桜満開の陶磁器の里・伊万里市大川内山を散歩する

3月30日 ソメイヨシノが満開を迎えた日、佐賀県の伊万里市を旅していました。伊万里は言わずと知れた陶磁器の町。町のいたるところに陶磁器のオブジェが置かれています。

鸚鵡像。

有田などでもそうですが、陶磁器の町では特に橋の欄干にこう言ったオブジェが多くありますね。

佐賀銀行伊万里支店にはこんなオブジェも。17世紀前半、オランダの東インド会社は中国の明と陶磁器の交易をしていましたが明の政情悪化でこれができなくなり、これにかわる生産地として、このころから陶磁器の生産が盛んになっていた日本の伊万里に目をつけました。

伊万里津と呼ばれた港から出島を経由して伊万里の陶磁器を輸出したことで伊万里の名は西洋にその名を知られることとなったのです。

せっかくのオブジェなんですが、鳩の巣になっていました。。。

そんな伊万里の陶磁器の一大生産地、大川内山にやってきました。

江戸時代、陶磁器生産は鍋島藩の貴重な藩の収入源であり、将軍にも上質の陶磁器を献上して良好な関係を維持するなどまさに藩の生命線を担っていました。製法の秘密漏洩防止のため関所が設けられ、陶工は有田の職人から選りすぐりの技術者を集めて、不良品はすべて割って廃棄して流出を防ぐなど品質の厳しい管理が行われていたといいます。今も多くの窯元があり、陶磁器の生産、販売が行われている地域です。

集落の近くを流れる権現川の周囲には桜が植えられ、満開の花が陶磁器の町に春の訪れを告げていました。窯元の集まる集落はここから坂を登っていくことになります。

ここが鍋島藩の関所跡。陶工や技術の情報漏洩を防ぐためここに関所を設けて厳しく取り締まっていました。

ここから窯元の集まる町並みが続きます。町の方々で窯元のレンガ煙突を見ることができ、焼き物の町ならではの景観をみせてくれています。

窯元さんはそれぞれ建物内に自らの窯で作った陶磁器の販売するお店を構えています。外からも商品を眺めることができてお気に入りの一品を探して歩くのも楽しいです。焼き物に興味のありそうな外国人観光客の方が熱心に商品を眺めているのが印象的でした。

町の中には鍋島藩窯公園という公園も整備されていて展望台もありますのでそちらの方に向かいます。トンバイ橋のトンバイとは登り窯を築くために用いた耐火レンガのことです。これの廃材を使って家の塀を作っている家もあります。

ここまで登ってくる人がおらず、桜を独り占めできました。

展望台からみた伊万里・大川内山の窯元の風景。江戸時代から350年あまりにわたり、途中藩は廃止され、幕府への献上品から市民の使う一般品への生産の転換を強いられるなど苦難を強いられましたが、それらを乗り越えこの地で陶磁器の生産を続けてきました。これからも日本の陶磁器生産のリーダーであり続けてもらいたいと思います。

まったく余談ですが、伊万里駅前にある方の銅像がありました。森永製菓創業者の森永太一郎氏。伊万里の出身なんですね。

手にミルクキャラメルを持っていました。太一郎氏が日本の気候に合わせて改良を加えて商品化した苦心の作です。

ちなみに佐賀市にも森永太一郎氏の像があるそうですが、同じ佐賀出身の江崎グリコ創業者、江崎利一氏の像と並んでいるそうで、江崎氏はグリコのキャラメルをもっているとのこと。これは佐賀に行ったときはチェックしないといけないですね。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2025年4月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。