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美しい国から楽しい国、共生社会、日本人ファーストの国、誇りを持った国・・・・
自民大敗、自公で50議席を割り、参政党と国民民主党の躍進で終わった参議院議員選挙で語られた国家ビジョン・社会像だ。
特に石破さんは「一人一人が実現する「楽しい日本」を国民の皆さま方と共につくり上げていきたい」と年頭会見でぶち上げていた。
彼は「日本全体がお互いを認め合い、尊重し合う「楽しいな」というものがすごく薄れているように感じています」「笑顔があって、お互いを尊重し合って、助け合う社会がありました。明るくて楽しかった。今の日本に欠けているものだと思います。」(自民党HP)とも語る。
石破首相が掲げたビジョンは、まったくもって正しい。日本社会に必要な相互協力と信頼の基盤こそ、将来不安を取り除き、過去の成功体験を忘れて、自分らしく生きていくための精神的基盤であるからだ。
今回の参議院議員選挙、国家ビジョンや社会像の論争は今回の参議院議員選挙では外国人問題を除いて、あまり行われていなかった。「楽しい日本」の具体策が語られることも、議論されることもあまりなかった。
戦後80年、激動の1995年からの失われた30年を経ている今、昭和の価値観や組織体制、権力支配構造などのひずみも限界が来ている。「楽しい社会」という石破ビジョンに対して、各党は別の価値観を提示してほしかった。
人口減少社会のビジョンがあってもいい
石破政権が掲げる「楽しい社会」を具体的にみると
- 個人の挑戦を支援する社会
- 「今日より明日はよくなる」と実感できる仕組みを整備。
- 若者・女性が地方で働きやすい環境づくり。
- 「令和の日本列島改造」=地方創生2.0
- 中央から地方への人の流れを生む政策。
- デジタル技術や新産業の創出を促進。
- 人財尊重社会の実現
- 賃上げと投資がけん引する成長型経済。
- AI・DXを活用し、地方経済を支える。
各党も、ほぼほぼ同意する内容、各論はほぼ賛成するだろう。
・国家イメージ:政府・官僚などエリート主導で全体主義か? 対話と熟議中心の民主主義か?
・社会像:アメリカのような弱肉強食の競争社会か? 欧州のような平等な社会か? 北欧型の高福祉高負担の福祉国家か?再配分をどの程度とするか? 移民をいれない同質的な社会か? 移民をいれた共生社会か?
・行政経営:中央集権か? 地方分権か?
という点で論点は分かれるが、それほどまでに大きな差はない。程度の違いや具体的な方向性や内容の違いで、差があるだけだ。
国家ビジョン・社会像で明確に論点が分かれるのは、共生社会、移民社会かどうか、という点、安全保障の方向性くらいだろう。その意味で、参政党が外国人問題を政策として打ち出し、また日米安保路線に対してのオルタナティブな視点を提案したのは功績と言えよう。
人口減少社会のビジョンがあってもいい
移民社会かどうか、安全保障のやり方とは別に、もう1つ真の論点がある。それは、少子化対策である。
各党も人口減少を止める、少子化対策を掲げているが、ここ何十年失敗しているのだから現実的に見て、相当困難である。少子化対策といっても、婚姻率も高まらないし、結婚意欲も高まらない。子育て環境を整備しても、働き方改革をしても、成果がでない。建前ばかりでいつまで少子化対策を続けるのか、あまりに現実的ではないと考えている。
筆者は「人口減少で何が悪い?:イーロン・マスクが言う日本消滅はない!」(過去記事)で記載したように、どのみち成熟経済のもとでは、他の国も同じ事態を迎えることになる。SDGsを突きつめれば、人間が多すぎるのだ。
資本主義社会は自動増殖的に新たな市場経済が拡大しつづけ、地球の資源を食い尽くす。熊さんが暴れだし、自然は災害に漸弱になり、地球社会での王様である人間の活動を抑制するのが自然ではないだろうか。
人口を増やすことに疑問を呈したうえで、持続的な社会は人口4000万人でも生きれる社会を構築していくというビジョンがあったっていい。この日本列島は、特に江戸時代、人間が自然と共生してきたことを思い返すべきだろう。人口減少で困るのはこれまでの高度成長期の発想でシステムを組み立てている行政機関だけだ。政治家は人口減少を前提にして社会像を提案してもよいだろう。
国家戦略を議論するとき
そうした国家ビジョンや社会像を踏まえて、重点政策分野選定・リソース配分、評価基準、経済安全保障、国際標準化、社会課題解決・成長戦略、防衛・安全保障、国家目標の統合性や実行力が日本の国家戦略における主要な論点である。
あれも、これも、ではない国家戦略、つまり、経済政策の優先順位を明確に合意していく必要があるだろう。減税・給付金、物価高対策、賃上げにしても、前提となる経済が再生しないと持続的にできない。
今回の各党の政策提案はAI推進、産業振興など、どの党も代り映えがないものであった。「日本病」の解決策を見いだし、国家ビジョンや社会像を打ち立て、新たな国家戦略を進めてもらいたいものだ。