小惑星「2024YR4」が月に衝突する可能性は:地球にも影響を与える可能性

米航空宇宙局(NASA)によると、小惑星2024 YR4は2032年12月に月に衝突する可能性がある。現在、そのリスクはほぼ4%と考えられている。衝突の際に放出されるエネルギーは膨大で、地球にも影響を与える可能性が予想されるという。

小惑星2024 YR4、2025年1月27日撮影、NASA提供

この評価は、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡からの新しい画像に基づいている。大きさはおよそ15階建ての住宅に相当する53~67メートルと推定される。NASAのウェブサイトによると、現在の推定サイズでは、小惑星は衝突時に8メガトン近くのエネルギーを放出する可能性が高い。これは、1945年に広島に投下された原子爆弾によって放出されたエネルギーの500倍以上だ。NASAの計算によると、小惑星2024 YR4は2032年12月に月に衝突する可能性が出てきた。

フィンランドの研究チームも2024年にカナリア諸島にある地上のノルディック光学望遠鏡を使ってYR4を調査した。「小惑星が月に衝突した場合、地球は月と小惑星から分離した粒子で覆われる可能性がある」とヘルシンキ大学のカリ・ムイノネン氏は説明する。これにより、人工衛星などの有人宇宙インフラに損傷を与える可能性が出てくる。

2024 YR4は2024年12月27日にチリのエル・サウセ天文台によって初めて発見され、2024 YR4と名付けられた。2月中旬、8年以内に地球に衝突する確率は3.1パーセントと計算され、宇宙観測が始まって以来、地球にとって最も危険な小惑星となった。当時の大きさは40~90メートルと推定されていた塊は、トリノの衝撃リスクスケールでレベル3に分類された。2月末には、地球への衝突の危険性はほぼゼロという。

小惑星2024 YR4は地球近傍小惑星だ。つまり、太陽系の地球領域にまで到達する軌道にある小惑星だ。この物体は、2つの理由から、惑星防衛にとって特に興味深い。1)地球に衝突する万一の場合、局所的な被害を引き起こすのに十分な大きさであること、2)衝突確率のしきい値である1%を超えたため、惑星防衛に携わる他の米国政府機関、宇宙ミッション計画諮問グループ、および国際小惑星警報ネットワークの通知憲章に従って国連宇宙部への正式な通知が正当化されることだ。

小惑星の軌道の観測が増えるにつれて、衝突確率がよりよく知られるようになり、惑星防衛の専門家は、この物体が地球に重大なリスクをもたらさないと判断できるようになった。

最後に、NASA公式サイトには2024 YR4に関する頻繁に聞かれる質問を掲載していた。

①小惑星2024 YR4は地球に衝突するか?

最初に発見されたとき、小惑星2024 YR4が2032年12月22日に地球に衝突する可能性は非常に低かった。小惑星の観測がさらに行われ、そのデータが軌道計算に追加されたため、2024 YR4が2032年以降に地球に衝突する可能性は低いと判断された。

②このサイズの小惑星が地球に衝突した場合、どの程度の被害が発生するか?

衝突した小惑星による被害は、小惑星の正確なサイズと構成に大きく依存する。2024 YR4のサイズの範囲では空中爆発が起こる可能性が高い。もし小惑星が海洋上で大気圏に突入した場合、大きな津波を引き起こす可能性は低い。

小惑星が人口密集地域の大気圏に突入した場合、(約40~60メートル)の物体の空中爆発で、市街地の窓が割れたり、建物に軽微な損傷が生じたりする可能性がある。可能性ははるかに低いが、約300フィート(90メートル)の大きさの小惑星は、より深刻な被害を引き起こし、市街地の住宅が倒壊したり、より広い地域で窓が割れたりする可能性がある。

③NASAは小惑星の衝突確率をどのように決定するのか?

NASAの地球近傍天体観測プログラムは、未発見の小惑星の探索と、潜在的に危険な既存の小惑星の追跡を行う観測所に資金を提供している。観測データを使用して、NASAチームはコンピュータモデルを使用して地球近傍天体の軌道を計算。小惑星の軌道が計算されると、NASAの地球近傍天体研究センターにある同じコンピュータモデルは、今後数年から数十年にわたって小惑星が地球にどれだけ近づくかを予測できる。

④小惑星2024 YR4の軌道を変更させることは可能か?

NASAは2021年11月24日、地球に接近する小惑星の軌道を変更させることを目的とした「DART」と呼ばれるミッションをスタートさせた。未来の地球の安全を守るためにNASAと欧州宇宙機関(ESA)が結束して「地球防衛システム」を構築するため約3億3000万ドルを投入したビッグプロジェクトだ。DART計画は、宇宙探査機(プローブ)を打ち上げ、目的の小惑星に衝突させ、小惑星の軌道の変動を観察する実験だ。DARTはDouble Asteroid Redirection Test(二重小惑星方向転換試験)の略だ。小惑星が地球に衝突する軌道上にあると判明した場合、その軌道を微調整することで地球に衝突する危険性を排除する試みで、地球が宇宙で今後も存続していくための危機管理ともいえる計画だ。ただし、2024 YR4は惑星に重大な衝突リスクをもたらさないため、この小惑星の潜在的な偏向技術について推測するのは時期尚早だ(「天体の動きを変えた人類初の試み」2022年10月13日)。

⑤2024 YR4が月に衝突する可能性は?

小惑星2024 YR4が2032年12月22日に月に衝突する可能性は非常に低いが、小惑星が月に衝突しても、月の軌道は変わらない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年4月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。