2022年11月に発表されたチャットGPTは、世界に大きな反響を呼びました。従来は画像処理や音声認識などの特殊な仕事に使われていたAI(人工知能)が言葉を理解し、どんな質問にも答えられるようになったからです。そのユーザーは4億人を超え、世界は生成AIで大きく変わろうとしています。
ITの社会的影響は今まで論じ尽くされていますが、自然言語処理はその限界でした。コンピュータが人間を超えるシンギュラリティはSFの世界で、機械が人間と同じレベルになるのは2060年ごろともいわれていましたが、GPTはそれを一挙に実現したようにみえます。
しかしそのしくみは、人間の脳の処理とはまったく異なるものです。GPTは大規模言語モデル(LLM)という技術でインターネットから膨大なデータを集めて人間の言葉をまねているだけで、言葉の意味は理解していません。
ただ文書作成の能力は人間よりはるかに高く、そういう事務労働はホワイトカラーの仕事の大部分を占めます。公務員や銀行員、あるいは弁護士や会計士などの文書作成業務は生成AIで代替できるでしょう。
コンピュータの処理速度は人間の脳をはるかに超えるので、かつては鉄腕アトムのような人工知能ができるのは時間の問題だと思われていましたが、その歴史は挫折の連続でした。GPTの機械学習は、1980年代の「第5世代コンピュータ」などの人工知能とはまったく違うのです。
コンピュータの応用として1950年代から構想されていた人工知能が、これほど多くの失敗を重ねた原因は、それがデカルト的合理主義にもとづいていたことにあります。チョムスキーの「デカルト派言語学」とは違い、LLMには文法も辞書もありません。それは「言語とは論理である」という固定観念の見直しを迫っているのです。
4月からのアゴラセミナーでは、AIの挫折の歴史をたどるとともに、機械学習やLLMのしくみを解説します。生成AIの経済的インパクトだけではなく、言語や知性の本質についても考えます。これはエンジニア向けではないので、聞いてもプログラミングできるようにはなりませんが、遠からずプログラマもほとんど機械に代替されるかもしれません。
講師:池田信夫(アゴラ研究所 所長)
テーマ
- GPTは人工知能ではない
- 人工知能の挫折の歴史
- チョムスキーの「普遍文法」が見落としたもの
- 日本人が発明したニューラルネット
- 機械学習からLLMへ
- シンギュラリティは来るか
- 機械学習はホワイトカラーを駆逐するか
- LLMと言語ゲームと大乗仏教
テキスト
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- カーツワイル『シンギュラリティは近い』
- 岡野原大輔『大規模言語モデルは新たな知能か』
- 次田瞬『意味がわかるAI入門』
- 鈴木貴之『人工知能の哲学入門』
- 井上智洋『純粋機械化経済』
など、そのつど指定します。
開催日:2024年4月4日から毎週金曜日(全12回)
4月4日・11日・18日・25日
5月9日・16日・23日・30日
6月6日・13日・20日・27日
時間:19:00~20:45
定員:無制限
受講者全員をアゴラサロンに無料でご招待します(受講期間中は無料)。
受講料
- 3ヶ月12回分:3万6000円(消費税込み)
- アゴラサロンの有料メンバー:2万7000円(同)
お申し込み方法:専用フォームに必要事項をご記入いただき、フォーム記載の弊社口座へのご入金をもって手続き完了です。
主催:株式会社アゴラ研究所