年金という「怪物」と別れを告げる時:「税による最低保障年金」とは何か

かつて「100円」だった国民年金保険料は、いまや毎月17,510円。

発足時4.9%だった厚生年金の保険料率は、いまや18.3%にまで膨れ上がりました。

この数字が意味するものは明確です。

年金という制度は、もはや現役世代の「生活」や「子どもを持つ」という選択を犠牲にして成り立っているという現実です。

年金制度は、もともと「長生きリスクに備える」という保険の原則に基づいて設計されたものでした。
しかし今やその本来の目的を逸脱し、「巨大すぎて誰も手がつけられない制度」、いわば怪物と化しています。


「税による最低保障年金」とは何か

私は、年金制度を持続可能にするために、制度の縮小と再設計が不可欠だと考えています。

その中心となるのが、

「年金は“最低限の老後生活”を保障する役割に絞り、財源は税で支える」

という最低保障年金化の考え方です。

現在の年金制度は、「保険料を払った分、将来返ってくる」という前提で設計されています。

しかし、少子高齢化が進んだ今、その構造が限界を迎えています。

保険料を払い続けても、現役世代が増えない以上、将来の受給は約束されません。

それならいっそ、全員に最低限の年金を税財源で支給し、「長生きの不安」だけをカバーする制度に絞り込む

そのうえで、それ以上の保障が必要な人は自助努力や企業年金、任意の上乗せ制度に移行していく

これが、現実的で持続可能な将来像です。


受給開始年齢の引き上げは“現実的対応”

もちろん、こうした制度再設計には移行期間が必要です。

その際に合わせて検討すべきが、受給開始年齢の段階的な引き上げです。

日本の平均寿命は男性で81歳、女性で87歳を超えています。

にもかかわらず、年金の受給開始は原則65歳。かつてよりも「長く生きること」が当たり前になった時代に合わせて、年金の開始年齢も見直すことが不可欠です。

これは決して「高齢者いじめ」ではありません。

むしろ、高齢者も安心できる持続可能な制度を維持するための“現実的な適応”なのです。


厚生年金と基礎年金の「一元化」と「任意化」へ

また、現在の厚生年金制度は「基礎年金」と「報酬比例部分」の二階建て構造となっています。
これを見直し、以下の改革を提案しています:

  • 厚生年金と基礎年金を統合し、一元化
    → 現在の“制度の複雑さ”を解消し、国民一人ひとりに分かりやすく透明性のある仕組みに。
  • 報酬比例の上乗せ部分は任意加入に
    → 今後は強制的に加入するのではなく、自ら選択できる形へと移行。

現行制度では、強制的に高い保険料が天引きされ、その使い道に納得がいかないまま加入させられている若者が多くいます。

こうした不信を解消するには、「納得して加入する仕組み」を整備しなければなりません。


怪物を倒すのではなく、飼いならす改革を

「年金は大きすぎてどうにもならない」
「いまから変えても間に合わない」

そんな声を耳にします。

しかし、制度とは人が作り、人が変えるものです。

見て見ぬふりをすることこそ、未来の現役世代と子どもたちへの裏切りです。

私たちには、選択肢があります。

  • 現役世代の社会保険料を引き下げる。
  • 家庭と子育てを犠牲にしない社会をつくる。
  • 怪物と化した年金制度を、持続可能な仕組みにリサイズする。

そのために、私たちは「年金改革」に真正面から取り組みます。


未来を奪われた若者の血で延命される社会保障ではなく、
希望を育むために設計された制度へと、今こそ生まれ変わらせましょう。

Yagi-Studio/iStock


編集部より:この記事は、前参議院議員・音喜多駿氏のブログ2025年6月18日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。