日本航空(JAL)が全社を挙げて生成AIの活用に取り組んでいるそうです。なんと社員の8割が「JAL-AI」という独自プラットフォームを利用しているとのことで、整備部門の正確性重視に配慮して「あえて生成しない」検索機能まで作り込んだというのですから、その真剣ぶりには感心させられます。
JAL-AIは、議事録作成からマニュアル検索、空港での乗客対応支援まで幅広い用途に対応し、現場の声を丁寧に拾い上げて実装された機能も多いとのこと。まさに「地に足のついたAI活用」といった印象を受けます。
ところが、そんなJALが誇る“現場密着型AI活用”のイメージを一瞬で吹き飛ばす出来事がありました。JALが新たに発表した年会費24万2000円の高級クレジットカード「JAL Luxury Card」の公式サイトに掲載された画像が、まさかの生成AI製だったのです。
しかも、画像の完成度が「ラグジュアリー」とは程遠く、X(旧Twitter)上では「ポップコーンにストローが刺さっている」「フォークが異形」「プールサイドに寝室用ベッド」「決済端末のボタンが謎配置」といった“味わい深いAIの暴走”が次々と発見され、ネット民の格好のネタとなってしまいました。
ポップコーンは修正されたが脚が生成された JAL Luxury Cardの公式サイトより
料理が不味そう/フォークの形がおかしいなどが指摘された JAL Luxury Cardの公式サイトより
自社カードじゃないと突っ込まれた JAL Luxury Cardの公式サイトより
自社開発のJAL-AIでは「RAGではハルシネーションが起こるから採用しない」と語っていたその企業が、なぜか最高級カードの顔となる画像で、AIの幻覚にまんまと乗せられてしまったわけです。
業務AIには精度を追い求めて「生成するな」と言いながら、ブランドイメージを担うWebサイトでは「とりあえず生成しておけ」という判断が下されたのだとすれば、現場主義もラグジュアリーもどこへやら。むしろこのAI画像騒動こそ、「人間の目による確認」というアナログな価値をあらためて教えてくれたのかもしれません。
空港で正確なマニュアル検索を求める整備士の真剣な眼差しの一方で、Webサイトではストロー刺さったポップコーンが「これでいこう!」とGOを出される。そんなJALのAI活用には、どこか涙ぐましいコントのような味わいがあります。
どうか次は、「JAL-AIで画像チェック機能」の導入をご検討いただきたいものです。