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大企業に勤めていても副業が推奨される今、起業に興味を持つ人は増えています。そんな中、常に注目されているのが資格の取得。なにもないところから資格を使ってどう稼ぐのか? 資格を取ることで人生を逆転させた、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏の著書『ごく普通の人でも資格を取ってきちんと稼げる本』から、再構成してお届けします。
資格を取ろうと決意した瞬間から「資格依存」が始まる
信頼性の高い資格を使って、フリーランスで活動できる能力は非常に大切です。行動力のあるあなたは資格を取ろうと考え、あるいは持っている資格をどうにかしようとアクションを起こされるかもしれません。
しかし、ここである考え方にスイッチを切り替えておかないと、フリーランス能力を高めるどころか、失敗し、果ては人脈も失ってしまう可能性があります。
それは、「資格依存症」とも言える資格依存マインドです。つまり、簡単に言ってしまえば、「資格で何かしようと思う人は、資格に依存してしまう傾向にあるので、資格に依存することはやめましょう」ということです。
「依存なんてしていない。資格はあくまでも武器で、私は私の意思でやっている!」
もしかしたら、そう思われるかもしれません。もちろん、なかには依存していない方もいるでしょう。しかし、実際のところ、この資格依存症の怖いところは無意識に依存してしまうということなのです。
資格依存症の人がしがちな質問
たとえば、私と同じ行政書士などの士業では、
「行政書士で年収どのくらい稼げますか?」
「社会保険労務士は安定した資格ですか?」
「税理士は手堅く年収1,000万円くらいは稼げますか?」
などのご相談が、よく寄せられますし、市販の資格図鑑でもFAQなどでよく取りあげられているようです。しかし、この質問はよく考えればおかしいのです。
別の事例をあげましょう。たとえば、ITベンチャーを立ち上げる。こうしたいわゆる起業家は「IT事業で1億円稼ぐ!」とか「5年以内に上場する!」というような目標を掲げて事業に取り組んでいます。「IT事業で1億円稼げますか?」などという相談はあまり飛びかいません。
他の業種でも同じです。ラーメン屋でもそば屋でもまったく同じです。少なくとも自分自身の目標を掲げてやっています。
資格依存症の最大の原因は試験にある
では、なぜこのような違いが生まれてしまうのでしょうか?
資格依存が始まってしまう最大の原因は試験にあります。
「試験? なぜ試験が依存と関係あるの?」
試験は自分を鍛え、能力を高める場でもあります。なぜ、その試験が資格依存症をつくってしまうのでしょうか。
試験には「問題」があります。ですから、当然「答え」もあるわけです。
たとえば行政書士試験などでは、法律の選択問題などがあり、いくつかの選択肢の中に必ず答えがあるのです。問題集には必ず答えと解説がついていますし、また予備校に通っていれば、先生が必ず答えを教えてくれます。
こうした試験を、場合によっては何年も受け続けます。とくに難関資格では1年やそこらで受からないものも多いでしょう。これをずっと続けていると、何が起こってしまうのか?
そう、資格取得後の人生戦略についても、誰かに答えを聞いてしまうのです。
聞いていれば誰かが答えをもたらしてくれるだろうと、知らず知らずのうちに、そうした資格依存習慣が身についてしまっているのです。
普段の仕事では、「よい仕事をするためにアイデアを出そう」「優秀な人材採用のために面接の方法を練り直そう」などと考え、せっかく問題解決できる能力があるにもかかわらず、こと資格になると「依存型」になってしまうのです。
しかも困ったことに、資格依存症に本人の自覚はありません。ですから、手に負えないことが多いのです。
「行政書士の試験に受かりました。次は何をやったらいいですか?」
こんな自分の人生を誰かに委ねるような普通では考えられないような質問も、資格試験を受けることによって出てきてしまうのです。
ビジネスに答えはない
資格を取って、開業したあとにうまくいかない方が多いのも同じ理由です。
「名刺を配ったほうがいいのでしょうか」
「チラシはつくったほうがいいのでしょうか」
「どんなダイレクトメールを出せばいいのでしょうか」
これらは、ビジネスにも答えがあると思っている質問ですよね。
結論から言えば、ビジネスに答えなんかありません。名刺も仕事を取ろうと思ったら、取れるまで何度も何度もつくりかえます。チラシやダイレクトメールも、何枚配って何件反応があった、では次はこういう紙面にしてみよう、少しでも確率を上げようとテストします。絶対に当たる「正解」なんて、ビジネスではないのです。
私自身もメルマガを出して思うような反応が得られないことは、いまだってあります。でも、正解なんてないのです。次はもっと高い反応率を得られるように改善する。その際に誰かに意見を求めることはありますが、「どうしたらいいか」というように丸投げ依存で相談することはありません。
まず、「自分がしたいこと」がある。それについて意見をもらうのはいいことです。しかし、単に「正解」を聞いても答えはありません。人によって正解は違うのです。
まずは資格依存症から脱却し、あなたがどのような人生を歩みたいのか積極的に考えてみてください。
「あなたは資格を使って、どのような人生を歩めたら最高ですか?」
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横須賀 輝尚 パワーコンテンツジャパン株式会社 代表取締役/特定行政書士
士業専門の経営コンサルタント。2007年に日本では初めてとなる士業向けに経営スクール「経営天才塾(現LEGALBACKS)」を創設し、のべ全国3,000名以上の士業から相談を受け、相談件数は優に2万件を超える。主な著作に『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』(さくら舎)、『資格起業BIBLE』(技術評論社)などがあり、25冊20万部超の著者。2023年から士業のための生成AI・ChatGPT活用研究を開始。最新刊『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』を2024年11月に技術評論社より刊行。週刊ダイヤモンド、毎日新聞などメディア掲載も多数。
X(旧Twitter) : @yokosuka_ai
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2025年5月26日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。