失礼ながらこれまで名前すら聞いたことがない町でしたが、町長としての先進的な取り組みを着々と続けていることに感銘を受けました。
銀座や六本木に店舗を構えるアメリカの高級ステーキ店ウルフギャングが、なぜかこの街にも店舗を構えています(正確な店名はSAKAITEPPAN by Wolfgang Zwiener)。建物の設計はあのクマさんこと隈研吾先生です。
さかい河岸レストラン茶蔵
隈研吾建築都市設計事務所HPより
また、新春の初セリで2億円を超えるマグロを競りおろしたことで知られる銀座の高級寿司店おのでらが表参道に作った回転寿司のお店もあります。お寿司の冷凍工場に併設されているそうです。
これらの店舗は町長がトップセールスで誘致したものではないかと思います。
それだけではありません。悪化している財政再建に取り組みながら人口減少を食い止めるべく、子育てのサポートなどを手厚く行い、英語教育にも力を入れています。
また、町内に無人のバスを走らせたり、東京駅までの直行バスを定期運行し、通勤費用の半分を町がサポートするといったユニークな政策も実行しています。
さらに家賃を払いながら、将来自分の家が持てる制度を導入したり、ふるさと納税で財務内容の改善を行うなど、次々と政策を打ち出しています。
独創的なアイディアを出してそれを実行していくスピード感はどこから生まれるのでしょうか?
やはり積極的に様々な人と会い、情報交換や人脈構築を行うことから新しい発想が生まれて、実行できる人材が集められるのだと思います。
そう言えば、北海道のワイン作りで知られる有名な町の町長も地元にはほとんどおらず、東京や大阪などに来ては会食を頻繁に行っていると聞きます。実際、大阪のワインバーのカウンターで偶然横の席に座っていたこともありました。
傍目から見ると、都会に遊びに行って美味しいご飯を食べながらワインを飲んでいるようにしか見えないかもしれませんが、そこで知り合った人たちと新しいプロジェクトを始めたり、それぞれの分野の専門家の知見を集めたりすることができるのです。
今回お会いした町長も、町長室に籠っているのではなく積極的に外部の人たちと交流し、自分の町のPRをするとともに外部の知恵を取り入れているのです。
日本全体が人口減少する中で、地方自治体のトップの能力と行動力によって衰退する街と反映する街の格差が広がっていくことを実感しました。茨城の境町は少子高齢による過疎化に悩む地方自治体の再生をするモデルケースとしてこれから益々注目されていくと思います。
編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年6月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。