マネックスの名前が消えても「マネックスの先進性」は消えて欲しくない

NTTドコモが住信SBIネット銀行を買収することになりました。同社は既にマネックス証券に対しても49%の出資をし(マネックスは51%の出資)、役員の過半を選任することになっており、マネックス証券はドコモの実質子会社になっているようです。

今回の買収によってNTTドコモはネット銀行とネット証券を傘下にして、金融ビジネスに本格展開することになります。

NTTドコモに限らず携帯電話会社は通信事業を展開するだけではなく、膨大な顧客基盤を活用して金融業に進出するパターンが当たり前になっています。

NTTドコモの社長は住信SBIネット銀行とマネックス証券に対して、「ドコモ」の名を冠することでサービスの連携性を顧客から見えやすくしたいとインタビューで語っいます。

近い将来住信SBIネット銀行はドコモ銀行になり、マネックス証券の名前はドコモ証券になってしまうかもしれません。

マネックス証券に1999年の創業時から関わったことのあるものとしては、名称やロゴが消えることは寂しく感傷的な気持ちになりますが、利用者の立場から見れば名称をドコモに統一した方がわかりやすく銀行とのシナジーが見えやすくなります。

ただ長年のマネックス証券のユーザーとして懸念しているのは、電電公社をルーツに持つNTTドコモの官僚的といわれる社風です。

マネックス証券がNTTドコモの保守的な体質に徐々に蝕まれ、サービスの先進性や迅速性が失われないか心配です。

NTTドコモから派遣された証券ビジネスを良く知らない役員や「コンプライアンスおじさん」が重箱の隅をつつくような理不尽で過剰なリスク管理を行い、マネックス証券の社員が疲弊し、顧客に対する負担が増えて愛想を尽かされる。

そんな最悪のシナリオだけは避けて欲しいものです。

例えマネックス証券の名前は消えても、いつまでもマネックスが創業した時のようなベンチャーマインドを持った面白い会社であり続けていて欲しい。それがOBとしてのせめてもの希望です。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。