トランプ大統領の脅し
トランプ大統領は、ベネズエラのマドゥロ政権を経済的苦境に追い込むため、新たな手段に打って出た。スペインの大手石油・ガス会社レプソル(Repsol)に対し、ベネズエラでの原油および天然ガスの採掘と輸出を5月27日までに中止するよう命じた。これに従わなければ、同社のアメリカでの事業継続を停止させると警告した。これは、トランプ大統領が繰り返し用いてきた“脅し”の手法である。
ベネズエラの原油は超重質油であり、精製に高いコストがかかる。そのため、こうした原油を処理できる精製設備を持つ企業が必要とされている。レプソルはそれに対応できる技術と設備を有しており、マドゥロ政権にとっても極めて重要な企業とされてきた。
脅迫を受けた他の4社
同様の圧力を受けた企業は他にも4社ある。アメリカのグローバル・オイル(Global Oil)、イタリアのエニ(ENI)、フランスのモレル・アンド・プロム(Maurel & Prom)、そしてインドのリライアンス・インダストリーズ(Reliance Industries)である。
これらの企業はいずれも、ベネズエラの国営石油会社(PDVSA)とのジョイントベンチャーを通じて、原油および天然ガスの採掘・輸出事業を行っている。
トランプ大統領は、米国企業であるシェブロン(Chevron)に対しても、すでにベネズエラでの事業継続の許可を取り消している。これらの企業は、バイデン前政権下では事業継続の認可を得ていた。
例えばレプソルの場合、ベネズエラ政府は同社に対して5億400万ユーロの負債を抱えている。レプソルは、ベネズエラ産原油の採掘・輸出によって得られる利益で、この債務を相殺しようとしていた。なお、スペインは昨年、ベネズエラから13億900万ユーロ相当の原油を輸入している。
トランプ大統領はレプソルに二者択一を迫る
トランプ大統領の姿勢は、「この負債を放棄しない限り、レプソルの米国事業継続を認めない」というものである。レプソルにとって、米国での事業は同社における3番目に重要な収益源である。したがって、5億400万ユーロの負債を諦めて米国での事業を継続するか、それとも米国事業を放棄してベネズエラでの事業を続けるか、という厳しい二者択一を迫られている。
レプソルは現在、この事情を米国政府に理解してもらうべく、トランプ政権との交渉を開始している。