日銀は荒波を乗り越えられるのか?:いまだにデフレ克服宣言をしない政府

日産自動車は話題が多いなぁと思います。台湾の鴻海がホンダや日産、三菱との協業を申し入れたとの報道がある一方でフィナンシャルタイムズのすっぱ抜きで菅元総理と元テスラの社外取締役の水野弘道氏、元首相補佐官の和泉洋人氏がテスラに日産支援を呼びかけたと報じています。水野氏は全面否定していますが、今の段階ではその真偽は不明です。一方、格付け会社ムーディーズが同社を投機的ランクであるBb1に引き下げました。これは社債による資金調達に悪影響を及ぼすほか、機関投資家による株式売却の促進につながります。それよりいいクルマの発表の報道を見たいものです。残念ながら現状を見る限り同社はもはや経営になっていないと思うのでこの勝負の展開は早いかもしれません。

では今週のつぶやきをお送りします。

日銀は荒波を乗り越えられるのか?

日銀の審議委員が「中立金利は1%程度で、25年にはそこに達するべき」と述べ、植田総裁もまんざらそれに異を唱える感じには見えません。政府はいまだにデフレ克服宣言をしませんが、日銀はインフレの状態にあると認めています。政府と日銀はこの部分で全く違う考えを持っており、私には「政府は宗教家」ではないかと感じることもあります。一方、日銀は理論的で実務的であるともいえます。日銀が金利引き上げモードにあれば為替のバイアスは円高になりやすいのは当然であります。

石破首相と植田日時銀総裁 首相官邸HPより

昨年の6月から7月頃は留まるところを知らない円安傾向に懸念の声すらあったのに円高になればなったで外野からやんやの声が出てきます。日銀は為替制御をする機能は持っていないのでそちらが気になるのなら財務省管轄になります。ただ、少なくとも財務省は「マイルドな円高ならトランプ氏からにらまれなくてよい」と考えているはずで植田総裁のリードに「シメシメ」と思っているはずです。一方、株価には抵抗があるのは確かです。先週、日経平均はレンジ相場から三角持ち合いになりつつあり上に行くだろうと申し上げたのに週末にかけてこの構図が崩れつつあり、三角保ち合いの下離れを懸念しています。

総務省が発表した1月の消費者物価は総合が4.0%上昇、食品を除いたコアも3.2%上昇です。物価の推移をみても悪化しています。今後、電気代やガソリンの補助金が減る中で2月も高い物価水準が維持されるでしょう。ただ、私はずっと前から補助金政策は日本の現状をごまかすだけの悪策だと述べました。金利も中立金利に向けてさっさと上げよ、と述べました。理由は日本経済にすこし鞭を打たないと世界水準とあまりにもかけ離れてしまったことに懸念があるからです。ごく一面だけを捉えた日銀批判の報道もありますが、私から見るともっと俯瞰せよと申し上げたいところです。

俺、私立、おまえコーリツ

25年度予算に関して与党と維新の政調会長レベルで合意しました。維新の目指す高校無償化が含まれたことで維新が国民民主に一歩先んじて与党にすり寄った感じになりました。この高校無償化、本来であればもう少し議論すべきだと思うのですが、こんな政争であっさりなんでもOKになってしまうのでは日本の政治も本当に落ちぶれたものだと思います。

教育において公立と私立ではその意味が違います。金がかかるのが私立だろう、と言われてしまえばそれは結果論として否定しません。ただ本質はそうではなく、比較的同質の生徒を集め、その学校教育の方針をブレなく鋭く教え込む、これが私立の最大の特徴です。故に進学校もあれば宗教を背景にする高校もあるし、ユニークな教育方針を掲げるところや大学へのエスカレーター型、更には中高一貫というところもあります。多くの私立高は3年間の教育で学校の理念や教育方針を強く押し出し、生徒に色を付けているとも言えます。また私立の仲間意識はかなり強く、成人後も長く付き合いが続きやすい傾向があります。

仮に無償化が進めばそれら私立の枠組みはどうなるのでしょうか?私学では授業料以外にかかかる費用は相当あるのです。学校によっては数十万円の海外修学旅行を始め、寄付金から備品費や教材費といった様々な名目のお金がかかります。授業料分だけが安くなったり無償化されても結局私学はほかの費用ががっつりかかるし、仮に授業料が無償ならばその分、更に質を上げるプログラムが生まれることになるでしょう。つまり公立高校とは格差が広がるのは自明なのです。今回の高校無償化合意は教育の差別化を広げる改悪につながる懸念があります。

圧倒する訪日外国人

1月の訪日外国人数が378万人で前年同月比41%増と驚異的な伸びを示しました。私は今週、日本からカナダに戻って来たのですが、空港にあふれるひと、ヒト、人にうんざりです。成田空港も滑走路2本でこれだけの数の離発着機をよくこなすと思いますし、空港内のサービス機能もほぼ麻痺状態です。特に成田も羽田もショッピング街を制限区域の外側に設置しているのですが、使い勝手からしたら出国手続きを終えた制限区域内にあるべきです。中には飲食店はほとんどなく、ブランドものショップと土産物店が我が物顔で鎮座しているのはおかしいと思わないのでしょうか?

一方で日経は日本人が持つ2024年末で有効なパスポートが2164万冊、人口比で17.5%と報じています。コロナ前と比べパスポート発行数が70万冊も減っているそうで日本人はついにハワイも韓国も台湾旅行も諦めたのか、と感じます。かつては物見遊山にショッピング目的の旅行が主流でした。グルメ旅行というのもあったのですが、今の日本人の懐で胃袋を満たせるのはアジアの一部の国ぐらいでしょうか?日本からは「海外旅行に行かなくても浅草寺に行けば外国に来た気分になるよ」と冗談とも本気ともつかない声も出てきそうです。

ただこの押し寄せる訪日外国人、さすがキャパシティ問題がでてくると思います。空港については個人的には茨城空港、神戸空港の利用を再度考えるべきかと思います。茨城空港は定期便が一日8便、3月以降は国内線のみです。神戸も国内線のみです。ホテル不足は深刻でしょう。大阪万博の頃はカオスになると思います。「おまえ、アパホテルいくらだった?2万円、へぇ、俺3万円だったよ」という会話に驚きがなくなるかもしれません。それこそ日本人の万博ツアーのお泊りは和歌山、姫路、名古屋あたりになってもおかしくないでしょう。

後記
弊社で運営するマリーナの年間係留契約の更新時期となり、私が顧客一人ひとりとやり取りしています。停泊料は毎年5%以上引き上げですが、誰も文句を言いません。ただ、ボートを売りに出している人が5-6人いますが、この1年、ほぼ取引ゼロ。つまり売れません。売りたい人は増えても買いたい人がほとんど表れない状態は景気が今一つと言うことなのでしょう。高いメンテコストに燃料を爆食いするボートと見つからない係留場所はプレジャーボートの宿命ともいわれます。「ボートは買った時と売った時が一番うれしくて、持ってくるときは苦しみ以外の何物でもない」というのは知る人ぞ知るボート格言であります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年2月22日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。