「極右」大統領候補の資格停止で問われる民主主義の正統性

フランスの「極右」国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン前党首が国民戦線(FN)時代の2004~16年に党職員らを欧州議会議員秘書として与を受領させながら党の仕事をやらせていたことをもって450万ユーロ(約7億3000万円)の公金横領だとして訴えられていたが、パリの裁判所は31日の判決で、禁固4年、うち2年は執行猶予、10万ユーロの罰金、5年間の資格停止と即時執行を言い渡した。

マリーヌ・ルペン氏 SNSより

この結果、マリーヌ・ルペン氏は、2027年の大統領選挙に立候補できない可能性が強まった。また、8人の欧州議会議員やペルピニアン市長ルイ・アリオを含む24人の有力政治家などが同様の措置となる。

この結果、RNは大統領選挙に若くイタリア系のジョルダン・バルデラ党首(1995年生まれ)を候補者として擁立することになろうが、もしかすると、大統領候補としてはFN時代の極右色のないこちらのほうが強力だという見方もある。

ジョルダン・バルデラ党首SNSより

しかし、これは、フランス政界でも党派にかかわらず疑問視する意見もある。司法が政治を行うことになり、民主主義の正統性が危機に瀕することになるからだ。

法の執行は厳密である必要があるが、些細な、また、議論がある法令違反を理由に被選挙権を否定したり、政治的攻撃を行って立候補を制限するのは民主主義を機能不全に陥らせる。

フランスではサルコジ元大統領も有罪判決を受け、罪状の中には、リビアのカダフィ大統領からの賄賂もあるが、政治資金上の疑惑もある。また、過去にはシラク大統領の後継者とみられていたジュペ首相が政治資金疑惑で大統領候補としての可能性を失ったこともある。

もともと、RNはエスタブリッシュメントの支持がない上に、当局のしめつけで、金融機関から借り入れもままならず、ロシアの銀行が融資していたりしており、このような無理なことをしたとみられる。

ただ、日本でも国家議員秘書が地方選挙の応援をしても問題はないわけで、当否は微妙である。

野党第一党の候補者を排除したトルコも大統領選挙の第一回投票でトップだった極右の候補を排除したルーマニアも、ベネズエラもそうだし、韓国は特に酷い。そして日本の裏金問題だって形式犯であって不正な資金のやりとりを含まないことを考慮すれば、政治生命を奪うようなことでは本来ない。

司法の恣意的な独走で、立候補制限をかけて民意から選択を奪っての選挙が正統性をもつのかどうか、民主主義体制の根本を揺るがす問題であり、先に米国のバンス副大統領が提起したように、民主主義という政体の正統性の危機をもたらしかねない。

とはいえ、民主主義にはルール遵守も必要であるから、バランスの良い結果が得られるように、議論を進めた方が良いように思う。

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