なぜ起きる業務上横領:何が人をそこまでお金に執着させるのか?

業務上横領。社会ニュースではよく出てくる話題です。日経にはマンション管理会社の社員がマンションの積立金を横領し、銀行残高証明を改ざんして犯行をつづけ、1億円超が消えていたことが判明したと報じています。これなどは防ぐのは簡単で管理組合が通帳を確認するとか、インターネットバンキングに入って残高を見るといった普段の確認作業で全然問題ないのです。ところがマンションの管理組合は基本的に素人集団でやりたくない人が無理やり押しつけらえるケースが多いでしょう。しかも一定の責任があるのに報酬はなし。これでは業者にお任せして放置する気持ちもわからないではありません。私自身、NPOに長く携わってきた中で報酬ゼロという「当たり前」は当たり前ではなくなってきたと思っています。

私が勤めていたゼネコンで秘書時代に人事担当常務が頭を抱えて秘書室にやってきました。「面倒なことが起きたよ。会長と社長、いるかな?」と。「常務、どうされたのです?」と聞けば「まぁ、君は口が堅いだろうから絶対に口外しないでもらいたいが、労働組合の億単位の預金残高が全額、横領されたよ。やったのは〇〇だ」。「えっ、それって私が昔所属していたグループの若手じゃないですか?」それはまさに「まさかの話」で仮にテレビ局が私にマイクを向けたら「あの男は決してそんなことをする男ではなかったのに」と言ったでしょう。

三菱UFJの貸金庫窃盗事件は大きな話題になりましたし、約2年前に発覚した楽天モバイルの基地局建設では24億円の搾取もありました。ネットフリックスでこれほど話題になると思わなかった「地面師」、その背景は積水ハウスの目黒の土地をめぐる事件でした。これになると横領ではなく詐欺の話になります。横領と詐欺は犯罪としては明白に区別されていますが、同根だろうと思います。それを言えば一時期大騒ぎになり各地で起きた強盗事件も似た括りなのでしょう。

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何が人をそこまでお金に執着させるのでしょうか?

普通の生活をしている人が億単位のお金を求めるような大ジャンプが起こえりるのか、これが私の疑問でありますが、このあたりは犯罪心理学なる学問があるのでそちらに詳しい方に解説を賜りたいところです。個人的に思うのは突然巨額の資金が必要になるのではなく、雪だるま式に増えていく場合が多いのだと思います。

多くの窃盗事件で逮捕された犯人の資金使途を見るとギャンブルと為替や株式などへの投機的行為の失敗が原因に見えます。水原一平被告の裁判がありましたが、彼の行為もギャンブルの暴走と化すわけです。

私は株式市場で投資に参加していますが、日米とも値動きを見ると狂暴なぐらい荒いところは数多くあります。私も先日、アメリカの某株を買い入れたところ1週間で2倍になり、想定外の上昇に「おっ!」とほくほくしていたら3-4日で元の木阿弥になりました。株式用語で「行ってこい」というのですが、私は元に戻っただけで何の損もないのですが、上でつかんだ人は大きな含み損を抱えるわけです。日本でも同様の値動きの軽い銘柄はごろごろしており、「提灯をつけたら精霊流し」というひろの株式格言になってしまうことがしばしばあるのです。

ラスベガスにカジノによく行く人は「予算」を口にする人が多いと思います。一日限度額いくらと決めるわけです。そうしないと果てしなく負け込むことになるのです。パチンコや競馬などの賭け事も同様でしょう。ところが歯止めが効かないのが世の常で人間の制御力は非論理的な自己都合の理由をこじつけ様々な誘惑で泥沼にはまっていくのです。強盗をした若者も「一回ぐらい大丈夫」と述べていたケースも散見されました。

ではなぜ一般の人が一攫千金を求めるのでしょうか?かつて年末ジャンボ宝くじを買うのは夢とも言われました。一方最近の巨額詐欺や横領事件はスリルを求めているような気もします。その根源は日々の生活にストレスを溜めている、これが本質的原因ではないかと思います。

となればこれらの問題の解決には2つのアプローチが求めらます。1つは企業や団体、組合などが管理を人任せにせず、しっかりさせ、管理組合などNPOが有償の管理者を雇うのも一手でしょう。もう1つは犯行に臨むような気にさせないということです。例えば世の中のガードが固くて「そんなの無理」という状態にさせ、また罰則規定を重くすることがあるでしょう。またストレスを別の形で発散できるよう個人個人の自己管理能力を高めることでしょう。後者はとてつもなく難しく、理想だけかもしれませんが、そういう意識は大切です。また急に金回りが良くなった人も気をつけるべきでしょう。お金が突然降ってわくこともないし、そのお金が落ちてくることもないものです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。