「経営コンサルタントで思想家」の倉本圭造です。
今回は突然なんですが、特別企画として、株式会社「識学」の代表取締役社長である安藤広大氏との対談企画をお届けさせていただきます。
「株式会社識学」は、一般的な知名度はまだそれほど高くないかもしれませんが、中小企業やベンチャー界隈では「ああ、あの識学さん」という感じで結構知られた存在なんですね。
安藤氏の最新刊のプロフィールによれば、
創業後4年あまりで東証マザーズ上場、9年間の間に独自の「識学メソッド」を取り入れた会社はすでに4300社。著書はシリーズ累計140万部突破
…と、大変ご活躍でいらっしゃいます。
今回、ご縁があって対談企画をご提案いただきまして、この私のnoteと言論プラットフォームのアゴラさんに同じテキスト版のウェブ記事がアップされ、そして識学さん自身のYouTubeチャンネルにも動画でアップされます。
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識学さんのコンサルティングスタイルを、安藤さんの著書などを読ませてもらった印象として僕の視点でまとめると、彼らは「組織の構造」や「役割の明確化」といった観点を重視するユニークな思想を持って経営改革を行われている集団ということになります。
今の世の中、
・「”上下関係”や”組織の構造”とか”立場”とかでなく、”人と人”との関係性が大事だ」
・「社員に寄り添う経営をするべき」
…という方向の発想が流行していますが、本当にそういう方向の経営をすることで、
・その組織は強くなっているのだろうか?
・社員の力を一人ひとり発揮させられているのだろうか?
…ということを、安藤さんは強い言葉で疑問として投げかけてきます。
そしてむしろ、
・組織の役割分担を明確化する
・評価制度を丁寧に整備し、何がその人の責任なのかを明確化する
・「人と人」のようなウェットな関係性にハマらず「立場と立場」の関係性を重視する
…といった方向の仕組みを作り上げることで、人間関係で過剰に疲弊したりせず、「やるべきことをやり、個々人の能力を発揮させ、組織成長にも繋がる」のだ、という主張をされているわけですね。
こういう発想は、ともすれば「部下は上司のいうことを黙って聞け」という事を言っている集団だという誤解を生む部分もあって、識学さん自身もそのあたりを気にされてる部分があるそうですが(笑)
そして私自身も識学さんについてそういうイメージがなかったわけではないのですが、今回の件をお声がけいただいてから、安藤さんの本をいくつか読ませてもらうと、案外もっと深い意味がある考え方があるんだなと感じる部分がありました。
そのあたりを、今回の対談では深堀りしてみましたので、安藤さんのご意見に賛同する方もしないかたも、それぞれご自身の体験をもとに、
日本における「経営」のあり方はどうあるべきなのか?
…について考えてみていただければと思います。
特にこの「前編」記事では、私の仕事でおつきあいのあったある会社が、ものすごい「経営危機」にハマりながら、奇跡の復活を遂げたプロセスなどを紹介しつつ、そういう「皆の力を発揮できる日本の組織の強み」を、時代の変化の中でもどうやって維持していけばいいのか?という話をしています。
きっと読者の方は、「識学さんのやり方」を全部取り入れたいわけではないけど、自分の会社でもこういう部分は応用できるのでは?といったレベルで受け止める気持ちになる方がかなりいると思います。
動画かテキストのどちらかでぜひお読みになって、ご一緒に考えていただければと思います。
感想を述べ会えるx(twitter)のツリーをご用意しておきましたので、大企業の方も中小企業の方も外資系の方も、ベンチャーの方も伝統企業のかたも、それぞれなりの観点で「良い組織とは?」について議論を深めることができればと思っております。
以下からどうぞ。リプライでご意見をお寄せいただければ嬉しいです。
では以下、テキスト版の前編記事をお読みください。
1. 「ちゃんとした組織の規律」があるほうが、「社員の意見」を取り上げることができる
安藤社長:みなさんこんにちは、識学チャンネルということで、今日は経営コンサルタントで思想家の倉本圭造さんにお越しいただいてます。
倉本:よろしくお願いします。僕は中小企業コンサルタントをしながら、同時に「思想家」業として、色々と社会問題に対する提言とかをしているんですが、片足を「中小企業コンサルティング」の世界に突っ込んでいるものとしては、識学さんのお名前は当然耳にしていたわけですけど・・・
ただ個人的な感じとしては、かなり遠いキャラクターなのかなという部分がありまして、今回お話いただいたことを僕のクライアントとかに言ったら「マジっすか」という反応というか、かなり違う方向性な印象だったんですね。
ただ今回この本とかを読ませてもらうと、結構僕の言ってることと近い部分もあるし、「宗教だとか軍隊だとか根性論じゃないか」的な、ネットでよく見る識学さんのイメージとは随分違う面もあるな、と思いまして。
2週間前このお話をいただく前の僕の印象と、実際に本読んでみると印象変わったなという部分を比べていくと、世間における識学に対する印象の誤解が解ける部分もあると思いますし、今の日本に何が必要なのかという話もできればいいなと思っています。
安藤社長:そうですね、そういう話もぜひしていきたいと思います。僕も著書の方とか読ませてもらって、わりと本当に似ている部分もあるなと思いました。
倉本:特に思ったんですが、「従業員から情報を吸い上げる・社員の意見をちゃんと取り入れる・・・ためには組織の規律がむしろ必要」っていう話なんですよね。
僕のクライアントは、僕のキャラを反映して、識学さんではあまり推奨されてないワンオンワンだとか、従業員アンケートだとかをやってる企業も多いんですが、そういう経営者を見てると、案外自分の立場をキチンと守って規律が崩壊しないようにする小ネタを色々持ってるなと思っていて、要するに「規律がちゃんとあることで情報を吸い上げることも可能になってる」みたいなところがあるなと思ってるんですね。
ナアナアに友達っぽくなってるんじゃなく、規律がちゃんとあるほうが、情報を吸い上げることもできてる・・・というあたりの問題意識が、結構識学さんと共通してる部分があるなと思ったんですが・・・
安藤社長:あーーなるほど。
識学では、「位置」という概念を大事にしていて、立場に関する部下と上司の認識をしっかり合わせるということですね。
「線引き」という話でいうと、上司は上司の責任があって、部下は部下の責任があって・・・という方向にそれが明確になればるほど、一般的にはトップダウンで「部下は考えない」状態になるというふうに思われがちですが・・・
倉本:そう思われがちですよね
安藤社長:でも実際はそうじゃなくて上司は上司の責任、部下は部下の責任が明確になると、何か問題がおきた時に上司に相談したり情報を上げないと目標達成できないという環境になっちゃうので、必然的に情報は吸い上げられるようになるんですね。
だから結果的に、そこの「線引き」が明確にあるほど、情報を吸い上げることができる、そういう組織になっていくんですね。
倉本:そう、そっちの部分が目的なんだなというのが、結構識学の意外ポイントの最大の部分だったりして、識学さんが直接コンサルティングされてる会社では違うと思いますけど、一般的に「識学ってこういうもんだな」と思って、生兵法で取り入れてやるぜと思ってる関係ない人は、「俺は上司なんだからお前ら俺のいうこと聞け」という事を言ってる人たちなんだと思われてるところが正直あると思うんですが・・・
安藤社長:そうですね(笑)
2. 「全員分の脳を使う」ことはどうしたらできるのか?
倉本:でもそうじゃなくて、安藤さんがなにかの動画で「ちゃんと全員分の脳みそを使うことが大事」なんだという話をしていて、まさに僕も「全員分の脳みそをちゃんと使うことが大事」っていう表現自体を結構使ってたことがあったのですごい共感したんですよね。
というのも、 僕は外資コンサル出身なんですけど、外資コンサルのカルチャーって結構考えられる能力があるやつは一握りのエリートだけだみたいなカルチャーがともすればあって、そうすると病んでくるじゃないですか。
社会全体が今結構アメリカはめちゃめちゃ病んでいるけど、アメリカ的に個人を尊重してるフリをして、「みんなそれぞれ輝ける場所があるよ」って適当な大義名分を言っておきながら、全然その人たちの脳みそを活用しようとしていない部分があって、そういうカルチャーでやっていると、どんどん社会が病んでくるし、良くないなと思っていて・・・
安藤社長:おっしゃるとおりですね。
倉本:で、識学さんはちょっとコワモテな印象のところがあるけど、実は「ちゃんと”全員”を戦力化してあげないといけない」という強い気持ちがあって、そうしないとその人はアメリカみたいに薬物中毒にでもなるしか道がなくなっちゃうじゃないか、みたいな方向性があるんじゃないかと・・・
安藤社長:そうなんですよ。だから社会が、どちらかというと労働者保護とか従業員のためみたいな方向に行くことで、「責任を奪う」ことになって、結果的に仕事はその瞬間楽に感じるかもしれないし、考えなくてもいいってことになりますけど、それでいいのか、ってことなんですよね。
まさに「病んでいく」という状況をどう僕らが定義してるかというと、目標を失った瞬間に生まれると考えてまして、今の、ある種の従業員迎合型のマネジメントって、目標を明確にしすぎると病んじゃうからストレスかけすぎないように・・・という形で、
倉本:それは従業員を信用してない面もあるってことなんですね。
安藤社長:その結果、自分がやるべきことが何なのか見失った時点で逆に病むところがあるんですよね。だから僕らは、どんなに従業員の皆さん、部下の皆さんにプレッシャーとか圧をかけてもいいと。 ただし、部下の皆さんを迷わせちゃいけませんっていうことは常に言っているんですね。
本当はそれをやらなきゃいけないんですけど、今の普通のやりかたでは「プレッシャーもかけない代わりに目標を明確にしない」ので迷っちゃうんですよね。
3. 社員を「迷わせない」責任を経営者がちゃんと取ることが重要
倉本:そういう、目標を明確にしてちゃんとブレイクダウンして、ちゃんと各人に配布していくって、すごいマネジメント能力が・・・本当の意味でのマネジメント能力が必要な側面があるんじゃないかと思うんですけど・・・
安藤社長:それはもう学んでいくしかないです。
倉本:経営者なんだからそれぐらいやれ!と。
安藤社長:経営者だけじゃなくて管理職の皆さんも・・・ですね。 ただしですね、難しいから部下に目標を設定しないっていうのが一番まずくて、間違っててもいいから設定しなさいなんですね。
倉本:なるほど、放置して迷わせるのが一番良くないと。
安藤社長:目標を設定して部下が必死に考えてくれて目標に到達しました。でもそれがチームの業績に反映しないってことは、僕の目標設定が間違ったわけなんで、その時は目標を改善すればいいだろうということですね。
倉本:そこで俺間違ってたねって言えるかどうかも結構大事なんですね。
安藤社長● 間違ってたねって言っても言わなくてもいいんですけど、でも間違ったことを認める。経営者や上司がどういう責任を持っているかっていうと、間違っていたものであれば修正する責任を負っているだけなんで、部下は悪くないという事が大事ですね。
倉本:そこはあんまりウェットに大げさに考えないで、「自分が受け持ってるのはこういう機能なんだからこうします、あなたの役割はここまでなんだからそこを超えた範囲はあなたのせいじゃないですよ」、という感じでサクサクと判断してった方がメンタル的にも楽になると。
安藤社長:楽になります。楽になりますし、100発100中じゃないんで。なのでそこは修正する。最後結果的にチームの勝利に導く責任を負っているのがリーダーですから。
倉本:時代の変化が激しくなって、情報を取り入れてどんどん変わっていかないといけない時代になってきているわけですよね。
安藤社長:おっしゃるとおりです。
倉本:そうするとどうやって情報を吸い上げるのかっていうのがすごい重要になってくる中で、いちいち、関西弁で言うと「嫌やったら嫌って言ってくれたらよかったのに」的な、そういうレベルの読み合いがいちいちあちこちにあるとダメで、「ちょっとこっちで頭ぶつけました」って言うと、「ああじゃあこっちに行こうか」っていうのを、そういうプレーンに情報が流れるようにしていこうっていうのが識学の方向性なんだということですね。これがすごい「意外」なポイントだったんですよね。
4. 人間と人間のつきあいをしては”いけない”?
安藤社長:だから本当に「人間と人間」の付き合いをしては”いけない”ってことなんですよね。
「人間と人間」の付き合いをすると痛いって言っちゃいけないんじゃないかっていうことになるじゃないですか。
でも「役割と役割」の付き合いってことになれば役割を果たすために必要な情報を言うか言わないかだけの話になってくるんで、そういう無駄な配慮がなくなる。っていうことによって健全に生きていけるっていうことなので。
倉本:そういう意味では、僕のクライアントとかクライアントほどでもない知り合いの経営者とかに、色々識学についてどんな印象ですかって聞いてたんですけど、そしたら案外”ベンチャー”っぽい会社の人は「識学当然みんな知ってますよ」みたいな感じで、あと結構小さい中小企業とかも識学の知名度は高かったんですよね。
一方で、かなり、トヨタ型のずっと自分たちの組織のやり方がガチッとあるようなところは、「最近そういうのあるらしいですね」って感じで・・・僕のまわりn=十何個ぐらいの印象ですけど。
そういう意味では、昔のちゃんとまとまってる組織がある会社っていうのは、色々と識学的な要素が本能的にある部分があるんじゃないかと思ったんですね。
上下関係とか責任の明確化とか、あんまりナアナアに友達にならないみたいな部分があるから識学さんとは現時点では遠いけど、ベンチャーとかは結構アメリカ的な文化に浸透されてるんで、組織問題をどう解決していったらいいかわからない、みたいなところで不足部分として識学さんに必要とされてる部分があるんじゃないかと思ったんですけど・・・
安藤社長:まあそうですね、まずはベンチャーから広がっていったというのは間違いなくありますね。
倉本:結構ベンチャーと識学っていうのは僕の個人的なイメージとして結構遠いのかなと思ってたんですけど・・・
安藤社長:やっぱね、組織・会社に経費余裕があれば識学的運営しなくても、識学って究極全く無駄のない組織運営を目指すっていうのが理想としているので、要はやらなくていいことをやらないと。組織成長のために必要なことだけやりましょうっていうのが僕らになって、なのでやっぱベンチャーの方が向いてて。
逆に言うと大企業はまだ高度経済成長の余白で食べれてる会社が結構多いので、そういう意味ではそこまで占めなくても、なんとなくごまかしごまかしで、なんとなく耳障りの良いことをやってればいいっていう企業が多いので、本質的に問題意識を組織に持っている会社がまだ少ないっていうことだと僕は認識しています。
倉本:僕は思ったのはちょっと別の側面もあって、「トヨタ的」と言ってもいわゆる大企業のことではなくて、300人とかそれくらいの中堅企業でもちゃんとしてる会社結構あるなと思ってて、僕のクライアントとかでそういうところは結構さっきも言った通り、ワンオンワンとか従業員アンケートとかやるんだけど、ある意味でかなり「立場」を凄い冷酷に使い分けてる面があるからこそそれができてるんだなと思うところがあるんですね。
結構安藤さんって体育会系だし、一緒に頑張っていこうぜっていうナチュラルな精神があるから、線引きなんとかしなきゃっていう部分があるんじゃないかなと思うんですが、僕のクライアントは結構個人主義者が多いんで、「他人は他人」みたいなところがナチュラルにあるんで、線引きは当然あるから、その上で情報を吸い上げることに集中してってもまあ大丈夫みたいなところがあるのかなと思ったんですね。
5. 「ワンオンワン」や「従業員アンケート」に識学が否定的な理由
安藤社長:なるほど、立場がズレなければそれでいいということですね。ちなみにワンオンワンと今の従業員アンケート、この2つについてなぜ識学的に少し否定しているのかっていう話をさせていただきたいんですけど・・・
例えばワンオンワンのところは何が起きるかっていうと、要は組織って人数がどんどん増えていくとリーダーが全ての情報を現場に取りに行くことは不可能になってくるじゃないですか。そうするとさっきも言ったように、プレイヤーの方々が自分の責任を果たすために必要な情報を適切なタイミングで上司に上げる。そしてそれを上司が判断するっていうこの機能がすごく重要になるんですね。
でもワンオンワンって悩みを聞き出す場なんで、要は上司が取りに行っちゃうんですよ。そうすると部下が適切なタイミングで適切な情報を上げるという機能が育たなくなるんですね。っていう観点で言うと本当にやる必要ない。
ただワンオンワンでも1週間の約束をして進捗管理をするワンオンワンなんであればそれは僕は何も否定していない。必要以上に悩みを聞き出したりする必要はなくて、悩みや相談はいつでもOKだっていう環境さえ用意しておけば特別にワンオンワンをしなくてもいいはずなんですよ。
それが僕らが言っていることで、必要以上に上から聞きに行っちゃうと部下の能力を育てる機会をどんどん奪っていってしまうというのが一つ。
次に従業員アンケートに関しては問題抽出という意味でやるのは別にあんまり否定してないんですけど、それが会社を評価するとか上司を評価するとかそういう機能だというふうに勘違いされてしまうと会社の組織の機能上おかしくなるので、そういう使い方では違いますよってこういうふうに言ってる感じです。
6. ある経営危機の下請けメーカーに「日本的組織の底力」を見た話
倉本:なるほど。それで最近これは面白い事例ってこれ識学さんに近いんじゃないかなと思った話があるんですけど・・・
これはクライアントってほど関わってなくて役員さんと個人的に相談にのらしてもらってるという会社なんですけど、下請けメーカーさんで300人くらいいるんだけど、結構下請けメーカーさんって業種的に、ごくたまに大地震起きるぐらいの情勢変化が起きることありますよね。
その会社も、円安と、あと特殊な原材料高騰とかの影響で、突然今まで会社を成り立たせてた地盤ごと消えちゃったみたいな感じになって、それで結構高収益企業だったのが月に数億円ぐらいしか売上ないのに5000万円ぐらい赤字になっちゃうぐらいの、もうこれはやばいなっていう状況になった会社があったんですよ。
これはアメリカ的なコンサルティングの観点から言うと、もうリストラして止血して別のこと考えないといけないですよねって話だと思っちゃうと思うんですけど、その会社はまだまだキャッシュが結構あったんで、まだある状態で首切ったりするとすごい感じ悪くて組織がガタガタになっちゃうところがあるし、何とかできるだろうと思っている人たちもいるから、それならしばらくは正攻法でやっていくしかないんじゃないですかって言ってたんですね。
そしたらあんまりそこまで期待してなかったんですけど、営業の人は営業の人で頑張って新規顧客を獲得しにいって、製造も質を落とさない形で原材料を節約する方法考えてコストカットをして、既存顧客に値上げ飲んでもらう方向も頑張ってとか、それぞれがそれぞれの脳みそを使って、チマチマチマチマチマチマってなんかすごいなんていうのかな、チリも積もればっていう感じでなんか太陽光パネルを置いて電気代を売電して稼いだりとか、そういうかそういうなんかこうもう経営者の頭だけで考えてたら見つからないようなすごいなんか100個200個の施策が動き出して、なんかすごいもう黒字化目前のところまで来たんですよね。
安藤社長:すごいですね!
倉本:で、これが結構識学さんの目指してる世界に近いなと思ったんですよね。
安藤社長:ありがとうございます。まさにそうだと思います。
7. 「責任」のケーキを丁寧に切り分ける仕組みが必要
倉本:ですよね。それ見てて、すごいなんか「管理会計」大事だなと思ったんですよね。結構ミドルマネジメントぐらいの人は 、だいたい自分の担当してる数字と経営の数字がどれくらいの連関になってるかを結構理解してて、これやらないとマジで仕事なくなるぞみたいな感じになって・・・
結果として、最初はなんか「えー、めんどくさ」っていう感じだったんだけど、徐々に本当にヤバいっていうのが数字でわかって、自分がこれに10プラスしたら会社存続できるかも、みたいなのが見える化してきたんで、いい方向に向かったな、と思ったんですよね。
結構これが識学さんの求める世界だと感じたんですが、どうでしょうか。
安藤社長:人のマネジメントをしていく上で人を動かしていく材料っていうのは大きく二つに分類されて、一つは僕ら「希望」って呼んでるんですけど、いわゆるこれを頑張れば給料が増えるとか、いいことたくさん褒められるとかっていう側でのマネジメント 。
で、もう1個は「恐怖」では、やらなければヤバいっていうこれこの双方があって、これをしっかり使い分けながらマネジメントしていかなきゃいけないっていうことなんですけど、マネジメントの基礎になってくるのはやっぱり「恐怖」側なんですよ。
「恐怖」側をうまく活用した上で、成功体験の中であとから「希望」をつかみ取っていくっていうこの流れが正しいんですけど、やっぱりマネジメントする側は恐怖を使いたくないんで希望の側だけで動かそうとするんですよ。
でも「希望」だけで動かそうとすると、希望を必要ないってなった時点で従業員が動かなくていいってなるんですよ。恐怖の方は回避しなきゃいけないんで動かされば得ないのでこっち側が仕組みで回すってことなんですけど、こっちをうまく活用するのが正しいマネジメントなんですけどそのことを理解しているマネージャーは少ないですね。
その会社は結果的に会社が潰れそうだっていうところの恐怖認識によって、マネジメントサイドが個別に恐怖を与えなくても勝手に動いてくれた・・・っていうかそれは素晴らしいことだと思うんですけど・・・という結果だという感じますね。
倉本:それを人工的に再現するのが識学のやることだと。
安藤社長:そうですね。
倉本:ただ、「本当に危機」でも「危機感」は出てこないこともあるじゃないですか。それがこの会社ではうまくいった理由として、ミドルマネジメントぐらいの人に自分の責任持ってる数字がどういう要素になっているか、それが経営の数値とどう直結するのかを理解している人が結構いた事があったんじゃないかと思うんですね。
安藤社長:それはもちろんあったと思うんですけど、あとはもう最後の最後はやっぱり人間の恐怖認識を持つときって「個別の恐怖」にいかに落とし込めるかどうかってことなんですね。だから経営の数字が適切に分解されてリーダー陣のそれぞれの役割が明確になると、そうすると「自分だけ会社のこの危機に貢献できていないリーダーになっちゃう」っていう…
倉本:はははは、たしかにそれはありますね(笑)
安藤社長:この恐怖が絶対機能してるはずなんですね。っていうのが、これが責任を明確にしていることの効果ですね。
なんとなくふんわりした状況で、「このままじゃ会社潰れるぞ! だからみんな頑張れ」じゃあ動かないですね。やっぱり一人一人明確にしてあまりこんなに貢献してるのに自分だけ貢献できてないみたいなっていうところがちゃんと機能してこそだと思います。
倉本:それって結構「評価システムをきちんと整備していく」っていう、このめちゃめちゃ普通な単語にこもっているものをちゃんとやっていくっていう部分が、やっぱり識学のコンサルティングでも重要になってくるわけですよね。
安藤社長:めちゃくちゃ重要ですね。かつ定量的な評価を・・・
倉本:それは定量的な評価に馴染まない部門とかそういう部分でも、結構ブレイクダウンしてちゃんと、あなたこれができるかできないかが大事ですよっていう風にやっていくのをハンズオンでやっていくような感じで ・・・
安藤社長:そうですね。その辺りもやらせていただきます。
倉本:なるほど。ただその、「恐怖」の方もありながら、案外識学さんにはいわゆるパーパス経営っていうか、ミッションステートメント的な発想の要素も含まれてるんだなというのは、今回色々本読ませてもらってまた意外ポイントではあったんですけど。
安藤社長:恐怖によるシバキあげるだけでやってると、当然従業員は辞めますよね。
倉本:全くその通りで(笑)
安藤社長:ということは従業員側にも、その会社にいるメリットというのはないといけなくて、一つはその「やらざるを得ない環境」に身を置くことに寄って、必ず人は成長するので、その成長認識こそが一つの利益なんですが、もう一つはやはり今でいうところのパーパスがあって、そのパーパスにどんどん会社が近づいていってる、それって社会から評価されているということなんで、その事に対する誇り、これが一つの大きなメリットだというふうに僕は定義しています。
倉本:結構「両方」あるんだな、っていうのは、本読めばわかるんですが、「影の部分」の印象がすごく強いんで、上場企業で成長し続けるとなると、徐々に外周を広げていかないといかないでしょうし、出会う相手のタイプが変わってくる面もあるかと思うので、徐々にもう一個の方もちゃんと言っていったほうがいいのかなと思いまして・・・
安藤社長:おっしゃるとおりです。ありがとうございます。
(対談・中編に続く)
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編集部より:この記事は経営コンサルタント・経済思想家の倉本圭造氏のnote 2025年5月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は倉本圭造氏のnoteをご覧ください。