
同じ日本社会で顕著になってくる現象には共通性があるはずです。ここのところ巷で流行している「推し活」と、参政党の台頭という現象のあいだには何らかの共通性があるのではないか。特にメディアの活用の仕方などでは、かなり似た部分があるかと思い、AIで分析してみました。
1. はじめに
本レポートは、現代日本社会において顕著な存在感を示す二つの現象、「推し活」(ファン活動)と「参政党」(政治政党)について、多角的な視点から詳細な分析を行うことを目的とする。両者は性質を異にするものの、それぞれが社会、経済、文化、政治の各側面に与える影響は大きく、現代日本の潮流を理解する上で不可欠な要素となっている。
本レポートでは、各現象の定義、歴史的背景、活動内容、経済的・社会的影響、そして関連する課題や論争点に至るまでを深く掘り下げ、客観的かつ体系的な考察を提供する。これにより、読者がこれらの現象の本質と、それが日本社会に及ぼす広範な影響について、より深い理解を得る一助となることを目指す。
2. 第一部:「推し活」の深層分析
2.1 「推し活」の定義と歴史的背景
「推し活」とは、特定の人物や物を応援する活動全般を指す。かつては特定の趣味に深く没頭する人々を指す「オタク」という言葉が用いられたが、「推し」はより広い層に浸透し、ライトなファン層をも含む概念として定着した※1)。一部では「推し事(おしごと)」と称され、日常生活の一部として認識されている※1)。この言葉は2021年に新語・流行語大賞にノミネートされ、その社会的な認知度と影響力の高まりを示している。SNSの普及は「推し活」ブームを加速させ、多くの人々が自作の「推し活」グッズをInstagramなどで共有し、話題を呼んだ※1)。
「推し活」は現代に始まった現象ではなく、日本には古くから「推し」を愛する文化が根付いていた。江戸時代には、歌舞伎役者や遊女を描いた浮世絵や錦絵が現代のブロマイドのように人気を博し、飛ぶように売れたという記録がある※1)。また、茶屋の看板娘が人気を博すと、その娘目当てに客が足を運び、茶屋の主人が手ぬぐいや双六といった「推し活グッズ」を制作・販売した事例も残っている※1)。
これらの歴史的背景は、「推し活」が日本の文化に深く根ざした、時代を超えて形を変えながら継承されてきた国民的活動であることを示唆している。この深い歴史的根源は、「推し活」が一時的な流行に終わるのではなく、今後も社会の変化に適応しながら進化し続ける、回復力のある文化現象であることを示唆している。その適応性は、消費行動やコミュニティ形成において強力な推進力となり、新たな経済機会を生み出す可能性を秘めている。
「推し活」の主流化は、多様な興味や情熱に対する社会全体の受容性が高まっていることを示唆している。これは、市場規模の拡大だけでなく、人々が伝統的な人口統計を超えて共通の関心事を見つけ、より包括的な社会環境を育むことにつながる可能性がある※1)。
歴史的に一部の愛好家を指した「オタク」という言葉が、より「軽いイメージ」を持つ「推し」へと変化し、幅広い世代に受け入れられるようになったことは、社会が多様な趣味や個人の情熱に対して寛容になっていることを意味している。
この社会的な受容性の拡大は、個人が自身の「推し活」をよりオープンに楽しみ、共有することを促し、結果としてその活動がさらに広がる好循環を生み出している。
2.2 「推し活」の多様な活動内容と対象
かつての「推し活」は、アイドルに会いに行ったりグッズを集めたりするのが一般的だったが、ライトなブームにより活動内容は多様化した※1)。
具体的な活動は以下の四つのカテゴリーに大別される。
- 「推しに逢う」: ライブや舞台・DVDの鑑賞、撮影スポットやゆかりの地への聖地巡礼など、直接的・間接的に「推し」の存在を感じる活動※1)。
- 「推しに触れる」: グッズ購入、コラボカフェやイベントへの参加など、「推し」に関連する物理的なアイテムや体験を得る活動※1)。
- 「推しに染まる」: 「推し」のイメージカラーのものを身につけたり、同じものを持ったりすることで、自己のアイデンティティに「推し」を取り込む活動※1)。
- 「推しを広める」: SNSなどで「推し」の魅力を発信し、新たなファンを獲得したり、コミュニティを活性化させたりする活動※1)。
「推し」の対象は非常に幅広く、アイドル、アーティスト、スポーツ選手、アニメ・ゲームキャラクターに留まらず、仏像、鉄道、動物、刀剣といったマニアックなものまで含まれる※1)。
さらに、「推し」をきっかけに行われる「周辺行動」も「推し活」の範疇に含まれる。例えば、イベント前に新しい服を購入したり、推しの言語を理解するために語学学習を始めたりするといった行動が挙げられる※2)。
この変化は、「推し活」が単なる趣味ではなく、個人のアイデンティティやライフスタイルを形成する重要な要素となっていることを示している※3)。
ファンは「推し」のイメージカラーを身につけたり、ゆかりの地を巡礼したりすることで、自身の生活に「推し」の要素を深く取り込んでいる。これにより、ファッション※3)、旅行※4)、さらには自己啓発※2)といった多様な分野で消費が促進され、ファンと「推し」の間の感情的な結びつきが強化される。企業にとっては、従来のグッズ販売だけでなく、ライフスタイル全体に寄り添った商品やサービスの開発が重要になる。
デジタル化は「推し活」を民主化し、地理的制約や身体的制約に関わらず、より多くの人々が参加できるようにしている※1)。オンラインでのライブ配信や、ファンコミュニティでのオンライン交流会 ※6)、さらにはカラオケ店での「歌わない」鑑賞会プラン※7)など、デジタルプラットフォームは多様な参加形態を可能にしている。
これにより、「推し活」人口が拡大し、コンテンツクリエイターや企業にとって新たなファンエンゲージメントと収益化の機会が生まれている。オンラインコミュニティの発展は、ファンの活動範囲を広げ、多様な交流を可能にしている。
2.3 「推し活」がもたらす経済効果と市場規模
「推し活」は単なる個人の趣味に留まらず、巨大な経済効果をもたらしている。2023年には約8,000億円の市場規模とされていたが※8)、2025年1月に実施された最新調査では、推し活人口が約1,384万人に達し、前年比で250万人増加したことが明らかになった※4)。
特に30代前半女性の増加が顕著で、3人に1人が「推し活」を行っている※4)。この結果、日本全体での年間「推し活」出費額は、約3.5兆円という驚異的な規模に達している※4)。
「推し活」による出費は多岐にわたるカテゴリーで発生しており、調査対象の全9カテゴリーで出費が確認されている※4)。
上位の出費カテゴリーは「公式グッズ」「チケット」「CD」といった直接的なものに加え、「遠征」(交通費・宿泊費)が大きな割合を占める※4)。過去1年間でこれらの出費が増加したと回答した人は全カテゴリーで8割以上、特に「遠征」と「公式グッズ」では9割以上に上る※4)。この成長は、「推し活」が単なる趣味を超え、文化的・経済的な現象として社会に定着しつつあることを裏付けている ※4)。
矢野経済研究所の2023年調査によると、ライブ・エンターテインメント(6,408億円)、アニメ(2,850億円)、アイドル(1,650億円)など、多岐にわたる分野で大きな市場規模が確認されている ※8)。
以下に、推し活市場規模の推移と主要カテゴリー別出費額を示す。

「推し活」市場は、広範な経済的圧力下でも比較的安定した成長を続ける可能性を秘めている。新型コロナウイルス感染症の影響による製造・物流コストの増加や物価上昇にもかかわらず、グッズ代への支出が増加しているという報告は※3)、ファンが自身の「推し活」を他の支出よりも優先する傾向があることを示唆している。
このことは、不況時においても堅調な消費を維持する可能性を示しており、企業は、この献身的な消費者層に特化した戦略を構築することで、安定した収益源を確保できるかもしれない。
市場はもはや若年層の可処分所得だけに依存しているわけではない。特に30代前半女性の「推し活」人口が顕著に増加していること※4)は、「推し活」がもはや「若者の文化ではない」という認識を裏付けている※4)。
より高い可処分所得を持つ可能性のある高年齢層が参加することで、市場の安定性と全体的な価値が増加する可能性がある。これはまた、「推し活」が学生生活から職業生活、家族生活へと、異なるライフステージに適応して進化していることを意味し、企業はそれに応じて戦略を調整する必要があることを示唆している。
2.4 「推し活」の社会的・心理的影響
「推し活」は精神的健康に良い影響を与えることが指摘されている。
先行研究では、「推し」がいる人の方が人生に対して前向きな気持ちを感じる傾向があり、「熱狂的ファン層」は日常生活の充実感や精神的健康が高い傾向が見られる※9)。これは、「好き」という感情が心を活性化させ、ストレス解消やメンタル安定につながるためであり、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌が関係している※1)。心理カウンセラーも、「推し活」は、現実の制約や不満から一時的に距離を置き、心を切り替えるための「素晴らしいエッセンス」として機能すると指摘している※10)。
一方で、「推し活」には「推し疲れ」のリスクも伴う。主な原因としては、SNSによる情報過多とそれに対する反応疲れ、グッズ購入やイベント参加による過度な出費、睡眠不足や食事の疎かさといった私生活とのバランスの崩壊が挙げられる※1)。
また、リアルな「推し」の場合、結婚や熱愛発覚、グループ脱退などの出来事が精神的な苦痛となり、「推し活」自体が辛くなることもある※1)。心理カウンセラーは、「推し活のときの自分」と「現実の自分」の境界線が曖昧になるとネガティブな感情が生まれやすくなると警鐘を鳴らし、心の中に「推し活」「仕事」「恋人の前」といった「部屋」を想像し、それぞれのドアを適切に開閉することで健全なバランスを保つことを提言している※10)。
「推し活」は、現代社会のストレスに対する重要な心理的はけ口として機能している。ファンが「推し」に没頭することで、現実の困難から一時的に解放され、心の活力を取り戻すことができる。しかし、その肯定的な効果は、健全な境界線と自己認識の維持にかかっている。
活動が過度になり、現実生活とのバランスが崩れると、既存の精神的脆弱性を悪化させ、燃え尽き症候群、金銭的負担、社会的孤立につながる可能性がある※1)。これは、健全な「推し活」の実践を促すための、より広範な意識向上とリソースの必要性を示唆している。
「推し活」の社会的側面は複雑である。オンラインコミュニティやイベントへの参加は、共通の興味を持つ「仲間」との強い絆を育み、共感や情報共有を通じて楽しさを倍増させる機会を提供する ※12)。
しかし、同時に、ファン間の競争心、価値観の相違、対立といった人間関係の悩みを生むこともある※12)。また、一部のファンは自身の活動を周囲に隠す「隠れファン層」として存在し※9)、人間関係のトラブルを避けるために「一人で楽しむ」選択をする者もいる※12)。
交流に対する理想が現実と乖離したり、競争意識が喚起されたりすると、無力感や自己肯定感の低下を招く可能性も指摘されている※9)。これは、ファンが自身のエンゲージメントレベルを選択する個人の主体性の重要性と、プラットフォームやコミュニティが包括的で尊重し合う環境を育む必要性を浮き彫りにしている。
2.5 「推し活」における消費行動と文化的特徴
日本の「推し活」は「消費型」が特徴とされ、グッズやCDの購入、ライブ参加など、「推し」のためにお金を大量に費やす傾向がある※1)。アイドルグループの握手券のために同じCDを大量購入する行為は、この消費型の典型例として挙げられる※1)。日本では、「推しへの愛情表現=消費(お金)」が一種のバロメーターになっていると考えられている※1)。
一方、海外の「推し活」は「参加型」が特徴で、好きなキャラクターに扮するコスプレや、「推し」について熱くプレゼンするなど、その世界観に深く入り込む「没入型」が多く見られる※1)。
「推し活」は消費行動に顕著な変化をもたらしている。持ち運びがしやすく、オリジナリティがありながらも可愛さやおしゃれさを兼ね備えた機能性の高いグッズが支持される傾向がある※7)。カラオケ店で「歌わない」プランが人気を集め、「推し色」を選べるドリンクやハニートーストを提供するなど、新たな楽しみ方が生まれている※1)。
新型コロナウイルス感染症の影響でリアルイベントの機会が減少したこともあり、「グッズ代が高くなった」と感じる人が約9割に上り、支出が増加傾向にある※3)。この背景には、世界的な物価上昇や製造・物流コストの増加がある※3)。「推し活」における消費は、単なる趣味の域を超え、K-POPグループの世界観を基にした「ウィッシュコア」ファッションのように、生活スタイルや価値観の表現手段として社会に深く根付いている※3)。
この文化的特性は、莫大な経済活動を促進する一方で、「推し活」に伴う金銭的リスクの大きな要因ともなっている。「推しへの愛情表現=消費」という認識は、ファンが自身の献身を示すために経済的に無理をしてしまう状況を生み出す可能性がある※1)。特に、「ランダム商法」や「希少性・特別感の強調」といったマーケティング戦略※13)は、ファンの消費感覚を麻痺させ、過剰な出費を助長する。
さらに、「同担拒否」や「ファン内マウント文化」といったファン間の競争意識も、経済的な無理を強いる要因となる※13)。これは、「推し活」コミュニティ内での金融リテラシー教育の必要性を示唆している。
このトレンドは、従来のグッズ販売にとどまらない新たなビジネス機会を創出している。ファンが自身のアイデンティティを「推し」と結びつけ、その世界観を体験しようとする傾向が強まっているため、テーマ型イベント、聖地巡礼ツアー※5)、ライフスタイル製品など、ファンが「推し」の世界観を体験し、自身のアイデンティティを表現できるような商品やサービスが求められている※3)。
これはまた、「推し活」が強力な帰属意識と自己表現の手段を提供し、個人のアイデンティティと消費選択を形成する上で強力な力となっていることを示唆している。
2.6 「推し活」に潜むリスクと課題
「推し活」には、グッズやチケットの購入、遠方への遠征など、多大な出費が伴う※4)。これらの出費をコントロールできない場合、深刻な金銭問題に発展する可能性がある。特にオンラインゲームやアプリ内課金では、「推しのためなら」という気持ちから多額の課金をしてしまうケースが少なくない ※8)。
ライブチケットやグッズのために借金をする行為も危険視されている※8)。20代女性がアイドル活動にのめり込み自己破産に至った事例や、全国ツアー全通のために極端な節約生活を送るファン、総額3,000万円以上を費やしたファンなどの実例が報告されている※13)。
金銭トラブルの背景には、出費の仕組みが見えづらいこと、他のファンとの比較による競争意識、借金の「自転車操業」化、消費感覚の麻痺などが挙げられる※13)。
「推し活」は仲間との共感を深める一方で、競争心、価値観の相違、対立といった人間関係の悩みを生むこともある※12)。SNSの普及は、情報過多による「反応疲れ」を引き起こしたり、匿名性を盾にした攻撃的な発言や誹謗中傷、個人情報の不用意な公開といったリスクを高めている※1)。
チケット転売仲介サイトでの高額購入トラブルや、SNSで知り合った個人への送金後の連絡不通、配信サイトでの「投げ銭」による借金問題など、具体的な金銭トラブル事例も報告されている※15)。
「推し活」市場は経済的に活況を呈する一方で、特に心理的に脆弱な個人に対する消費者保護に関して重大な倫理的課題を抱えている。
ファンが「推しのためなら」という感情的な動機に基づいて行動する傾向があるため※8)、企業側の「ランダム商法」や「希少性・特別感の強調」といった消費を促す戦略※13)は、ファンの金銭感覚を麻痺させ、過剰な支出につながりやすい※13)。
これに加えて、スマートフォンアプリからの容易な借入やリボ払いのリスク認識不足※13)が重なることで、自己破産※13)を含む深刻な個人的苦境につながる可能性がある。これは、特定の販売慣行に対するより厳格な規制と、ファンへの金融リテラシー教育の改善を求めるものである。
オンラインでの「推し活」が増加するにつれて、デジタルリテラシーとセルフケア戦略が健全な「推し活」の極めて重要な側面となる。SNSは「推し」の魅力を広め、ファン同士の交流を促進する強力なツールである一方で※1)、情報過多による疲労※1)、匿名性による誹謗中傷※8)、そして「推し活自慢」や「マウント文化」による過度な競争と心理的圧力※13)を生み出す諸刃の剣である。
ファンは、スクリーンタイムの管理、信頼できる情報の識別、ポジティブなオンライン交流の促進といったデジタルウェルビーイングのスキルを身につける必要がある。コンテンツクリエイターやプラットフォームも、より強力なコミュニティガイドラインとモデレーションを実装し、ユーザーがデジタルエンゲージメントを管理するためのツールを提供することで、健全なオンライン環境を育む役割を担っている。
2.7 健全な「推し活」のための提言
健全な「推し活」を続けるためには、適切な予算管理が不可欠である。月々の収入の中から「推し活予算」を決め、それ以上は使わないというルールを設けることが推奨される※8)。自分の生活が脅かされるほど「推し活」にお金をつぎ込むことは本末転倒であると警鐘が鳴らされている※8)。
また、SNS上での攻撃的な発言や誹謗中傷は避けるべきであり、個人情報の管理にも細心の注意を払う必要がある※8)。自身の限度を知り、他人と過度に比較せず、他者の「推し方」を受け入れ、自身の言動がどう思われるかを客観的に考えることが重要である※14)。
金銭的な問題に直面した場合、早期に弁護士に相談することが推奨される。「推し活」による借金は「趣味だから問題ない」と放置されがちだが、対応が遅れるほど解決は困難になる※13)。弁護士は、任意整理、個人再生、自己破産など、状況に応じた最適な債務整理方法を提案し、債務者への直接の取り立てを停止させることで精神的な余裕を取り戻す手助けをしてくれる※13)。
精神的な側面では、心理カウンセラーが「推し活のときの自分」と「現実の自分」を健全に切り替えるための「心の部屋」を持つことを提案しており、これにより燃え尽き症候群を防ぎ、メンタルヘルスを維持できるとしている※10)。
健全な「推し活」を促進するためには、個人の教育だけでなく、業界の責任と、強固な社会支援システムの両方が必要である。個人の努力だけでは「推し活破産」のような深刻な問題を防ぎきれない事例が多発しているため※13)、問題は個人の自己管理能力だけでなく、過度な消費を誘発するマーケティング手法や、安易な借入を可能にする金融サービスといったシステム的要因にも起因していると考えられる。
したがって、倫理的なマーケティング慣行の推進、透明な価格設定、そしてアクセスしやすい金融カウンセリングやメンタルヘルスサービスの提供といった、より広範なエコシステム全体での対策が求められる。
「推し活」がオンラインで行われることが増えるにつれて、デジタルリテラシーとセルフケア戦略が極めて重要になる。SNSはファン活動において不可欠なツールとなっているが、情報過多や誹謗中傷といった負の側面も持ち合わせている※1)。
そのため、ファンはスクリーンタイムの管理、信頼できる情報の識別、そしてポジティブなオンライン交流の促進といったスキルを身につける必要がある※12)。コンテンツクリエイターやプラットフォームも、健全なオンライン環境を促進し、ユーザーがデジタルエンゲージメントを管理するためのツールを提供することで、その役割を果たすべきである。
3. 第二部:「参政党」の多角的な考察
3.1 「参政党」の概要と結党経緯
参政党の主要ボードメンバーは、神谷宗幣代表兼事務局長(参議院議員)、川裕一郎副代表兼副事務局長(石川県議会議員)、鈴木あつし衆議院議員、北野ゆうこ衆議院議員、吉川りな衆議院議員である※17)。神谷宗幣は党代表選挙で再選され、その任期は最大3年である※18)。
参政党は、初めて臨んだ第50回衆議院議員選挙で3議席を獲得した※19)。当選者は、比例南関東ブロックの鈴木あつし、比例近畿ブロックの北野ゆうこ、比例九州ブロックの吉川りなである※19)。これにより、衆参合わせて4人の国会議員を擁する政党となった※19)。
地方議会においては、2023年の統一地方選挙で新たに100名の地方議員が誕生し、合計124名に増加した※20)。2025年6月現在、国会議員を含む総所属議員数は150名以上とされている※21)。今後の参議院選挙では、当初の6議席から20議席へと目標を大幅に上方修正しており、20議席あれば予算を伴う法案を提出できると述べている※22)。
以下に、参政党の国会議員・地方議員数と選挙結果の推移を示す。

参政党の成長は、従来の政治体制に挑戦し、大規模な主流メディアの露出や組織構造なしに、主に献身的なボランティアと効果的なオンラインエンゲージメントを通じて、かなりの牽引力を得られることを示している※19)。
彼らの成功は、全国各地で立ち上がった候補者、本部・支部のスタッフ、そして党員が一丸となって地道な活動を続けた結果であるとされている※19)。これは、日本の政治キャンペーンと有権者動員における変化、特にデジタルネイティブ世代へのアプローチの重要性を浮き彫りにしている。
この野心は、参政党が単なる抗議政党ではなく、政策決定において重要な役割を果たすことを目指していることを示唆している。神谷宗幣代表が参議院選挙の目標議席数を20議席に大幅に上方修正し、その理由として「20議席あれば予算を伴う法案が出せる」と明確に述べていること※22)は、党が国会での具体的な立法権の獲得を通じて、国家の政策に直接影響を与えようとする戦略的な意図を明確に示している。
彼らの成長と戦略的目標は、既存の政策に対するより直接的な挑戦につながる可能性があり、たとえ目標を完全に達成できなくても、他の政党に参政党が掲げる問題への対処を迫る可能性がある。
3.2 支持層の分析と支持拡大の要因
参政党の支持率は、各種世論調査で急激な上昇を見せている※22)。NHK世論調査では5.9%(前回比1.7ポイント増)、時事通信調査では6.9%(前月比3.4ポイント増でほぼ倍増し3位浮上)、朝日新聞調査では比例区投票先で3番手に躍進した※22)。
2025年7月のハイブリッド意識調査では、電話調査で支持率が倍増し、参院選比例投票先でも4~5ポイントの大きな伸びを示し、国民民主党を上回る可能性も指摘されている※23)。支持層は40~50代で比較的厚い傾向がある※24)。
参政党の支持拡大の背景には、政権に不満を持つ層からの支持獲得がある※22)。朝日新聞の調査では、内閣不支持層の比例区投票先で参政党が上位に食い込んでいる※22)。また、2024年10月の衆院選までは特定の支持政党を持たなかった「浮動層」の支持も拡大の起点となっている※24)。自民党が獲得したい保守系・右派系の無党派層からの支持を集めていると分析されており、「参政党が伸びることで、自民党が取りたいところを取れないという現象が見られる」との指摘もある※23)。
参政党はSNSを効果的に活用しており、X(旧Twitter)では約9割の候補者が情報を発信している※25)。InstagramやTikTokの利用も増加傾向にある※25)。特にTikTokは若年層へのリーチに貢献していると見られる※25)。
2025年7月の東京都議会議員選挙での躍進が「アナウンスメント効果」を生み出し、参院選に向けて勢いを加速させていると分析されている※23)。
参政党のSNS戦略は、従来の政治キャンペーンではリーチしにくかった層に直接情報を届けることで、有権者動員において大きな成果を上げている。特に「切り抜き動画」は、短時間でメッセージを拡散する強力なツールとなっているが、文脈を無視した編集によって誤解を招く危険性も指摘されている※26)。
しかし、このようなデジタル戦略は、既存政党への不信感を持つ層や、特定の争点に関心を持つ層に直接響く形でメッセージを届けることを可能にしている※22)。これは、政治的メッセージの伝達と有権者動員において、デジタルプラットフォームが不可欠な要素となっている現代の傾向を強く示している。
参政党は、既存の政治的スペクトルに収まらない、複雑な政治的特性を持っている。彼らは右派的な雰囲気を持つ一方で、経済政策には左派的な要素も見られるため、れいわ新選組の支持層から票が流れる傾向も発生している※23)。
この多面性は、既存の政党に不満を持つ幅広い層からの支持を集める要因となっている。特に、「外国人の受け入れ問題」のように、既存政党が明確な立場を示しにくい問題を争点化する巧妙さ※22)は、特定の有権者層に強く訴えかけている。この戦略は、従来の政治的枠組みでは捉えきれない有権者の不満や関心事を捉え、支持基盤を拡大していることを示している。
3.3 主要政策と政治的イデオロギー
参政党は、既存政党の忖度政治とは一線を画し、国益を守る政治を国会で実現することを目指している※19)。
彼らは「日本をなめるな!」を旗印に、以下の政策を訴えている※19)。
- 積極財政と減税を柱とした経済政策※19)
- 外資による日本買収の抑制※19)
- 過度な移民受け入れの抑制※19)
彼らの政策は、日本の伝統文化や歴史を重視する保守的な側面を持つ一方で、国民の健康や食の安全、教育といった生活に密着したテーマにも深く言及している。
例えば、党の活動では、丸谷元人氏による「グローバル全体主義の時代とインテリジェンス」や、宮沢孝幸氏による「新興感染症に対抗する人材の育成と政策への反映」、鈴木宣弘氏による「日本の農業の実情と食糧自給率」といった専門家による講演が紹介されており※27)、これらは党の政策形成の基盤となっている。
特定の社会問題に対する参政党の立場は、党員・サポーターを対象としたアンケート調査の結果から詳細に分析されている。例えば、選択的夫婦別姓制度については、党員・サポーターの9割以上が一定の理解を示しているものの、「別姓を希望する」と回答した人はわずか2.0%に留まっている※28)。87.7%が「希望しない」と明確に回答しており、現行の「夫婦同姓+通称使用」で十分と考える人が大多数であることが示されている※28)。
この調査では、回答者の98.9%が「家族は同じ姓であるべき」という考え方に共感を示しており、家族の一体感や社会的な信頼、文化的な継承といった深い価値観が現行制度を支持する基盤となっていることが明らかになった※28)。
また、夫婦別姓が子どもに与える影響については、96.1%が「影響があると思う」と回答し、家族の一体感の喪失や心理的負担を懸念している※28)。これらの結果から、参政党は現行の夫婦同姓制度の維持を前提としつつ、旧姓通称使用の運用改善に取り組む方針を示している※28)。
健康・医療政策においては、新型コロナウイルス関連の主張として、ワクチン接種を「人体実験」と呼び、特定の勢力の利益のためと主張している※29)。また、マスク着用による「がんリスク」や「自己免疫疾患リスク」についても記載していた※29)。
これらの主張は、科学的根拠に乏しいと批判されている※29)。特に「終末期の延命医療費の全額自己負担化」という公約は、医療経済学の専門家から「事実誤認」と厳しく批判されている※30)。
死亡前1ヶ月間の医療費が総医療費に占める割合はわずか3%程度であり、この政策が医療費全体を大きく抑制する効果は期待できないとされている※30)。また、この公約は「金のない人は苦しんで死ねというのか」という批判を招き、経済的弱者から「生きる尊厳」を奪うものだという意見も存在する※30)。
3.4 批判的評価と論争点
参政党は、その主張の一部が「陰謀論」的であるとの批判を受けている。特にコロナ関連の主張では、ワクチン接種を「人体実験」と呼び、特定の勢力による操作を示唆する内容が含まれている※29)。
また、マスク着用とがんリスクの関連を主張するなど、科学的根拠に乏しい情報発信が見られる※29)。これらの主張は、主流の事実認識と乖離しており、誤情報の拡散リスクが懸念されている※29)。
参政党の神谷宗幣代表は、外国人を敵視する排外主義的な発言を繰り返していると批判されている※31)。具体的には、「仕事に就けなかった外国人が万引きとかして大きな犯罪が生まれている。日本の治安が悪くなる」や「出稼ぎに来ている外国人のいろんな社会保障まで日本が全部丸抱えするのは、明らかに過剰だ」といった発言が挙げられる※31)。これらの発言は、根拠を示さずに排外主義を煽るものだと批判されている※31)。
また、ジェンダーに関する発言も論争を呼んでおり、「子どもを産めるのは若い女性しかいない」「専業主婦はダメだという刷り込みをここ20~30年、男女共同参画推進でやってきた。そんなものつぶしてしまえ」といった主張は、多様性を否定し、特定の価値観を押し付けるものとして批判されている※31)。さらに、「発達障害など存在しません」といった、科学的根拠に欠ける発言も報じられている※32)。
参政党のSNS戦略は支持拡大に効果的である一方で、その運用には危険性も指摘されている。特に「切り抜き動画」は、発言の一部だけを切り取り、文脈を無視して拡散されることで、誤解や攻撃的な印象を与える可能性がある※26)。
専門家は、SNSにおける「相手に対する批判とか攻撃的な言葉が、どうしても負の連鎖を呼びやすい側面がある」と警告しており、情緒的な刹那的な感覚で情報が広がる状況は危うさを伴うとしている※26)。これは、参政党が支持を拡大する上でSNSを最大限に活用しているものの、その拡散のされ方によっては、意図しない形で批判や誤解を招くリスクを常に抱えていることを示している。
4. 結論
「推し活」と「参政党」は、現代日本社会において異なる次元で顕著な影響力を持つ現象である。
「推し活」は、江戸時代から続く日本の文化的な基盤の上に、現代のデジタル技術と多様性受容の潮流が融合し、経済的にも社会的にも巨大な現象へと発展した。年間3.5兆円規模の市場を形成し、個人の精神的健康や日常生活の充実感に寄与する一方で、過度な金銭的負担や人間関係のトラブル、SNSによる負の側面といった課題も抱えている。
その消費行動は単なる趣味の域を超え、個人のアイデンティティやライフスタイルを表現する手段となり、愛情の貨幣化という日本独自の文化も形成している。健全な「推し活」を維持するためには、個人の金融リテラシー向上とセルフケアに加え、業界全体の倫理的な慣行と社会的なサポート体制の強化が不可欠である。
一方、「参政党」は、既存政党への不満や浮動層を取り込み、SNSを駆使した草の根運動とデジタル動員によって急速に支持を拡大した新興政党である。国政・地方議会での議席獲得は、従来の政治的枠組みでは捉えきれない有権者のニーズを捉えた結果と言える。
彼らは、日本の伝統や国益を重視する保守的な政策を掲げる一方で、選択的夫婦別姓への反対や、科学的根拠に乏しいコロナ関連の主張、排外主義的・排他的な発言などで論争を呼んでいる。そのSNS戦略は支持拡大に貢献しているが、切り抜き動画などによる誤解や、攻撃的な言説の拡散といったリスクも内包している。
両現象は、現代日本社会における共通の潮流を反映している。
第一に、既存の枠組みや権威に対する人々の不満や不信感が、新たな活動や選択肢への関心を高めている点である。「推し活」においては、画一的な価値観からの解放や多様な自己表現の追求が見られ、「参政党」においては、既存政党への不満が新たな政治的受け皿を求める動きにつながっている。
第二に、SNSをはじめとするデジタルプラットフォームが、両現象の拡大と深化において決定的な役割を果たしている点である。情報の拡散、コミュニティ形成、共感の醸成、そして動員の手段として、デジタルツールは不可欠な存在となっている。しかし、その一方で、金銭的トラブルや人間関係の摩擦、「フェイクニュース」の拡散といった負の側面も顕在化している。
将来的に、「推し活」は多様なライフステージに浸透し、経済的影響力をさらに拡大する可能性が高い。企業は、この変化に適応し、より倫理的かつ持続可能なファンエンゲージメントの形を模索する必要があるだろう。
一方、「参政党」は、その支持基盤を固め、既存の政治勢力との間でどのような影響力を行使していくのかが注目される。彼らの政策が社会に与える影響や、批判的言説への対応は、今後の日本政治の動向を左右する重要な要素となるだろう。
両現象の動向は、現代日本社会の価値観の変化、テクノロジーの進化、そして人々の「つながり」への欲求を理解する上で、引き続き重要な示唆を与え続けると考えられる。
【引用文献】
- 日本人は昔から「推し活」好き⁉江戸時代から伝わる推し活が健康にも効果的な理由を解説
- 【推し活変遷を辿る】推し活理解の前提知識 – note
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- 参院選目前の意識調査で参政党の支持率が倍増している理由は …, 7月 20, 2025にアクセス、 https://go2senkyo.com/articles/2025/07/18/118323.html
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編集部より:この記事は島田裕巳氏のnote 2025年7月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は島田裕巳氏のnoteをご覧ください。






