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いよいよ選挙も最終コーナーを回り、最後のストレッチに入った感じですが皆さん、それぞれにお考えや印象をお持ちだと思います。また各種調査も発表されており、私がとやかく口出しする話でもないので少し切り口を変えて考えてみたいと思います。
今回の選挙の争点は物価高対策、及び日本人が長年得られた居住と安心感に対して増加する外国人の影響をどう受け止めるか、という点ではないかと推察します。
物価高対策としての税に関して言えばもしも現在の消費税の枠組みの変更を伴うものを期待するなら現政権が存在する限り無理だと思います。とすれば今回は参議院選なので直接的な政権交代を伴うものではありませんが、与党が参議院で過半数を割るなど国民の相当の反発があれば石破氏が退陣を迫られる公算はあると思います。
様々な予想を見ていたのですが選挙戦序盤ぐらいまでは「与党過半数の確保」については比較的意見が割れていました。私もなんだかんだ言いながらも与党がギリギリ過半数を維持するのではないかとみていました。
ところが選挙戦を通じて私が感じたのは野党の声が多く聞こえてくる一方、与党、特に自民党の声はほとんど聞こえず、防戦にもなっていないような感じに見受けられるのです。それこそ自民党の主流派が冷たい目で「ほら言ったこっちゃない」とまるで他人事のようになっている感じすら見受けられるのです。
石破政権に対する国民の不満は世論調査の数字以上に高まっているように見えます(=長年の自民のファン層が我慢に我慢を重ねているけれどそろそろ潮時と言う感じです)。私は石破氏は以前から苦手ですが、その理由はしゃべり方が回りくどくて時として何を言っているかわからないからであります。タイパでショートメッセージの時代に国民にストレートに訴え、ハートを捉えるチカラはないと思います。
多分にして石破氏はいろいろなことを考えすぎのきらいがあります。ところがいつの時代でも何かやろうとすれば必ず何かを犠牲にしなくてはいけません。当然犠牲になる側は強い反発があるのですが、その犠牲に対する決断ができないのだと思います。
もう一つの争点、外国人問題です。これは欧米の流れとそっくり似てきたなと思うのです。ご承知の通り、欧州ではシリアなどの難民が欧州各地に広がり、それが各国で大きな政治問題になりました。英国はそれもありEUを離脱したし、フランスは割れ、保守派が台頭、ドイツは移民対策で経済全体が廻らなくなり、かつてのドイツの威厳はすっかりなくなりました。
一方、アメリカはメキシコとの国境を越えてくる不法難民が後を絶たず、トランプ氏は魔女狩りならぬ不法移民狩りを徹底して行っています。アメリカ南部で今、最も怖いものといえば米国移民税関捜査局(ICE)で、レストランから農場に至るまで彼らがやってくればそこで働く人をチェックし、不法移民がいれば即時捕まえています。文化大革命の時の紅衛兵と全く同じであります。
実はカナダも移民や学生、外国人に対する就労ビザの発給を絞っており、産業界がガタガタになっています。学校には学生が来ない、労働者が足りない、住宅が売れない、といった状態ながらも必死に耐えているという感じです。
さて日本の場合、急に外国人が大挙して居住するようになったり、日本の市場を意図せずして荒らすということは局所的なケースを除き、あまりなかったと思います。
今や電車はスーツケース族で占拠され、ホテルの価格は出張者が払える金額ではなく、飲食店も金払いの良い外国人目当てのメニューを考案するので日本人の物価感覚には遠いものが増えてしまいました。シェアハウスなど中期滞在する施設も価格上昇で物件も少ない事態です。京都四条に行けば外国旅行に来たような気分になるのは皮肉としか言いようがありません。
これは欧米の難民事情とはもちろん性質も性格も違いますが、人々が「外国人が増えて今までと変わった」ということに一定の抵抗を示す点では保守的思想になりやすい点で同じような傾向を示すと考えています。
この状況に「どうにかしてよ」という声が出るのは当然であります。以前も指摘しましたが、政府は増えすぎた外国人に対する対策が後手後手なのです。日本の役所は何か問題が起きないと動かないので市民からの突き上げでようやく「対処します」になるのです。私は「日本人ファースト」という表現は好きではないけれどそう言われても致し方ないのかもしれません。
その点からすれば日本も欧米に似た経緯をたどりつつあり、それと同じであれば保守系への支持が高まるのが想起できます。政党で見ると前回ブームだった国民民主にあやかり、今回は参政党が伸ばすのではないかとみられています。好き嫌いは別として話題になればなるほど票は伸びるのです。これは確かです。すると案外埋もれてしまっている立憲あたりは割と苦戦するのかもしれません。
自民に於いては声が聞こえてこず、自民党主流派はわざと石破政権に打撃を加えようとしているのではないかとすら思えるのです。つまり、石破下ろしのために今回の選挙は少し手抜きをしていると言われても致し方ないのかもしれません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月16日の記事より転載させていただきました。