日米、法の支配踏まえ議論と首相43兆円まで防衛力強化 東京新聞
防衛力の抜本的強化に向け、為替レートの変動や国内外の物価上昇が生じている状況でも2023~27年度の防衛費総額を計約43兆円に定めた政府方針を堅持する考えを示した。
27年度より後の防衛費については「何ら決まっていない」と強調した。トランプ氏は首脳会談後の共同記者会見で、防衛費を国内総生産(GDP)比2%にする日本政府の方針を評価し「今日の協議によって、さらに増える」としていた。
つまり「今の計画はやるけども、その後はわからないよ」ということです。現計画も岸田政権が安倍晋三に忖度した結果であり、始めに金額ありきでした。しかも想定為替が1ドル108円でした。当時は135円レベルで、その後円安が想定されるので150円代を想定する企業が多かったにもかかわらずです。
そして150円台になって、海外から装備やコンポーネントが爆上げしても昨年度は使い残しが1300億円、繰越分含めれば3千億円です。どこに現計画中の額面を増やす理由があるでしょうか。
そして安倍晋三が言い出した防衛費2パーセントも単なる思いつきです。米国がNATOに要求しているレベルを当てはめただけです。何の具体的な根拠もない。アベノミクスの失敗が明らかになって政権の座を放りだして逃げたあとに、今度は強い「救国のリーダー」を演出するためのスモークでした。国債すればいくらでも軍拡できると触れ回ったわけです。それをメディアはヨイショしてきた。
かといって岸田内閣は党内最大派閥の安倍派を無視できないので、まずは5年で43兆円に防衛費を引き上げたわけです。ですが安倍晋三が文字取り「抹殺」されて、安倍派も求心力を失った上に多く先の選挙で落ちました(無論暗殺は肯定しませんよ)。
岸田内閣が安倍晋三に忖度してぶち上げた防衛費GDP比2パーセントを2回の選挙で公約に掲げました。ところが石破政権ではそれを公約から下ろしました。不思議なことにこれについて述べたのはぼくだけで、記者クラブメディア、特に政治部記者で言及した人はおりませんでした。
今後国債の利率は上がります。予算の中での国債費は上がっていきます。政治家や有権者は政策に金がかかるというアタリマエのことを忘れています。だからこの国家財政が危機的な状態で高校無償化やふるさと納税こと故郷脱税を歓迎する。
無償化ではなく税金化です。更に申せばカネがないので国債化です。将来に国民が税金として負担します。恐らくここ数年の間に世論もどれだけ財政赤字が巨額で、どれだけ予算を圧迫するか理解していくでしょう。
その状態でどんどん国債すれば、円の信用は毀損されてさらなる円安になります。ぼくは今の5か年計画の平均8.6兆円でも過大だと思っています。せいぜい7兆円前半が適正レベルです。できれば6兆円台に戻すべきです。
隊員も募集しても集まらない、であれば自衛隊も26万人からダウンサイジングすべきです。陸自は16万人を10万人程度に削減し、海自の艦艇も3~4割は削減すべきです。水兵の不足で動かない船がいくらあっても戦力になりません。
防衛費を増やさないとトランプが怒るという人がいますが、それは対応次第でしょう。防衛費を下げても米国からの調達を増やせばいいんです。
P-1の調達をやめてP-8を20機、MQ-9Bを更に10機ほど調達して対潜任務用のパッケージも調達する。維持費はバカ高く、稼働率が低いP-1を用途廃止にすれば防衛費は大きく浮きます。
早期警戒機としてウエッジテールを現用のAWACS、E-767とE-2Dの更新として12機ほど調達する。E-767は輸送機として民間に転売して、E-2Dも転売すればいいでしょう。
C-2も退役させる。どうせ16式や19式を空輸というファンタジーを諦めれば、他国の輸送機の下手すれば1桁高い運用費を払い続けるのは馬鹿げています。
C-130Jを30機調達してそのうち20機は空中給油型にして、陸空のチヌークなどにも空中給油機を装備する。また3機は特殊部隊用にする。更にC-27を12機調達する。どうしも海外任務などで大型機が必要ならC-17の中古でも買えばいいでしょう。
CH-47は国産をやめて輸入に切り替える。そのほうがコストも安いです。どうせ川重のヘリ部門が将来発展することもなく今後も延々と税金を食いつぶすだけですからCH-47は輸入に切り替えて、そのかわりオフセットで言って比率のボーイングのCH-47の仕事を振ってもらう。別にこれは川重でなくてもよい。
同様に陸自のUH-60の後継も米国から最新型を輸入する。
時代遅れで速度も遅いUH-2の調達を停止して、エアバスアメリカからUH-72を調達する。
ヘリに関してこれらを実施すればメーカーも自主的に再編を行わないとならないでしょう。嫌ならやめればいいんです。将来にヘリ産業として自立するつもりもなく、延々と防衛省に寄生して税金を食い散らかすだけのメーカーは潰して、そのリソースはカネを稼いで税金を払える分野に振り向けるべきです。
更に無線機なども規制を見直して米国製を大量に導入すればいい。同様に防衛産業再編の呼び水になるでしょう。
大量に米国から調達を決めれば、トランプは文句を言いませんよ。無理して借金軍拡すれば、その後財政難になって米国からの調達は大幅に減るのとどちらがいいですか、ということです。
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昔書いた「防衛破綻」「専守防衛」がKindle化されました。順次他の電子媒体でも発売となります。
電子版向けのまえがきも追加しております。15年ほど前の本となりますが、防衛議論の基礎データとしてご活用いただければ幸いです。
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財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
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編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年2月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください