オーストリア国営放送(ORF)のメインニュース番組「Zeitin Bild」は4日、英国のロックバンド「オアシス」の16年ぶりのカムバックを大きく報道した。「まさか実現するとは思ってもいなかった」と興奮した顔で喜びを表すファンたちの姿を映し出していた。

ウィーンのコンサートで歌うノエル 2016年4月12日撮影
ウェールズのカーディフ・スタジアムでは、7万3000人以上の観客が、世界的に有名なBritpop「オアシス」がステージに上がり「Hello」を披露すると、ファンは熱狂的な歓声でそれに応じたという。
ORFのニュースによると、「英国のメディアもオアシスのコンサートを称賛」し、英BBCは「オアシスがカムバック開始。90年代以来の最高傑作」と報じ、タブロイド紙「ザ・サン」は「壮大な瞬間」と評していた。
アイルランド系の労働者家庭出身のギャラガー兄弟のロックバンド「オアシス」は1991年に結成され、アルバム『ディフィニトリー・メイビー』で名声を博した。1995年のセカンドアルバム『(ホッツ・ザ・ストーリー)モーニング・グローリー?』は「ワンダーウォール」などのヒット曲を収録。ビートルズ後のBritpopの後継者といわれた「オアシス」は世界的なヒット曲を次々と発表した。ヒット曲のほとんどはノエルが作曲し、弟のリアム・ギャラガーがボーカルを主に担当した。
しかし、ノエルと5歳違いの弟リアムの兄弟間の長きにわたる確執の後、バンドは2009年に解散した。その後、リアムもノエルも自身のグループを編成して活動を継続してきた。
ちなみに、オアシス解散後、2016年4月12日、ロックバンド「ハイ・フライング・バーズ」を率いてノエルがウィーンでコンサートを開催した時、聞く機会があった。ウィーンのコンサートには約2500人のファンが集まった。ノエルが舞台に登場すると「ノエル、ノエル」の大喝采がファンから飛び出した。第1曲は「オアシス」解散後作曲した新曲「Evrybody‘on the Run」を披露。新曲と懐かしい「オアシス」時代の曲を歌い終え、ノエルが舞台から去った。多くのファンは感動したが、心では「もう一度オアシスを」といった思いが沸いたはずだ。
今回、再出発が可能となった背後には、音楽制作会社などのプッシュもあったが、リアムもノエルも大好きな実母の願いに応えたかったからだという。母親は「もう一度、2人の息子が一緒に舞台で歌ってほしい」と切実に願ってきたというのだ。
母親が工場で遅くまで仕事をしなければならない時、幼いころのリアム少年は2人の兄が留守で独りで母親の帰りを待っていた時、寂しくなって母親が働いている工場まで泣きながら走っていった、というエピソードが伝わっている。当方はそのリアムが作曲した「Songbird」が大好きだ。リアムの心の世界が伝わってくる。
アルコール中毒の実父と離婚して、3人の息子たちを育てた母親はリアルもノエルも愛してきた。2人の息子が母親に大きな館を買ってあげるといった時、母親は「大きな館で一人住むのは・・」と言って断ったという話を聞く。ノエルは小さい時、父親の言うことを聞かないのでよく叩かれたが、末息子のリアムは両親から愛されたという。
ノエルとリアムの兄弟喧嘩の話を聞く度、旧約聖書「創世記」に記述されているカインとアベルの話を思い出す。カインは神の祝福を得たアベルを愛することが出来ず、殺してしまう話だ。
ノエルとリアムがカムバックできた最大の理由は高齢となった実母の「もう一度一緒にコンサートを」の声だったと聞いた時、カインとアベルを母エバが仲介して和解させていたならば、人類最初の殺人事件は起きなかったのではないか、と考えてしまった。

oasis Xより
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年7月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。