公明党が総選挙、都議選、参議院選挙で三連敗している。理由として、創価学会員の高齢化もある。いまの日本では、真如苑が横ばいなのを除けば、伝統宗教もキリスト教も新宗教も軒並み不振で、その中で創価学会はよく踏ん張ってはいるが、漸減傾向である。
当然、支持団体である創価学会の漸減が公明党にも影響を及ぼし、2006年をピークに参議院比例区の得票数が減っているのは当然である。しかし、安倍内閣の2019年に653万票だったのが、岸田内閣の2022年に618万票と微減したあと、今回は521万票まで減ったことは尋常ではない。
2023年に池田大作・第3代会長が亡くなったことは平静に受け止められ、組織の動揺というのは見られないが、逆に弔い合戦としての底力の発揮もなかったといったところだ。いずれにせよ、創価学会の高齢化とは別の理由があるわけである。
その中には、ネット戦略の遅れがある。今回の選挙では、参政党や国民民主党に代表されるネットに強い政党が強かった。公明党・創価学会は聖教新聞をもっており、活字文化に強いのだが、それが裏目に出た。同様に、維新は関西の地上波を抑えているので関西では強いが、よそでは同じ手が使えないので伸びない。
政策と候補者についてもいろいろあるが、ここでは自民党との関係に話を絞りたい。
石破茂首相と公明党とは長い信頼関係があり、たいへん波長が合うといわれている。その淵源は、父親である石破二朗・鳥取県知事(当時)が岡山で開かれた創価学会の文化祭に出席したことにある。1971年のことだ。
令和7年5月 公明党「平和創出ビジョン」を受け取る石破首相 首相官邸HPより
石破は、公明党系の議員も合流した新進党にも参加(1996年の総選挙の直前に離党し、選挙後に自民党に復党)したこともあり、関係者との交流も長い。
政治姿勢としても、選挙民とのふれあい重視だし、政策的にも生活者の目線重視も共通している。憲法については、強固で自説にこだわる改憲派だが、合意形成を大事にするので急いでいるわけではないし、中国や韓国との友好重視も共通している。
だから、公明党はわりに石破首相に好意的なのだが、これが裏目に出ている。つまり、保守派の安倍政権のときは、公明党は適度なブレーキ役としてよい感じだった。平和安全法制のときでも、議論を尽くし、必要な歯止めをかけて成立に貢献した。
ところが、現在の石破政権のもとでは、野党との地道な橋渡しには貢献しているのだが、これは、だからといって票が増えない。たとえば、103万円の壁でも、デタラメな国民民主党案に対して、細かく必要な制度改善を提案し、低コストで狙いを実現したが、一般国民には分かりにくかったし、手柄はいい加減な案を出した国民民主に盗られた。
裏金問題では、自民党がゆるい処罰で逃げようとするのを公明党が厳罰を主張し、ほどほどの協力に留めるのならよかったのだが、岸田・石破首相が最初にやたら厳罰を打ち出し、実際にはそれほどでもないという対応をしたので、公明は出る幕がなかった。
公明党については裏金問題のとばっちりで票を減らしたが、保守派いじめを岸田・石破がして参政党を台頭させなかったら、埼玉、神奈川、愛知で参政党に負けることはなかった。
それに、自民党から離れた票は、残念ながら公明党にはいかないのだ。私も「自民党を今度は罰したいが、自公政権の安定は大事だ」と思う人は、比例で公明党に投票したらと書いていたが、それに応じてくれた人が多くいるとは思っていない。
選挙応援でも、安倍が公明党候補の応援に入れば、保守派もしぶしぶでも公明候補に入れた。ところが、公明候補に石破が応援に入れば、保守派は参政党に流れた。これが総選挙と参議院選での公明党敗北の大きな原因だ。石破が応援に入ったら、リベラルが公明に投票するのか? 普通はない。新聞が褒めても、投票や当落につながらないと意味がない。
安倍時代の「保守派の自民党首相」と「中道のブレーキ役としての公明党」はベストカップルだったと思うし、高市早苗ほど極端でなくても、保守色のやや強い後継首相に早くしないと、公明党にとっても悪夢が続くと思う。
【参照】
- 「石破にNOでなく自民にNO」:玉川徹氏の問題すり替え 八幡 和郎
- 自民党の退潮は「裏金処分」が軽すぎたから?重すぎたから? 八幡 和郎
- 参院選2025:期待と結果のズレ、予想外の展開とは 八幡 和郎
- なぜポピュリスト政治家は阪急沿線出身ばかりなのか 八幡 和郎
- 日本を救う斉藤鉄夫臨時首相・自公維連立構想の提案 八幡 和郎
- 参政党と保守党が石破ではなく自民党保守派を“粛清”? 八幡 和郎