米中、追加関税115%引き下げで合意:「朝海の悪夢」がよみがえる?

米国と中国は5月12日、スイス・ジュネーブでの閣僚級協議を経て、互いに課していた追加関税を115%引き下げることで合意しました。これにより、米国の対中関税は30%、中国の対米関税は10%に縮小される予定です。

会見するベッセント財務長官

貿易赤字の削減や製造業の国内回帰を促すことを念頭に置き、相互関税措置の一環として、トランプ大統領は中国からの輸入品に対する追加関税率を145%まで引き上げました。これに対し、中国も米国の追加関税への報復措置を実施し、両国間の貿易は事実上の停止状態に近づいたとみられていました。

しかし、中国との貿易促進を重視する経済界に近いベッセント財務長官が、トランプ氏への説得工作に成功し、米中の関税合戦は一時的な停戦に至りました。

また、「米国が中国に対して課す関税が10%未満になることはありえない」と述べました。

政権発足直後から、トランプ氏は中国と「大きなディール」を締結することに強い意欲を示していました。そのため、今回の展開は、彼の想定通りだった可能性があります。

ベッセント財務長官は、「中国側はバイデン氏が弱いと見て、バイデン政権発足後にトランプ政権時代の通商合意を無視した」と非公開会談で述べたと明かしました。

今回のトランプ氏の独断に基づく追加関税の急激な引き下げは、追い込まれたトランプ氏が、自身の面子と米国の国益を優先し、中国と容易に取引を行う可能性があることを示しています。そのため、「朝海の悪夢」のような事態が日本を襲う恐れがあることが危惧されます。