
ダイヤモンド・オンラインに、『何のために働くのか?「死ぬほど稼いだ」孫正義の異次元すぎる答え Yahoo! BB成功の立役者・近藤太香巳が熱弁「“100年に1人の天才”の実像」(後編)』(24年4月18日)と題された記事がありました。近藤さんは「孫さんと2人で車に乗っているときに言われた言葉」に、「会社は経営者のスケール以上に大きくならんからな」というのを挙げられ、次のような解釈を述べておられます。
――やっぱりチャレンジでしか進化しないんだなと。現状維持は、退化なんだなと僕なりに解釈をして、だから常にチャレンジしようと。自分の能力内でやってることはチャレンジとは言わず、できないかもしれない、また、世間からはできるわけもないと思われることをやって、その限界突破した分が会社を大きく成長させると。経営者としての根源的な部分を孫正義さんから学ばせてもらったなと思っています。
「会社は経営者のスケール以上に大きくならん」とは、私もその通りだと思います。会社の成長というのは経営者の器次第です。人物というものを言う場合の一要素が器であります。器の大きさだけで事業の成否は決まりませんが、ある程度器が大きくないと事業の成長に限界が生じます。例えば株式を公開し時価総額1兆円超えの会社を育てられる人間がいる一方、会社を一つ公開しただけで遊び回っている人間もいます。これは、その人間の志の大小そのものです。世のため人のため真に志を立てそれを完遂しようと思うならば、自分を律し最大限努力を重ね人間力を高め続けなければなりません。
私は嘗て此の「北尾吉孝日記」(09年9月25日)で次のように述べたことがあります――最終的に企業の盛衰を左右する要因はやはり経営者の能力、運、熱意、そして倫理的価値観であると私は思っています。それらの要因を総合して人間力というならば、その人間力によって一つの会社が成長するのかしないのか、またどの程度成長するのかが全て決まるといっても過言ではないと考えています。やはり良い心掛けの人の周りには良い人が集まって来ますし、悪い心掛けの人の周りには悪い人が集まって来ます。私が好きな『論語』の言葉に「徳は孤ならず、必ず隣有り」(里仁第四の二十五)とありますが、徳性の高い人の周りには必ず同じ様に徳性の高い人が集まって来るということです。
「己より賢明な人物を周辺に集めし男、ここに眠る」とは、米国の「鉄鋼王」アンドリュー・カーネギーの墓碑銘です。「三顧の礼」を以て劉備玄徳が諸葛孔明を迎えられたのもそうですが、畢竟その人間の人間的魅力の有無に尽きると言えましょう。人間がある程度の人物か否かは、その風貌から立居振舞そしてまた発言に至るまで全ての所で表れてきますから、その中には能力や手腕といったことも勿論含まれ、ある意味での人間力というようなより大事なものが表れてきます。
結局会社を成長させるには、経営者自身が自分を練って行くしかないのです。自分自身の人間力を増して行けば、会社の器も大きくなります。ビジネススクールの教科書に出て来る成功の条件の類を満たしたところで、成功する経営者は殆ど出ては来ないでしょう。小学校を卒業しただけで世界的事業を興した松下幸之助さんや本田宗一郎さんなどは、恐らくそうした類を気にもしたことがないでしょう。本田さんも松下さんも、「人間如何に生くべきか」「人間どう在るべきか」というような答え無き問いに対する答えを様々考え抜いて知性を磨き、知行合一的に事上磨錬する中で人物たるの条件を段々と満たして行った結果として、会社を大きくする正しい道を世のため人のために歩まれたのだろうと思います。
編集部より:この記事は、「北尾吉孝日記」2025年6月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。






