アクションしないなら「情報」は「ノイズ」になる

外出時にも外からワンコの状況を確認できるようにしようと思いペット監視カメラ(写真)を注文しました。部屋の中を360度回転させて、リアルタイムに携帯で把握できるものです。

しかし、商品が届いてからふと思ったのは、果たしてこのペット監視カメラには設置することに意味があるのかという素朴な疑問でした。

もし監視カメラで室内に不審者が入ったり、ワンコが怪我をしたといった状況が把握できれば、すぐに予定を変更して自宅に慌てて帰ることになります。しかし、マンションのセキュリティは万全ですし、怪我につながるような危険物などは一切放置していませんから、そのような最悪の事態は起こる可能性はほぼゼロです。

むしろ監視カメラが送ってくる映像として可能性が高いのは、ワンコが床におしっこやう〇ちをしたり、急に興奮して吠えて室内を走りまわったりするような状況だと予想します。

そのような映像を監視カメラでチェックできたとしても、そのために予定を切り上げて帰る事は恐らくないでしょう。仕方なく放置して、予定が終わり次第慌てて帰ることになると思います。

しかし、このような家で何が起こっているのかの状況を知ってしまうと、せっかく食事をしているのに気になって集中できなくなってしまいます。

せっかく情報が得られても、それをアクションに結びつけないのであれば、そのような情報はむしろ必要のない雑音(ノイズ)といえるのかもしれません。

そう考えるとペット用監視カメラは無くても良いのかと思ってしまいました。

Georgijevic/iStock

資産運用でも似たようなことが言えると思います。マーケットの変動が大きくなって、株価が急落したり急激な円高になったりすると、その動きをリアルタイムでずっと見ている人がいます。

しかし、相場の変動によって自分が保有しているポジションの損失が膨らんでいくのを見ているだけで何もアクションを行わなければ、単にストレスを感じるだけでマーケット情報には意味がありません。

何もしないのであれば、むしろマーケット情報等は見ないで放置しておいた方が精神衛生的には良いとも言えるのです。

誰もが携帯のような端末をいつでも見られるようになって誰でも大量の情報を簡単に得られるようになりました。その結果、多くの人は処理しきれない情報に自分の生活が振り回されるようになりました。

過剰な情報に振り回されないために大切になってくる事は、不必要な情報を遮断することです。

例えば、私のように中長期の視点で資産を増やそうとしているなら、短期的な日々の値動きに一喜一憂する必要はありません。となればリアルタイムの株価ボードやFXの画面は見なくても良いのです。

情報は量ではなく質が重要です。自分の情報処理能力に限界があるのであれば、いかに自分にとって必要のない情報に触れないかを工夫することが、情報の精度を高めます。だから情報は集めることよりも捨てることの方が大切です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年4月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。