万博会場の隣接地で統合型リゾート(IR)施設の工事がいよいよ着工されます。万博への影響が懸念され、工事着工までひと悶着ありましたが、大型重機が大量に現場に入り、華やかな万博から次の経済的刺激の一手につなげる形になります。事業者はMGMリゾートとオリックスで事業総額は1兆2700億円、開業は2030年を予定しています。

大阪IR 大阪市HPより
統合型だけあってその施設にはあらゆるものが内包されるわけですが、特に目玉がカジノであります。私はこの件については「今更カジノ」という懐疑的目線であります。事業が儲かる儲からないという話以前にカジノを持ってこないと集客や収益を生み出すことができないのだろうか、という単なる疑問であります。
カジノのメッカはラスベガスで東海岸ならアトランティック シティがあります。またアジアでカジノと言えばマカオでしょう。実際カジノの収益としてはマカオの方が上で世界で最も稼ぐのがマカオのギャラクシーでありますが、大阪のMGMが完成すればこれを上回るのではないか、と予想されています。ラスベガスにしろマカオにしろ豪華で巨大なカジノホテルが林立して人々を圧倒することが集客力の最大のポイントであり、不夜城と化すあのネオンと非日常感は確かに病みつきになる人は出てくるのでしょう。
ところで最近オンラインカジノの問題が顕在化しており、有名人らが次々と「自首」しているわけですが、なぜダメなのか、という点で説得力に欠ける気がしてるのです。法律的見地から見ると常習的になり、勝負が運といった偶然性に依存しやすいこと、更にそれにより生活基盤を壊す可能性がある点をとばく罪の要因として日本の法律で厳しく取り締まるわけです。
では公益の競馬競輪競艇はどうなのか、パチンコは実質的に換金できるではないか、という点はかなりつじつま合わせの理由が並べられます。パチンコが一旦景品に変えてそれを換金するという方法は相当無理やりなこじつけであります。私は英語でいうgrandfather化しているのだろうと察しています。
この言葉に適当な日本訳がないのですが、一種の既得権と考えてもらってよいと思います。つまりパチンコ業を昔からやり、それを換金する流れが昔から存在し、警察がそれを厳しく取り締まらなかったことで既得権が生じたわけです。パチンコをなぜ放置したか、いろいろ事情はあるのでしょう。戦後、残留朝鮮人が職に困ったという事情もあったかもしれません。
ではオンラインカジノとパチンコや公営ギャンブルでは賭博の要素である偶然性、常習性、生活基盤崩壊のリスクの違いはと言われればどこまで説明できるでしょうか?生活基盤崩壊のリスクの点でいえば株式市場のオプション取引などデリバティブ系や為替FXだって当てはまりそうです。例えば為替取引はストップロスという仕組みが存在し、為替が急激に動いた際、自分で指定した変動幅を超えると自動的に損失処理されるようになっています。一夜明けたらすっからかんということは大いにある訳です。これとどう違うのか、といえば偶然性だけがその差異ではないかと思うのです。
ここまで類推するととばく罪の趣旨は警察や政府が監理(=監督管理)できる範囲かどうかが一つのポイントではないかと思うのです。オンラインカジノは海外で運営されているのでひどい目にあっても誰も助けることはできません。また派生的にマネロンや犯罪にかかわる可能性もあり、その際に警察に泣きついても対策は極めて困難なのでそれならば「そんな海外の危ないところに行かないで日本の箱庭で遊んでいなさい」というのが本質ではないでしょうか?
大阪のカジノも結局、監理という点が最大のポイントで入場料制度を取り、常習性を和らげるという配慮がなされているわけです。
ここまで考えると日本人は守られているなという気がするのです。海外ではこんなおせっかい、誰も焼いてくれません。リスク管理は自分だけです。「あぁ、彼、自己破産したのね」ぐらいです。かわいそうだから云々という話は日本ぐらいしか聞こえてこないのです。
たかがカジノひとつとっても日本人論的な深い事情がそこに秘められているという気がします。それでもやりたい方に一言。ラスベガスあたりに行く時は必ず予算を決めよ、とされます。私は更に「2倍になったら即刻止める」といったルールを設定しないとカジノではまず勝てないと断言します。運に左右される勝負の場合、「確率論の歪み」が勝ち負けにつながるので長くやればやるほど負けるのは論理的には明白です。ひいてはMGMとオリックスに儲けさせることになるのですよ。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年4月28日の記事より転載させていただきました。