40代までに終えるべき「人生の宿題」

黒坂岳央です。

SNSではよく「向いていない仕事はやめよう」「好きを仕事にしよう」という言葉が飛び交う。これは一理ある。特に経営者やフリーランスといった、自分で舵を取る働き方をしている人たちには刺さる考え方だろう。

だが一方で、「そもそも自分の向き不向きがわからない」「何が好きなのかすら見えない」と戸惑う声も多い。現実には、その“わからなさ”のまま40代を迎えることこそ、最大のリスクではないだろうか。

筆者からの意見としては、「向き/不向きがわからなくて困らないよう、40代までにはっきりさせておけ」ということだ。

peshkov/iStock

適正は簡単にはわからない

自分に合った仕事、自分が心から好きだと感じられる分野。それを最初から知っている人は、ごくわずかだ。

たとえば大谷翔平選手のように、子どものころから明確な目標を持ち、突き進んで夢を実現したワールドクラスの天才のケースは、きわめて稀である。

「心の直感に素直に従って好きを仕事にしなさい」はほとんどの人に役に立たないアドバイスだ。「それができないから苦労している」と返されるだけである。

自分自身、過去に10年近く努力を続けた会計の分野で「これは全く適性がない」と悟った経験がある。学生時代には一日8時間以上の勉強をし、「何が何でもこの道で生きていく!」と思い込んでいたが、実際に仕事として取り組んで、毎日のように終電まで残業をして祝日はスクールに通って勉強をしてもパフォーマンスが出せない。

そうした失敗の積み重ねでようやく、自分の向いていないことが少しずつ明らかにしてきた。

適性とは、頭で考えたりネット検索をしてもわからない。最悪なのがよくわからないインフルエンサーの意見を真に受けてしまうことだ。そんなことをすれば、ただただ認知が歪み、ますます自己理解の活動から遠ざかるだけである。

凡人のための「適正の見極め方」

では、天才ではない我々はどうすれば自分の適性を見極められるのか。

答えはひとつ。興味を持ったことに片っ端から挑戦し、ひとつひとつフルコミットして向き合ってみることだ。このような事を言うと、「泥臭く、コスパの悪い、昭和チックの頭が悪そうな提案」に聞こえるだろう。

しかし、適性を見極めるには「知識」ではなく「経験」が必要だ。適正の見極め、という人生最大級の大仕事にコスパの良い近道など、残念ながら存在しない。

そもそも、本気で挑戦したこともないまま「自分には何が合うかわからない」と悩むのは、分析材料なしに結論を出そうとするようなものだ。

「自分には別に好きなものなんてないから」と試す前から諦めるようではダメで、本気でやらないと何も見えない。そしてそれは若い頃に済ませておく「人生の宿題」みたいなものなのだ。

「不惑」という意味

40歳を「不惑の年」と呼ぶ。人生の迷いが消える年齢、という意味だ。

もちろん、誰しも悩みながら生きている。筆者自身も例外ではない。だが、自分の強みと弱みを把握し、「自分はこういう価値観で、こう生きる」という人生の大枠はすでに決めている。

自分の航路は、「自分の得意で人様のお役に立てる仕事で社会貢献をし、子供たちを強者に育て、できる限り日本経済に寄与する」というものである。

この人生の航路についていえば、自分はもう惑うことはない。なぜなら、過去にあらゆる可能性を試し、数多くの失敗を通して、できないこと、やるべきでないことはハッキリ明確化させてきたのでそこについては一切の迷いがないのだ。

40代を前に「自分という人間が見えない。強み弱みがイマイチよくわからない」ということであれば、今からでも適正診断をするべきである。一部の活動はもはや手遅れかもしれないが、それを言い始めたら何もできない。できる範囲で総当たりでチャレンジしていくしかないのである。

適性は、探すものではなく、試すことでしか見えてこない。そしてそれは、10代・20代・30代のうちにできる限り多く試しておくべきだ。

 

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働き方・キャリア・AI時代の生き方を語る著者・解説者
著書4冊/英語系YouTuber登録者5万人。TBS『THE TIME』など各種メディアで、働き方・キャリア戦略・英語学習・AI時代の社会変化を分かりやすく解説。