電気料金の裏側:再エネ賦課金23.5兆円の行方

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再エネ賦課金は、日本で再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど)の普及を促進するために導入された制度であり、その根幹となるのは、2012年7月1日に施行された「再生可能エネルギー特別措置法」(再エネ特措法)だ。この法律に基づき、固定価格買取制度(FIT制度)がスタートした。

FIT制度は、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が一定期間・一定価格で買い取ることを国が保証する仕組みで、その買い取り費用の一部を電気利用者全員が負担する形で賦課金が設定された。

2012年に始まった制度の総額は23.5兆円だ。このお金は一体、誰の元に行ってるのだろう?再エネ促進の為に税金から賄われているお金の他、毎月の電気料金に上乗せになっている再エネ賦課金のこれまでの総額が23.5兆円なのだ。このお金の行き先、気になりませんか?

結論を先に言うが、この23.5兆円は、主に太陽光発電事業者や設備メーカー、地方の土地活用者、太陽光発電設置者に流れ、再エネ普及を支えてきた。ところが、家計負担の重さも際立っているのだ。

背景には、日本のエネルギー自給率の低さ(2010年代初頭で約10%程度)と、化石燃料への依存度の高さがある。2011年の東日本大震災と福島第一原発事故をきっかけに、脱原発や脱炭素の動きが加速し、再生可能エネルギーの導入拡大が急務となった。再エネ賦課金は、これを資金面で支えるための国民負担として設計され、初年度(2012年度)の単価は0.22円/kWhからスタートした。

東日本大震災がきっかけとは言え、実質賃金が上がらずコストプッシュインフレが続いている日本において、今や再エネ賦課金自体が家計の重しになっているのは事実だろう。

いずれにしても、再エネ賦課金自体を時限的にでも停止するか、いっそ、再エネ賦課金自体を止めてしまう案も浮上している。

そこで本稿では、現状と課題を明確にして、今後の再エネ賦課金のあり方について考察した。

現状

2025年4月時点で、再エネ賦課金は電気料金の一部として毎月請求されており、その単価は年々変動している。2024年度(2024年5月~2025年4月)の単価は3.49円/kWhで、2025年度(2025年5月~2026年4月)には3.98円/kWhに上昇することが決定しており、概算で月額約1,592円(年間約19,104円)、家計の負担となる。

賦課金の算定は、「再エネ買取費用」から「回避可能費用」(電力会社が再エネ電力を買い取ることで節約できる費用)を差し引き、販売電力量で割る方式で行われる。近年では、電力市場価格の変動が大きな影響を与えており、2023年度に一時1.40円/kWhまで下がったものの、市場価格の落ち着きとともに再び上昇傾向にある。また、賦課金は電力会社を通じて集められ、国の指定機関に納付され、再エネ発電事業者への支払いに充てられている。

再エネ賦課金価格推移:自然エネルギー財団 グラフ1

現状、再エネ賦課金は家計や企業にとって無視できない負担となっており、電気料金全体の約1割を占めるケースも出てきている。特に、電力多消費事業者には減免制度が設けられてはいるが、一般家庭には適用されず、負担感が増している。

今後の見通し

再エネ賦課金の今後の見通しについては、いくつかの予測と要因が絡み合う。

  1. ピークと減少の予測:
    FIT制度に基づく高額な買取価格が設定された初期の案件(特に太陽光発電)は、20年間の買取期間が2030年代に順次終了。環境省の2013年の推計では、賦課金のピークは2030年頃で、その後は減少に転じるとされていた。しかし、実際の単価上昇ペースは予測を上回り、一般財団法人電力中央研究所の試算では、2030年に3.5~4.1円/kWh程度まで上昇する可能性が指摘されている。その後、2040年代にはFIT制度の終了に伴い賦課金がゼロに近づくとの見方もあるが、新たな再エネ支援策が導入されれば、負担が続く可能性もある。

買取価格推移(予測値を含む) グラフ2

  1. 市場価格との関係:
    賦課金の単価は、電力市場価格(回避可能費用)に大きく左右される。燃料価格の高騰や国際情勢の不安定さが続けば、市場価格が変動し、賦課金の増減に影響を与える。2023年度の急落は市場価格高騰による一時的な現象であり、長期的なトレンドとは言い難い。

電気料金の全国平均(予測値を含む)グラフ3

  1. 政策の見直しと課題:
    再エネ賦課金の負担増に対する批判が高まっており、制度の見直しを求める声は根強い。例えば、ドイツでは2022年に賦課金を廃止し、国庫負担に切り替えた。日本でも、賦課金の逆進性(低所得者ほど負担感が大きい)や、太陽光発電コストの低下(10年前比で50~70%減)を理由に、補助金や賦課金の縮小を求める意見が出ている。一方で、カーボンニュートラル目標(2050年)達成のため、再エネ拡大は不可欠であり、賦課金の完全廃止は現実的でないとの見解も根強い。
  1. 自家発電の影響:
    太陽光発電の自家消費やPPA(電力購入契約)モデルが普及すれば、電力会社からの購入電力を減らし、賦課金負担を回避する動きが広がる可能性があり、賦課金の総額や単価にも影響を与えるだろう。

以後、

・再エネ賦課金で儲けたのは、誰?
・何故、国民負担が増えるの?

続きはnoteにて公開中(倉沢良弦の「ニュースの裏側」)。