オーストラリア政府は、16歳未満の子どもがSNSを使うことを禁止する法律を2024年12月に成立させ、2025年12月から施行する予定です。
当初、教育目的での利用が多いという理由からYouTubeは対象外とされていましたが、子どもが有害なコンテンツに触れるリスクがあるとして、7月末に新たに規制対象に加えることが決まりました。
この法律によって、16歳未満の子どもはYouTubeを含むSNSでアカウントを作れなくなります。対象となるのは、Facebook、Instagram、TikTok、X(旧Twitter)などで、違反した場合、事業者には最大約48億円の罰金が科される可能性があります。ただし、教師や保護者が教育目的で子どもに動画を見せることは認められています。
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この方針に対しては、日本でも懸念の声が上がっています。オーストラリアの規制は行き過ぎではないかという批判や、国家が家庭内のルールまで一律に決めてしまうことへの疑問が寄せられています。
また、ヨーロッパでも同様の規制の動きが進んでいますが、そこではSNSのアルゴリズムやターゲティング広告の問題を冷静に議論する声と、リスクをゼロにしようとする感情的な主張とが入り混じっており、そうした混乱のなかで法律が進められることに対する不安もあります。
さらに、宗教的な価値観が立法の背景にあるとの指摘もあります。
デジタルネイティブ世代にとって、YouTubeやSNSは日常生活に欠かせない存在であり、もはや基本的な人権の一部だという意見もあります。
アクセスを完全に禁止しても、子どもたちは技術的な抜け道を使って利用を続ける可能性が高く、規制が形だけのものになり、かえって若者との信頼を損なう危険性があるという指摘もあります。
このような動きを、子どもたちをSNSから遠ざけるのではなく、情報リテラシー教育を通じて対応すべきだとする冷静な見方もあり、今回のオーストラリアの判断を「社会実験」として見守るべきだという意見もあります。
規制の強化が子どもを守るという名目で進められる一方で、自由や教育のあり方という根本的な課題が置き去りにされていることが、今回の議論を通して浮かび上がっています。いずれにせよスマホの見過ぎはよくないということは言えそうです。
さらに、YouTubeはアカウントを持たなくても視聴が可能なため、こうした規制の実効性そのものに疑問を持つ声もあり、運営元のGoogleは強く反発しており、法的措置も検討していると報じられています。
このような未成年者のSNS利用規制の動きは、イギリスなど他の国々でも進んでおり、今後は国際的な議論が一層広がる可能性があります。