「しつこい営業をしたくない」と言う士業がたどる末路(横須賀 輝尚)

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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。すでに資格を持っている人はもちろん、資格を取って独立したい人や資格に興味がある人に必読のQ&Aを、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『資格起業バイブル』から、再構成してお届けします。

最初はお願い営業も重要である

Q:士業の仕事は無理矢理お願いするものではなく、依頼を待つべきものだと考えています。

士業の仕事はお客様が頼みたいと思って初めて依頼があるものだと考えています。そのため、あまりこちらからお願いして営業するものではないと思うのですがどうでしょうか? 個人的にも押し売りをする営業は嫌いです。

「士業は営業するものではない」という風潮は過去のものになりつつありますが、その一方で「押し売り営業が好きではない」という方も多数いるのは事実です。もちろん強引な営業が好きではないなら、違った営業を選べばまったく問題ありませんので、最終的には個人の選択ということになります。

現実的には、営業が得意ではないから資格での開業を選ぶという人も多数いるので、この士業業界はどうしても「しつこい営業をしたくない」「スマートに営業をしたい」と思っている方が多いようです。

しかし、独立起業するということは難しくはありませんが「楽して儲かる」ということは絶対にありません。あなたがどんなに営業が好きではないと思っていても、独立起業して食べていくと決めた以上は「士業となったあなた」をひとりでも多くの人に知ってもらう必要があります。

もしあなたの実家や配偶者がお金持ちでまったくお金に困らない状況であれば、のんびりと事務所を開いて待っていればいつかは仕事が来るでしょう。しかし、現実的にはそのような余裕がある人は極めて少数派だといえます。

つまり、難関資格に通ったからといって、営業に関してはなりふりかまっていられないのです。親戚や友人、元上司や部下など頼れる人には頼り、いわゆる「何かあったら何でもよいのでお願いします」というようなお願い営業も時には必要なのです。きれい事だけではお金は入ってきません。

そして営業を嫌い、面倒臭がっては経営などほど遠いと断言してよいでしょう。営業としてやるべきことは決して多くないといえますが、決して楽ではないのです。

いうまでもなく、何もしなければ仕事は入ってきません。そして何より開業したばかりなのに「一所懸命やっていきたい」という熱意がない人に誰が仕事を頼むのでしょうか。あなたがお客様だとしたら、「営業が嫌い」という起業家一年生に好感を持つでしょうか。もしあなたがまだ質問のような気持ちでいるとしたら、開業資金が底をつく頃、私のお伝えしたいことがわかると思います。

厳しく聞こえるかもしれません。しかし、こうして覚悟の決まらないまま開業し、ひっそりと廃業する人もなかにはいるのです。あなたには、そうなってほしくないのです。

積極的に取りやすい仕事やビジネスを選ぼう

最初の頃は、効率のよい営業などできません。よほどの営業経験、経営経験があれば別ですが、独立開業したものの「本格的な営業が初めて」という方も多いでしょう。最初のうちは、営業の解説をしているビジネス書を読んでもあまり参考になりません。なぜなら、営業に関しての知識がなさ過ぎるため、せっかくのよいノウハウも活用しきれないのです。

もちろん勉強することは重要ですが、最初のうちは必死で人に会い、近い人にお願い営業をすることが重要です。もちろん将来的には、自分が理想とする営業方法、取り扱いたい業務を中心に経営をすればよいでしょう。ただ、最初の段階では「必死な活動」も重要なのです。

たとえば、私の場合は同業者にも営業をしました。どんな小さな仕事もかまわないので、お手伝いできる仕事があれば回してほしい、そういっていわば下請け的に仕事をかき集めました。

その多くが車庫証明のような比較的報酬の安い業務となりましたが、小さな仕事だからといって小さく扱うことは決してしませんでした。

もちろん元請け的な行政書士も自分自身の生活があるため、大きな仕事を出してくることはほとんどありません。しかし、こういった仕事を積み重ねてお金は増えていくということを痛切に感じました。1,000万円という目標とする数字は、1円の積み重ねなのです。そして、行政書士業務に直接関連しないことも依頼を頂ければ行いました。

東にビジネス系セミナーの手伝いを頼まれれば喜んで行い、西にインターネットの設定で困っている年配の経営者がいれば進んでネットの設定をしに行きました。本当にアルバイトのようなことから、最終的には講師をやってほしいというありがたいお話までやりました。果たしてそれらがしっかりとできていたかどうかは私自身にはわかりませんが、必死になって誰かのために役に立とうという姿勢が最終的に仕事を増やしてこられた要因と考えています。

他の士業の事例では、知り合いの会社の税務を格安で受けさせてくれという営業で小さな顧問を取ったり、社労士も1万円を切るような顧問をかき集めて売上にしたりなど、今成功者と呼ばれる人は、どういう経緯であれ一度は必死になった時期が創業期に必ずあるのです。

もちろん、マーケティングなどの知識も非常に重要です。私もビジネス系のセミナーではマーケティングの重要性をお伝えします。しかしながら、それ以上に必死になってこの仕事で食べていきたいという姿勢がなければ、やはりお客様はあなたに仕事を出したいとは思わないものです。抽象的な話ではあります。ただ、お金がなくなってから、仕事が取れなくなってから気づいたのでは時に遅すぎることがあるのです。

横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン(株)代表取締役 特定行政書士
1979年、埼玉県行田市生まれ。専修大学法学部在学中に行政書士資格に合格。2003年、23歳で行政書士事務所を開設・独立。2007年、士業向けの経営スクール『経営天才塾』(現:LEGAL BACKS)をスタートさせ創設以来全国のべ1,700人以上が参加。著書に『資格起業家になる! 成功する「超高収益ビジネスモデル」のつくり方』(日本実業出版社)、『お母さん、明日からぼくの会社はなくなります』(角川フォレスタ)、『士業を極める技術』(日本能率協会マネジメントセンター)、他多数。
会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業 | 横須賀輝尚 https://www.amazon.co.jp/dp/B08P53H1C9
公式サイト https://yokosukateruhisa.com/

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年2月12日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。