実質賃金は3年連続マイナス:それでもインフレを加速しようとする人たち

2024年度の実質賃金は、物価上昇により前年からのマイナス幅が縮小したものの、依然としてマイナス圏にとどまりました。

名目賃金は3.0%増と高い伸びを記録しましたが、消費者物価指数の上昇(3.5%)に追いつかず、特にコメやキャベツなど生鮮食品の高騰が実質賃金を圧迫しました。3月の実質賃金も前年比1.8%減(家賃除く)と、3カ月連続のマイナスとなりました。

2024年度の名目賃金(現金給与総額)は1人あたり34万9388円と、前年比3.0%増加し、1991年度以来の高い伸び率となりました。正社員は3.5%増、パートは3.9%増で、所定内給与も2.1%増と約30年ぶりの高水準です。特別給与(賞与など)も7.5%増えました。とくに初任給の上昇は顕著です。

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賞与を除くと、実質賃金の低下は過去3年以上続いています。日銀にとっても打撃が大きく、利上げの可能性はさらに遠のきました。円安による輸入インフレへの対応も、金融政策が後手に回っている状況です。

これは積極財政派が期待したインフレの結果とも言えます。

減税によって物価がそれ以上に上昇すれば、実質賃金はかえって下がってしまいます。実際に今はそうした現象が起きています。そしてその傾向をさらに加速させようと人たちがいます。

さらに社会保険料の値上げが現役世代の家計に打撃を与えます。給料は上がっても手取りはそのままです。

物価上昇で好循環を信じていた人たちが、実際に実質賃金が下がると不満を述べています。今後は減税でも「期待外れだ」と同じように嘆くでしょう。