祝・開業!期待が高まるジャングリア沖縄に死角はないのか?

ジャングリア、といってもご存じない方もいらっしゃるかもしれません。沖縄の北部にマーケティング会社の刀社が700億円を投じて完成させたテーマパークであり本日25日に開業します。同社の代表は大阪のUSJを再生させた森岡毅氏であります。

森岡氏はUSJのみならず、丸亀製麺、ネスタリゾート神戸、西武園遊園地などの再生も手掛け、高い手腕が評価されています。その氏が自社物件として手掛けたのがこの沖縄のテーマパークであります。

では大成功をするのか、個人的にはやや疑問視しています。もちろん、開園当初は素晴らしい人気を博すと思いますが、3年、5年後にどうなっているかであります。なぜそう思うのか、理由を記します。

石破首相も出席した記者会見 ジャングリアHPより

1. 遠すぎる

もともと沖縄の北部にはあまり観光客が来なかったところであり、また観光客が来ないから見どころも少ないという負の連鎖があったところです。その地のゴルフ場跡地に今回のテーマパークを作ったわけですが、那覇空港からは有料直行バスが出ますが、2時間10分かかるとあります。沖縄に行く人の主目的は海、自然、郷土料理、異文化体験だろうと思うのです。例えばUSJやディズニーが高い人気を誇ったのは街の中にあるために非日常を手軽に楽しめるからでした。

街から遠いテーマパークの例でみると長崎のハウステンボスがあります。同園は1992年に開業、96年には380万人が来場するもその後低迷、2003年に会社更生法の適用を受けています。再生法に基づき、経営改善努力をするもそれも失敗、2010年にHISが買収し、一次、活力を吹き返すも結局持たず、2018年ごろからは他社の出資を募るなどの資金繰り難に陥り、22年に香港系の会社に売却しています。

ジャングリアのロケーション ジャングリアHPより

ハウステンボスに行ったことがある方は実感していると思いますが、とにかく遠いのです。長崎県にあるのに長崎からの足は悪く、どちらかといえば博多からのアクセスに頼る感じでしょうか?宿泊施設があるし、夜のライトアップを売りにしているのでやむを得ず一泊という感じです。ではもう一度行くか、と言われたらテーマパークそのものは一生懸命やっているのですが、ハウステンボスだけのためにそれだけ時間を割きたくないというのが本音であります。

つまり遠すぎる場合、顧客からすると来場目的がそれでも十分に満足させられる「ディスティネーション」になる必要があるのです。、一時的には人気とかブームという言葉につられて人は集まるのですが、人気が剥離した時、手の施しようがなくなるのです。

よって、もしもジャングリアを目的地として成長させるならこのテーマパークを中心に一つの滞在型リゾート地として育成させることが重要かもしれません。日本では滞在型リゾートのコンセプトがほとんどないためにそこを育めるかどうかであります。ただ、ジャングリア、開館時間が夏と週末を除き、11時から17時までとかなり短いのです。アミューズメントが日光を必要とすることもあるのでしょうか。

リゾートとは何か、このブログで何度か記したことありますが、基本的には無計画に非日常を時間制限なくゆったりと過ごすことを言います。欧米人のバカンスとは宿と足だけは確保するもそこから先はのんびり探索なのです。ところが日本人を含め、アジア人はせっかちなのでテーマパークをいかに効率よく回るかということに忙しく必死に巡る体験型になってしまうのです。これは欧米ではありえない発想なのです。

2. 天気はイマイチ

沖縄のイメージはからっと晴れて美しい海というイメージですが、基本的にはあまり天気が良くないのであります。晴天率は概ね6割程度。これは海のリゾートとしてはあまり芳しくなく、沖縄に本格的リゾート施設が出来にくい一つの理由でもあります。メキシコのリゾート、カンクンの晴天率は80%程度あるし、メキシコ西海岸も安定しています。ハワイも70%強あり、スコールがあるものの一日中ずっと降ったり、台風がやってきて飛行機が飛ぶ飛ばないという焦りもあまりないでしょう。

そのためにジャングリアでは雨の日対策を打ち出しており、様々な工夫を凝らしています。つまり運営者は天気が安定しないことを想定済みでそのための対策を施しており、それは重要なことだと思いますが、客側もそれをわかっていて、リスクを取りたくないということはあるかもしれません。

多分ですが、沖縄が東アジアから近いことで香港、中国本土、台湾、韓国などアジア系の方々が数多く訪れると思います。ただ、私の予想は男性客比率が高まらないかもしれないとみています。また観光客のパターンとしてビーチなどでのんびりしたいという人とジャングリアに行く目的意識を持った人に分かれ、同じグループで別行動になるケースも生じるのではないかとみています。

ジャングリアHPより

3. 森岡氏の手腕

私も氏の関連の資料はある程度目を通しました。非常にデキる方です。問題はできる能力があるかどうかではなく、人には旬があるので、それをどう乗り越えるかであります。人気を博するとは一種のサプライズ感で、更なる注目の拍車がかかるのですが、人気が出すぎれば期待度が高くなり、はげ落ちやすくなるのです。

森岡剛氏 刀HPより

例えば星野リゾートでも一時の話題性から健全安定性に変わってきています。一方、野望だった北米進出には非常に苦労をしています。とすれば今回森岡氏は巨額の資金を投じて自社開発をした以上、どれだけ経営の健全性を高めるか、単なる一時的な人気取りだけではなくどれだけ水平展開できるかが試されることになるでしょう。

とはいうものの一度は覗いてみたいなとは思います。まずは開業おめでとうございますと申し上げます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月25日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。