する世界
トランプ氏が矢継ぎ早に様々な施策を発表するのは予想されたこととはいえ、やや食傷気味になってきました。矢面に立たされる様々な国の政府や官僚、企業の経営者に至るまでそろそろ不満の声が爆発するのではないかと思います。昨年、大統領選の後、私はこのブログでトランプ2.0は思うように運ばないだろう、理由は1.0の時のようなサプライズ感がなく、各国それなりに準備をしているからだと述べました。そして何度か指摘するようにトランプ氏の賞味期限の先は見えているのであります。一部からはトランプ流が引き継がれるのでは、という意見もありますが、個人的にはないと断言します。
アメリカのように2大政党の場合、人々の考えは時の政権に振り回され、初期は勢いや斬新さもあり、同意するものの途中から自分の意に合わないと考える人が増えます。これが政権交代が繰り返される理由であり、人々は確固たる不動の意志を持っているのではなく、最終的に自分にどれだけのメリットがあるかを知らずのうちに計っているのでしょう。トランプ流が4年後に引き継がれるとすればアメリカ国民が明白なメリットを感じる必要があります。その多くはコンビネーションであり、最終的には胸を張れることと過ごしやすさであると思います。ところが私はトランプ氏は金、カネ、かねにしか見えないのです。これがアメリカだといえばそうかもしれませんが、私が最近アメリカに近寄らないのはちっとも魅力的に感じないからなのです。
当面の最大の見せ場はウクライナをめぐる国際社会の協調が生まれるかであります。ウクライナ問題を取り巻くキーパーソンは当事国とそれに影響力を持つアメリカと欧州です。ゼレンスキー氏は欧州に一定の理解と支援を求める中で欧州はアメリカの強引なやり方に現時点では十分に同調していません。特にスターマー政権の英国がアメリカと明白に距離を置いている点がかつての英米協調路線が成立しない弱さを感じます。トランプ氏は関税政策で世界のあらゆる国を敵に回し、搾り取ろうとする中でフロスのような反対の声が確実に増えるでしょう。個人的には6か月後の夏の終わりまでに一波乱起こりそうな気配も感じています。
紙VSデジタル
日経に「デジタル教科書vs紙 学力向上、どちらが効果的?」という記事があります。これは誰のどの意見を聞くかによって全く違う回答が出てきます。よって日経だからどうとか、専門家だからどうという断定的な答えはまだありません。私はカナダで紙の教科書を卸売りしているのでお前の言うこともポジショントークだろうと言われるかもしれません。ただし、先生方を含め、いろいろな声が聞こえているのも事実なのです。つまりデータは他の方よりあるし、関連の書籍も結構な数を読んでいます。また今は止めましたが、東京で塾経営をした際は当時、先端のオンライン型の教材を採用していてその成果もある程度認識しています。
紙VSデジタルについては皆さんが電子ブックを読むときと紙の本を読む時で読後感、特に直後と1か月後、1年後の記憶などを参照していただくと案外わかるかもしれません。書籍に関しては紙に軍配が上がると思います。特に二度読みをするとき、私は時折30年前に読んだあの本を本棚から引っ張り出すのですが、その時自分が気になるページには折り目を入れてあるので「そうそう、ここだよ、このポイント」と納得しながら記憶を植え付けるのです。ですが、電子デバイスだと30年持たないし、蔵書がリスト化されると目に入りにくいのです。
お前は紙の新聞を読んでいるわけじゃないだろう、という意見があるでしょう。もちろんデジタルです。それを記憶にとどめるために私はこうやってブログを通じてアウトプットしているのです。金融の話にしろ、外交の話にしろ、一つの記事ではなく、相当過去分から最新の記事にに至るまでを頭にある程度記憶させ、それをアウトプットする際に記憶の再配置、つまり整理をしたうえで記憶を呼び出しやすくするのです。これがデジタルインプットに対する自己防御なのです。入ってきたものをそのまま読み流すと右から左に抜けるだけ。またどうしても読み方が浅くなり、字が滑る状態になります。ブログに頂くコメントには「はて、きちんと読んでいただいているのか?」と思う時もあります。つまり紙とデジタル、私はどちらでもよいですが、対処方法を変える、これが一つのキーではないかと考えています。
後記
東京で大学時代の同じクラブの同期仲良しメンバー4人で十数年ぶりに会食。2人は誰でも知る一流企業で既に退職金をもらい、延長戦に入っています。私ともう一人は自営。つまり退職金もないし、彼らが自慢げにいう企業年金の恩恵もありません。自営の私たちは野武士のようなもの。企業年金を貰える彼らから「住宅ローンもないし、もうこの先、面倒な心配事もない」と悠々自適の感で人生楽しみましょうと聞こえます。こればかりは人生の岐路においてそれぞれが選んだ道なので悔いはなし。ただ、4人で笑ったのは「次にこの会を催す時、果たして4人集まれるかねぇ?」。既に2-3年先輩にはお亡くなりになった人がパラパラいます。最後は長生きしてなんぼだなぁ、というところに落ち着きました。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月15日の記事より転載させていただきました。