最高裁、生活保護引き下げは「違法」:厚労省による減額措置の裁量権が争点

国が2013年から2015年にかけて段階的に生活保護費を引き下げた措置について、最高裁判所は27日、「厚生労働大臣の判断には誤りがあり、違法である」として減額処分を取り消す初の統一的な判断を示しました。

問題となったのは、生活保護のうち食費などに充てられる「生活扶助」の基準額で、厚労省はリーマン・ショック後の物価下落を理由に、最大10%、総額で約670億円を削減しました。この見直しには、厚労省独自の物価指数「生活扶助相当CPI」が用いられ、従来の物価指標よりも大きな下落率が示されたことから、全国の受給者が「実態と乖離しており違法だ」として30件以上の訴訟を起こしました。

最高裁判所 裁判所HPより

このため「健康で文化的な最低限度の生活」ができなくなったと言う人も現れました。

生活保護費の基準額は本来、一般低所得世帯の消費実態などを「専門家」が5年ごとに検証し、それをもとに厚生労働大臣が決定します。しかし、今回の減額ではその過程を省略し、独自の方法による「デフレ調整」と「ゆがみ調整」が使われました。一方、国側は「保護基準の改定に際して、専門家の意見を聞くことを義務づける法的な規定はない」と主張しました。

最高裁は、名古屋と大阪の2件の訴訟について審理し、厚労省が整合性を欠いた手法で減額を決定したことを問題視しました。一方、原告側が求めた損害賠償請求については退けました。

当時の生活保護受給者は約200万人にのぼり、今回の違法判断を受けて、国には減額分の補償など具体的な対応が求められます。また、全国で続いている同種の訴訟にも大きな影響を及ぼす見通しです。

厚労相の手続きに瑕疵があったのは確かなようですが、この判決に働いて税金を納めている人たちの心境はとても複雑です。

https://twitter.com/satobtc/status/1920377003707969982

2023年度の改定では「特例」として、2024年度までは1人あたり月1000円を加算し、2025~2026年度は加算額を1500円に引き上げています。こちらの裁量権も議論の余地あるかもしれません。