生成AI(人工知能)が経済格差を拡大する

AI(人工知能)がいよいよ一部の人だけのものから、誰もが当たり前のように使いこなす一般的なものとして普及する段階に入りました。

Andy/iStock

ChatGPTやDeepSeekといった良く知られたAIだけでなく、音声、映像、画像、動画というように得意分野を持ったAIが次々と誕生して、それらのAIを上手に使いこなす「AIを管理するAI」まで出てきています。

金融業界出身の同世代(60代)の友人が仕事の片手間にAIを使って作成したミュージックビデオを以前のブログで紹介しましたが、AIの導入が広がるとクリエイターの仕事はどうなるのでしょうか?

映像や音楽の世界だけではありません。

プレゼンテーション資料作成が得意なAIを使うと、テキストで指示を出すだけで数分経つとパワーポイントのプレゼン資料がアウトプットされてきます。証券会社のアナリストの企業分析レポートやコンサルティング会社の企業戦略レポートのような資料があっという間にアウトプットされるのは驚きです。

もちろん内容に関しては卓越したものではありませんが、このアウトプットをベースにしてAIとキャッチボールしながら内容をブラッシュアップしていけば、レベルは上がっていきます。凡庸なアナリストやコンサルタントに依頼するよりも圧倒的な低コストで何よりスピード感が違います。

私も遅まきながら契約書の作成などをAIにやってもらうようにしてみました。

「資産デザイン研究所が買主でA社が売主の〇〇物件の売買契約書を作成して」と入力すれば契約書らしきものが出てきます。

完全なものはすぐには作れませんが、最初にAIが作成したものを自分なりに修正して、それをまたAIに投げて問題点を指摘してもらう。そんな繰り返しをしていると自分でゼロから作るより圧倒的に早く書類を作ることができました。

最終的には弁護士に確認してもらわないと不安ですが、詰めの甘い弁護士よりはAIの方がクオリティが高いのではないかとさえ思えてきます。

AIは知的労働者の一部の人たちの仕事を奪うことになりますが、高いスキルの人までは駆逐できません。クリエーター、アナリスト、コンサルタント、弁護士といった知的労働者の2割が生き残り、8割が仕事を失う「2:8の法則」が実現するかもしれません。

AIによって同じ仕事をしている人の間の経済格差が拡大する。何となくやっつけ仕事をしてきた「8割の人たち」にとっては受難の時代になりそうです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。