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エルサルバドルのコアテペケ湖畔の邸宅で、エルサルバドルのブケレ大統領と会談するマルコ・ルビオ米国務長官
Los Angeles Timesより
エルサルバドル、米国の凶悪犯罪者を受け入れる用意あり
中米でトランプ大統領が最も信頼を寄せているエルサルバドルのブケレ大統領は、米国の凶悪犯罪者を自国の巨大な刑務所で収監する用意があることを、同国を訪問したマルコ・ルビオ国務長官に伝えた。
この刑務所は、首都サンサルバドルから約70キロ離れた場所に建設され、最大4万人を収容可能だ。現在までに2万人が収容されており、その大半がエルサルバドルを犯罪国家にしていたギャング組織「M13(マラ・サルバトゥルチャ)」、「B18バリオ・スレーニョ」、「B18バリオ・レボルシオナリオス」のメンバーである。
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ギャングのルーツ:米国からの送還
彼らの多くは、エルサルバドル内戦中に幼少期を過ごした者たちだ。当時、米国は人道的な理由から多くのエルサルバドル人を受け入れたが、成長するにつれて彼らは米国内で人種差別を受けるようになった。その結果、彼らは内戦中に目にしたゲリラ兵の残虐な行為を模倣し、次第に過激化。社会問題を引き起こすようになり、米国政府はついに彼らを本国に送還した。
帰国した彼らは、自国で犯罪ギャングとして成長し、その数は約10万人に達した。彼らは協力者を募り、750万人の人口を抱えるエルサルバドルで、100万人がギャングのメンバーまたは協力者となった。つまり、国民の約1割が犯罪に関与していることになる。彼らは殺人、誘拐、恐喝、麻薬密売などあらゆる犯罪を犯し、その影響で企業の閉鎖や市民の国外流出が相次いだ。
ギャングを一掃したブケレ大統領
この状況を一変させたのが、2019年に大統領に就任したナジブ・ブケレ氏である。パレスチナ移民2世であり、元企業経営者の彼は、まずサンサルバドル市長を経て大統領に就任。それまでエルサルバドルでは2大政党が交互に政権を担っていたが、いずれもギャングの制圧に失敗していた。
大統領就任後、ブケレ氏は軍を味方につけ、ギャングメンバーを次々と逮捕し、刑務所に収監。さらに、刑務所内のギャング幹部に協力を求める一方で、彼らには一定の寛大な措置を講じた。その結果、現在までに約7万5000人のギャングと協力者が全国の刑務所に収監されている。
2015年には10万人あたり103人だった殺人発生率は、昨年には2.4人まで激減。この成果にもかかわらず、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、政府の人権侵害を非難している。
ブケレ大統領の再選と米国との取引
この実績が高く評価され、本来は1期で終了する予定だったブケレ大統領は、最高裁の判断により再選が認められた。その結果、彼は85%の得票率で再選を果たした。
こうした背景のもと、エルサルバドルの刑務所にはまだ約2万人の収容枠が残っている。そこでブケレ大統領は、今月のマルコ・ルビオ国務長官の訪問に際し、米国からの凶悪犯罪者を受け入れる用意があることを伝えた。当然、彼はその対価として米国からの報酬を期待している。