努力は才能ではなく方法論と習慣化で決まる

黒坂岳央です。

昨今、あちこちで「努力できるのも能力の内なので生まれつき決まっている」という意見をよく見る。

確かに人並み外れた、歴史上の人物やプロアスリートのような人は明確に遺伝的要素とカテゴライズしてよいだろう。だが、一般人レベルの努力なら能力差ではなく、方法論や習慣化の方が遥かに強い。また、努力できる、できないは極端な二元論で論じることはできず、あくまで個人差が現れるのは「努力の度合いや密度」である。そしてその度合いも能力値で100%決まっているわけではなく、環境や技術で伸ばすことは十分可能だ。

「自分は努力ができない側の人」と主張する人も、本人は気づいていないだけで「努力は才能」という趣旨の主張をSNSで年単位で発信するという努力をしているし(普通は経済的見返りや強制力がないとできない)、漫画や推し活という他の人ができない熱量を注ぎ、大変な努力をしていたりする。本人は知らず知らずの内に努力しているのだ。

確かに一部において能力的に努力できない人は存在するが、ほとんどの場合については「努力のやり方」を知らないだけなのだ。

Hakase_/iStock

努力は方法論

「頑張りたいのに頑張れない」
「何をしても三日坊主で終わる」

こういう人は本当に多い。だが、彼らのやり方を見ていると、方法論や戦略なしに感情的に始めている。年単位で継続する前提で取り組んでいなければ、当然続くわけがない。

たとえば「継続」については多くの人ができずに悩んでいるものだが、ほとんどは継続のコツと真逆のことをやっている。すなわち、大きく始めて太く続けるから失敗する。

努力の継続のコツは「小さく始めて細く続ける」である。筆者は今年で記事の寄稿で8年、YouTube動画投稿が5年とコツコツと続けてきた。別にこのくらいの期間やっている人など世の中にいくらでもいるので、稚拙な自慢をするつもりはない。ここで言いたいことは「細く続けたことが継続の一因だった」という話だ。

記事も動画も完璧を目指さない。作っている途中で「うーん、なんか気に入らないのでやっぱりこれを出すのを止めたい」そう思っても、中途半端でも、とにかく無理やり完成させてとにかく出す。作品の数が溜まってくれば達成感も生まれる。

そしてしんどくなるまでやらない。記事も動画も挑戦し始めから、丸一日かけて作ったりはしない。まずは小規模作品をたくさん作る。そうするとコツがわかってきて、徐々に一冊の書籍にしたり、2時間超の動画など大規模作品になっていく。

筋トレなら1分、ジョギングは3分。とにかく小さく始めて補足続ける。これがファーストステップだ。

努力は習慣

努力は習慣にすれば誰でも続けられる。

筆者は朝起きたら午前中は執筆をする。時々、順番が変わって午後に執筆をしようとしてもうまくいかない。もう完全に体が執筆に習慣化されていて、起きたら無意識にPCの電源を入れてキーボードを叩いてしまう。やる気の有無なんて考えたことはない。

飛行機の機内で楽しく過ごせるよう、映画やハウツー動画、音楽、ゲームを持参して乗り込むが、結局、映画を見ている途中にもイマイチ集中できず、「そうだ!あのことを書こう!」と新たなアイデアが舞い降りて、気がつけば執筆をしてしまう。自宅では映画鑑賞中につい文章を書きたくなってしまうので、気になる映画はなるべく映画館にいって見るようにしている。

旅行先では早く目が覚めてやることはいつもどおり執筆活動だ。客観的に見たら「ものすごい努力だ!」と思われるかもしれないが、実際には書くことが体に染みついて自分でも止めることができないだけだ。

また、去年の年始からずっとパーソナルジムに通って体を鍛えているが、筋トレも習慣化してしまったので、何もしない土日がどうしても落ち着かず、気がつけば椅子を持ち上げてしまったりする。

習慣化に成功すれば「努力は遺伝子」などとは考えない。やる気などに関係なく、無意識に体が動いてしまうからだ。

実際、「努力できない」と悩む人も、四六時中スマホを触るという習慣化に成功している。「努力してスマホを触り続けるぞ」なんて思わなくても彼らは止められない。

それと同じことを仕事や勉強でも作ることが可能なので、才能云々より先に習慣化を目指すべきだ。

努力は外圧

最後に「努力は外圧で作る」という話をしたい。

「自分は努力できない」という人も普通に会社で働いている。冷静に考えれば月金朝から夕方(または夜)まで週5日働く、というのはとてつもない努力量だ。それを10年、20年積み上げるのだから努力家以外の何物でもない。

彼らがいう「自分は努力できない」というのは、外圧なきプライベートタイムで生産的なことができない、という意味である。決して会社や学校など強制力が働く場で「頑張れない」と嘆いているわけではないのだ。

つまり、外圧が働く環境を買うのが一番手っ取り早い。たとえば勉強を頑張りたければ予備校に行けばいい。周囲はみんな熱心に勉強しているので、どうやっても勉強してしまうだろう。

筆者は昔、勉強を決意した時に強制力を持たせるため、ゲーム機や漫画などの遊び道具や携帯電話、インターネット回線などすべて捨てた。毎日、やることは働くか勉強のみである。勉強をサボっても部屋から空を眺めることしかできない。そんな暇の苦痛に耐えるくらいなら勉強をしよう、ということで頑張れた。

世の中には本当にどうやっても頑張れない人は一部存在するが、SNSで「努力は才能だ!我々に努力を迫るな」とせっせと投稿し、リプ欄で第3者とケンカするような「マメな努力家」には当てはまらない。そしてほとんどの人は本稿で取り上げた3つのコツで努力家になることができる。程度の差こそあれ、人間は分野を選ぶことで本質的に頑張れるように作られているのだ。

 

■最新刊絶賛発売中!

[黒坂 岳央]のスキマ時間・1万円で始められる リスクをとらない起業術 (大和出版)

アバター画像
ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。