28日正午過ぎ、スペイン全土とポルトガル、フランスの一部で大規模な停電が発生しました。29日には、スペインもポルトガルに続いて国内の電力復旧を発表しました。
首都マドリードやバルセロナでは、電話やインターネットが不通になり、地下鉄やバス、鉄道が止まって交通が大混乱しました。スペイン政府は非常事態を宣言し、警察官3万人を動員、ポルトガルもエネルギー危機を宣言しました。
スペインを中心とした大規模停電のようす
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停電の原因はまだ特定されていませんが、スペインとフランスの送電線の接続障害や、スペイン国内の電圧変動が疑われています。サイバー攻撃の兆候は今のところ確認されていません。サンチェス首相は、国内電力の約60%に相当する15ギガワットがわずか5秒で失われたと発表しました。
停電後、スペインとポルトガルでは発電量が急激に落ち込みました。夜間で太陽光発電が利用できなかったため、主にガス火力発電や水力発電によって電力の回復が図られました。また、スペインの送電網管理会社は、フランスとの送電線接続が途絶えたことも、停電に影響した可能性があるとみられています。
スペインとポルトガルで発生した大規模停電は、南西部エストレマドゥーラ州にある太陽光発電設備が発端とみられています。事故原因の特定には数カ月かかる可能性があり、現時点ではサイバー攻撃や異常気象の影響は否定されています。事故発生時、電力供給の約78%は再生可能エネルギーと原子力によって賄われていました。サンチェス首相は「再生可能エネルギーの過剰供給や原発の出力低下が原因ではない」と強調しています。
しかし、停電の背景には、「慣性力」のない再生可能エネルギーが主流になったことで、局所的なトラブルが広域停電に拡大しやすくなっていることも指摘されています。
ただし今回の直接原因は再エネではなく、ヨーロッパの複雑な送電網の基幹系統の事故や連携線トラブル、中給の誤操作などの可能性などが高いと見られています。
スペインでは停電時に電力周波数が49.85Hzまで低下し、さらに0.4Hz下がれば欧州全域がブラックアウトする危機だったこともわかりました。
現地では今も公共交通の混乱が続いており、原因究明と完全復旧に向けた作業が続いています。