読売新聞は、生成AIを使った検索サービス「Perplexity(パープレキシティ)」が自社記事を無断で利用しているとして、約21億円の損害賠償と利用差し止めを求め、東京地裁に提訴しました。日本の大手報道機関が生成AI企業を訴えるのはこれが初めてです。
Perplexityのサービスでは、ユーザーの質問に対してAIがインターネット上の情報を要約して回答を提示し、引用元リンクも表示されますが、多くの利用者は要約に満足し、リンク先のサイトを訪れなくなります。このため、読売新聞は自社のサイト閲覧数と広告収入が減少し、記事制作の継続が困難になると主張しています。
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こうした動きは、より大きな問題の一端とされています。近年、AIチャットボットの普及により、ユーザーは従来の検索エンジンではなく、AIによる回答を得るようになっています。その結果、Webサイトへのアクセスが減り、広告収入の低下に直結しています。
推定では、検索エンジンからの月間トラフィックが過去1年で15%減少し、科学、教育、健康などの分野では10~30%台の減少も報告されています。
AIは利便性を高める一方で、情報源となるサイトからユーザーを遠ざけ、情報の供給そのものを干上がらせるリスクをはらんでいます。コンテンツが減れば、正確で信頼できる情報へのアクセスも損なわれる恐れがあります。
こうした懸念に対し、Googleは「AIによる概要表示後もWebサイトへのクリック数は安定しており、むしろクリックの質は向上している」と説明し、その影響を否定しています。
しかし、米ピュー・リサーチセンターの調査では、AI概要が表示されるとリンクのクリック率が下がるという結果も出ており、Googleの主張に対しては懐疑的な見方も少なくありません。
GoogleはAIのWebへの貢献を強調していますが、実際にはトラフィック減少に直面しているサイトが増えており、AIがもたらす構造的な変化を過小評価することはできません。Webという情報インフラの持続可能性が問われている今、Googleの楽観的な説明だけでは十分とは言えない状況です。