安倍晋三なき世界で習近平が自由貿易の守護者になった

アメリカが対中追加関税を計145%に引き上げたのに対して、中国は11日にアメリカからの全輸入品に対する関税を12日から最大で125%に引き上げるとした。

中国は敢然とアメリカと戦って、世界の自由貿易と国際法秩序の擁護者として世界の尊敬を勝ち得たといってよい。EUでも中国への接近に走り出している。その先頭はスペインのサンチェス首相(世界の社民勢力があつまる第二インターの会長でもある)で北京を訪れている。欧州各国のニュースでは日本のことなど何もふれない。

関税を発表するトランプ大統領 ホワイトハウスXより

それに対して、日本はお米とかで脅したらなんでもいいなりになると見られてまず最初にワシントンに呼びつけられて、どうせお米のほかならなんでも差し出すだろうし、トランプ大統領は日本にならえと他の国に言うだろうから、日本は疫病神としなり世界からの信頼は地に墜ちるだろう。安倍元首相がトランプを相手に上手に立ち回り世界から得た名声は石破首相が使い果たし水泡に帰することになる。

中国商務省は「米国の横暴かつ威圧的な態度を一層際立たせるものであり、いずれ国際的な嘲笑の的となるだろう」とし、さらに、トランプ大統領が市場の圧力によってとった90日間の猶予措置は「中国からの外交的圧力の成果」と勝ち誇っている。スマホ、コンピューターについての課税措置撤回は、中国の圧勝ということになる。

中国、米に125%の報復関税も「これ以上は無視する」(AFP=時事) - Yahoo!ニュース
【AFP=時事】中国政府は11日、米国からの全輸入品に対する関税を12日から最大125%に引き上げると発表した。一方で、今後米国がさらなる関税を課したとしても「無視する」方針を明らかにした。 この

日本は、たしかに、当面頭を低くして凌ぎ、トランプ大統領がポシャるのを待つしかないというのは一理があるが、そういうなまくらな対処は世界にとって大迷惑だ。

しかも、担当大臣は、誰が見ても最適任は茂木敏充氏か斎藤健氏だ。しかし、内閣改造したくないのと、斎藤氏に恨みがある石破首相は、端から赤沢亮正経済再生相を充てるが経験と力不足で絶望的だ。石破内閣にあっては、能力は問われない。政治姿勢だけだ。

石破首相と赤沢経済再生担当大臣 首相官邸HPより

もっとも保守派も同じ病気。高市早苗氏に交渉させろとかいっている。トランプ大統領を怒らせようが、交渉を有利にすすめられなかかろうが、自分たちにとって耳に心地よく響く言葉をいって、中国大嫌いで共闘なんぞ考えない人なら、日本がどうなろうがよさそうだ。

日本も含めて付き合いかねるので中国と組む方を選ぶ、あるいは、保険をかける国が増える。中国をうまくもっていけば日本に融和的になる可能性がある。習近平主席は尊大なだけで反日とまではいえないし、王毅外相など本音では親日だ。

ドイツなどアメリカとロシアが嫌なら中国としか組むところがない。安倍元首相は別にトランプ大統領にべったりだったわけでない。日欧関係はトランプ大統領に対する被害者同盟だったからこそ劇的に改善した。日欧自由貿易協定なんか欧州が乗り気でなかったのが実現したし、仏独英などとの軍事協力も進んだ。

習近平主席は安倍元首相にトランプ大統領とどう対話するかアドバイスを求めたりしたので、日中関係は改善した。習近平主席を国賓として日本に招待することを決めたのは安倍元首相であることを無視したり反対する人は安倍継承とはいえない。

安倍首相(当時)と習近平国家主席 平成 29年11月APEC首脳会議

ただ、安倍元首相は習近平主席にトランプとの仲介人であったので、習近平主席に評価されたが、石破首相には習近平主席に評価されるものがなにもない。

なお、アメリカの話については、ダイヤモンド・オンラインに書いた『「日本は米に700%関税」トランプ氏はデタラメだと反発する日本人が知らない事実』を是非、読んで欲しいが、それとともに、深田萠絵さんとの対談でも議論した。ぜひ、ご覧いただきたい。