米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞のノミネート作品を決定するためのショートリストに、ジャーナリストの伊藤詩織さんが初めて監督を務めた作品『Black Box Diaries』が選出されましたが、そこで無断使用された動画について波紋が広がっています。
伊藤さんの性被害訴訟で代理人を務めた西廣陽子弁護士らは、『Black Box Diaries』について「承諾を得ずに映像や音声が使用されている」「取材源の秘匿や事実上の公益通報者の保護がなされておらず、人権侵害に該当する映像が公開され続けることには問題がある」と指摘し、内容の変更を求めています。
元弁護団は、伊藤さんが『Black Box Diaries』で、被害現場とされるホテルの防犯カメラ映像が本人やホテル側の許可を得ずに使用されていると指摘しました。
2019年外国特派員協会で会見する伊藤詩織氏
また、海外では公益通報者にあたる捜査官やタクシー運転手、裁判で代理人弁護士を務めた西廣弁護士に関する無断録音・無断録画の映像が公開され続けていることにも問題があると訴えました。
これに対し、伊藤さん側は、指摘された内容は「不正確」であり、「伊藤さんの名誉を毀損するおそれがある」と反論し、「伊藤さんの名誉を毀損する」としています。しかし、自ら説明の機会を求めていた伊藤さんは、体調不良で自信の記者会見を中止してしまいました。
映画には、伊藤さんの民事裁判の証拠映像(ホテルの防犯カメラ映像)が使用されていますが、この映像は「裁判以外に使用しない」という誓約書の対象でした。伊藤さんの元弁護団は、映画公開前の内容確認を求めましたが、事前に連絡がなかったそうです。伊藤さんは、自分はホテル映像によって被害を救済してもらっていながら、今回の映画により、今後の被害者救済の途をふさごうとしてしまっていることになります。
伊藤さんは今回の件で、東京新聞の望月衣塑子記者の記事が事実と異なり名誉を毀損されたとして、望月記者に330万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴していましたが、こちらの推移も注目が集まります。
参照:伊藤詩織さんが東京新聞・望月衣塑子記者を名誉毀損で提訴 アゴラ
伊藤さんの映画は海外で上映が着々と進められ、元弁護団との信頼関係は完全に壊れてしまいました。弁護団の無念は察するに余り有ります。