陸自のレンジャー訓練はバンジージャンプと同じ度胸試しみたいなものです。そら、レンジャー章を得たことは自信になるでしょうが、それだけです。
本来のゲリラ戦での能力開発と生存能力の獲得には寄与しません。それは一回パスすれば生涯レンジャーです。だから継続的な訓練をするわけでもないし、今の戦争に沿ってリフォームした訓練を受けるわけでもない。
運転免許だって更新があるのにたった一回の「バンジージャンプ」やっただけで、実戦で戦えるというのは夜郎自大です。
今回中止になったのはいわゆる部隊レンジャーで、富士学校でやっている幹部レンジャー、空挺レンジャーは継続されているそうです。
死者が相次ぐ陸自「レンジャー訓練」の実態 のどの渇きのあまりに尿を飲み、わざと崖から落ちて離脱…

有事の際に敵地に潜入、襲撃するなど“ゲリラコマンド”の技術を習得するレンジャー隊員だが、多くの場合、資格取得後は元々いた部隊に戻り、一般隊員とともに活動する。前田さんの在籍当時はレンジャーの資格をとっても待遇面の変化はなかった。
補給物資が来なくてもサバイバルできるよう、生きたヘビやカエルの食べ方を学ぶ実習もあった。「ミラノ風カツレツ」さながら、銃剣でたたいて平たくのばしたヘビを素焼きにしてしゃぶると、「生臭い鮭とば」の味がしたという。
前田さんにとって何より耐え難かったのは、水分摂取量が制限されていたことだ。
「ものすごくのどが渇いているのに、上官からは『ペットボトルのキャップ2杯までしか飲むな』なんて言われる。のどちんこがカラカラに干上がりました。私は渇きに耐えられず雪を食べてお腹を下しましたが、なかには自分のおしっこを飲んでしまう人もいましたね……」
「根性なしと思われたくない」というプライドから、わざと崖から落ちるなど大怪我をすることで訓練を離脱する者までいた。
約30人の候補生になっても、訓練をやり遂げてレンジャー隊員になれるのは7割程度。大量に脱落者が出て5人ほどしか残らなかった年もあったという。
2021年9月、レンジャー候補生の30代男性隊員が訓練中に重度の熱中症にかかり、死亡した。その後24年8月にも、20代男性の候補生が体調不良を訴え、命を落とした。
今回、レンジャー養成訓練を一時中止して内容を見直す決定がされたことについて、前田さんは妥当な判断だと受け止める。レンジャーの数を増やしたい陸自上層部からは「候補生の○割は卒業させてレンジャー隊員にしてほしい」との意向が示される一方で、助教をはじめ現場の指導官たちは「どの部隊よりも強靭な隊員を育成したい」と“愛の鞭”をエスカレートさせる。その結果、厳しすぎる訓練でもリタイアが許されず、候補生たちが命の危険にさらされる場面を幾度も見てきたからだ。
訓練中に集合に遅れた反省として、顔の下に汗で水たまりができるほど腕立て伏せをさせられることもあった。「いかなる状況でも任務を遂行する精神力を養う」という名目で、訓練を終えて自室に戻ると、ベッドがひっくり返り、ロッカー内の荷物が外に放り出されている“台風”と呼ばれる慣習もあった。
「レンジャー訓練の本来の目的はゲリラコマンドの技術を学ぶことであり、延々と掃除をしたり、部屋荒らしに対処したりすることではない。訓練外での消耗が激しく、結果的に最悪のコンディションで訓練に臨み、パフォーマンスが下がるのは本末転倒ではないでしょうか?」
「基礎訓練中は、訓練後の負担も非常に大きい。消灯時間の23時までに食事、入浴、宿舎の掃除、武器の手入れなどを済ませなければいけないのに、掃除は少しでもミスがあるとやり直しを命じられる。だから『終わらない清掃点検』と呼ばれていたし、とにかく時間をつぶされる。消灯後に布団をかぶってライトで手元を照らしながら、明け方4時ごろまで座学の課題に取り組み、6時に起きて訓練へと向かう生活が続きました」
自衛隊によくある、訓練のための訓練になっています。やっていることは魁!男塾とか、巨人の星です。身内にしか通用しない底の浅いヒロイズムに自己陶酔しているだけで、実戦では役に立ちません。
無論睡眠時間を削ったり、肉体的な負荷をかけるような訓練も極限時に実力を発揮するために必要ですが、やっていることはいじめと紙一重です。いじめれば強い兵隊が出来上がると信じている。
恐らく訓練期間中や「シゴキ」に関して医官は同行もアドバイスもしていない。水分制限にしてもどこまではOKでどこから危険かということは本来専門の医官が指導すべきです。部隊の医官充足率が2割台という体たらくですから、そのような医官の活用もできていなかったのではない。
それどころか、衛生要員や救急車も以前は待機させていたのですが、それすらやらなくなっているそうです。
しかも30年前と今では気温も異なっており、熱中症対策も変わっているのに、根性だけで押し通す。しかも幹部からやるなと言われても曹クラスが、伝統ですから大丈夫です、口を出さないでくださいと強弁して不必要なしごきを行う。部下が上官の命令を聞かない段階でそういう連中を排出した「筋脳」製造システムのレンジャー訓練は有害ということです。
各部隊で、てんでにおこなわれており、標準化もされていない。
これは一般部隊でも同じです。これだけ夏場の気温が上がっているのにヒートマネジメントもろくにしていないし、適宜水分補給をさせるシステムもない。だから18式防弾ベストみたいに、17キロも重量があり、体を覆う面積が低い防弾ベストを導入して、プレートキャリアすら導入しなかった。
装甲車両にまともに冷房がつき出したのは16式が途中からで実質的に次期装輪装甲車や、共通戦術装輪車ぐらいからでしょう。
シンガポール以上の気温でパッチを締め切ってNBCシステム使うなんて不可能ですが、それがおかしいと思わない。本来であれば装甲車両、できればトラックにも冷水のタンクをつけるべきです。南ア装甲車は70年代から装甲車に飲料水タンクを装備していましたが、「我が国固有の環境」を鑑みればヒートマネジメントは必要不可欠なはずです。
いずれにしても経験則で十年一日のレンジャー訓練は百害あって一理なしです。やるのであればカリキュラムを統一し、衛生の知見を活かしたプログムにすべきです。

自衛隊のレンジャー訓練の様子
Wikipediaより
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財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)
財政制度分科会(令和6年10月28日開催)資料
防衛
防衛(参考資料)
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2025年4月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。








