土曜日のブログに「アメリカが正式に参戦した場合、アメリカはひと時の勝利の美酒に酔うことはできる」とし「市民を巻き添えにせず、核施設を破壊し、指導者を粛正するという限定的な理由なら自分で正当化することは可能であり、参戦に踏み込むような気がします」と述べさせていただきましたがその通りとなりました。

ただ、現時点でほぼすべての専門家が「この先どうなるかわからない」としており、予断を許さない状況にあります。数少ない情報の中でこの先の展望を考えてみたいと思います。
まず世界経済へのダメージです。週末の夜中の攻撃であり、市場はその結果を見たうえでの反応となりますが、本稿を書く東京市場がオープンする前の状況からすると原油と金先物が買い優勢となり、株式市場は弱気になりやすい展開を見ています。ただし、今回の「ミッドナイトハンマー作戦」はターゲットを明白に絞っていることからマーケットクラッシュにはならず、方向感がない展開がしばし続くとみています。つまり株式市場に直結する経済そのものへの影響は限定的になろうと考えています。
では原油はどこまで上がるか、です。現時点でイラン政府はホルムズ海峡封鎖検討プロセスで前向きに展開しており、封鎖の場合、原油価格は90㌦以上への上昇が見込まれます。これで利するのはロシア、カナダなどで、サウジは実際にはホルムズ海峡を通過できなければ輸出量を十分確保できず、指をくわえる形となります。アメリカの場合は原油採掘増加の準備がないため、即座のメリットは少なく、国内物価の上昇を引き起こしかねません。イラン原油は最大取引先の中国とどうつなげるかですが、ホルムズ海峡の外側に小さな輸出基地があり、そこから細々と輸出することは可能ですが、ほとんどビジネスにならないかもしれません。
世界経済へのダメージといった大所高所からの分析はまだ時期尚早ですが、戦況が世界に拡大しない前提に立てば影響は原油に限定され、AIや半導体需要への影響はさほどではないとみています。
では政治的見地ではどうなるでしょうか?まず、今週開催されるNATO首脳会議に石破総理が出席しますが、それに参加するトランプ氏よりIP4に対して会談が要請されているようです。IP4とは日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドで構成する太平洋地域の安全保障で連携するチームであり、NATOと密接に連携しています。トランプ氏がIP4に対してどのような期待を示すのか注目されます。
ただ私の最大の疑問はNATO参加国、トランプ氏、そしてIP4のメンバーが一枚岩とは思えない点であります。トランプ氏は自己の判断を自画自賛するのが目に見えており、それをもってウクライナ問題も勢いで押し切ると主張する可能性はあります。ただ、それを能天気だと思うNATO加盟国は多いはずです。実際、英国スターマー首相は今回のアメリカのミッドナイトハンマー作戦は一定の評価をしながらも自国は関与していないと苦渋のコメントを読み取ることができます。つまりトランプ氏には誰も面と向かって文句を言えないものの心の中で「火の粉が降りかからないようにする」守りに入っている様子も見て取れます。
一方、イランはアラグチ外相がプーチン氏との緊急会談をするため、モスクワに飛びます。イランのハメニイ師は暗殺されるリスクがあり、現在地下に潜伏していますが、モサドはほぼ正確な居場所を察知しており、その情報はアメリカと共有されています。よって実際に諸外国との直接交渉ができるのは外交の基本からしても外務大臣の力にかかっているとも言えます。
ただプーチン氏としてもここは極めて慎重な判断をすると思われます。最大の疑問はトランプ氏とプーチン氏の関係であり、いわゆる冷戦時のような本音と建て前で言葉の裏側の裏側まで探りあう状況に陥っている感があります。ロシアとしてイランは盟友でありますが、ロシアの体力的余力がそれほどあるとも思えず、軽はずみな支援はしないとみています。
ではお題の「中東の安定、世界への影響波及」ですが、結局、世界はイランの次の一手、そしてアメリカやイスラエルのそれに対する反応待ちの姿勢に徹するとみています。イランの次の一手はさほど遠くないうちにあると予想しています。イランはそう簡単にくたばらないでしょう。ただ、ハメニイ師の行方は読み切れないと思います。イスラエルが師の暗殺はすべきではないでしょう。非常に面倒なことに陥ることになります。あとは中国が沈黙を続けるかどうかであります。北朝鮮はビビっているでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年6月23日の記事より転載させていただきました。






