15日の債券市場では、参院選後の拡張的な財政政策への懸念から日本国債が売られ、10年物国債の利回りが1.595%まで上昇しました。これは約17年ぶりの高水準です。
金利上昇は住宅ローンなど暮らしにも影響します。加藤財務相は、市場の関心が財政運営に向いているとした上で、信認を損なわないよう適切な対応を続けると述べました。
石破茂首相 自民党HPより
参議院選挙の後に検討されている減税や給付金などの政策は、一見すると「物価高対策」や「景気刺激策」として歓迎されがちですが、国際社会から見れば日本の財政運営に対する信頼を大きく損なうものとなりかねません。実際、国債市場ではすでに深刻な変化が起きており、その影響が急速に広がっています。
日本の30年国債の利回りも、3%を超えて過去最高水準に迫りつつあります。これは1999年の導入以来2番目に高い水準です。10年債や20年債も17年ぶり、26年ぶりといった水準まで利回りが上昇しており、国債が大きく売られている状況です。背景には、政府支出の急拡大と、将来的な財政悪化への強い懸念があります。
これまで日本の国債は、日銀が大量に購入することで金利を抑え、安定性を保ってきました。しかし、その仕組みも限界を迎えつつあり、最近では日銀の統制が効かなくなってきていると指摘されています。こうしたなかで金利が急上昇していることは、日本経済そのものへの信頼が揺らいでいることを意味します。
また、ブルームバーグの「政府債流動性指数」は、今週過去最悪の水準に達しました。この指数は高ければ高いほど債券市場における流動性、つまり「売りたいときに売れる安心感」が失われていることを示します。現在の状況は、2008年のリーマンショック時よりも悪化しており、国際市場でも日本国債が「リスクの高い資産」と見なされ始めています。
こうした中で、選挙後にさらなるバラマキ政策が打ち出されれば、国債を保有する投資家たちはますます慎重になり、日本から資金が逃げ出すおそれがあります。実際、「消費税減税」や「毎月10万円のクーポン支給」など、現実離れした政策を掲げる政党が躍進すれば、財政への不信感はいっそう強まり、金利はさらに上昇する可能性もあります。
金利の上昇は、企業の資金調達コストや住宅ローン金利の上昇にもつながります。国の借金の利払い費も膨らみ、財政の持続可能性が大きく損なわれます。こうなれば、日本国債の格付けが引き下げられるリスクも現実味を帯びてきます。現時点では格付けは維持されていますが、それを支えてきた要因の多くが崩れ始めており、今後の動向には注意が必要です。
1998年の参院選後には、金融危機を背景に「金融国会」が開かれ、制度的な対応が急がれました。今回は、それ以上に厳しい財政状況の中で「消費税国会」が開かれる可能性が高く、さらに深刻な国難に直面することも考えられます。
国債の信任とは、見えないけれども極めて重要な国の信用そのものです。これが失われれば、円安と金利急騰が同時に起こる「ダブルパンチ」となり、経済全体に甚大な影響が及びます。目先の人気取りではなく、長期的な視野に立った冷静で責任ある財政運営が今こそ求められています。