大手コンビニチェーン衰退の原因は「日本の格差社会」

1974年5月にセブン-イレブンがフランチャイズ国内1号店である豊洲店を開店させてから日本のコンビニエンスストアは小売りの革命的な事業形態として独自の進化を続けてきました。

しかし国内のコンビニの店舗数は2021年の5万5950店をピークに減少に転じています。国内ではドラッグストアや小型スーパーとの競争が激しくなり守りに入る時代になりました。

また、ネットで気軽に注文することができるようになったのもコンビニの競争力を低下させています。

コンビニは24時間営業で店舗数が多く「価格はそれほど安くはないが便利」というのが一般的な認識です。

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しかし、日本経済の構造変化によって利便性よりも価格を重視する顧客が増えたのがコンビニが衰退している原因の1つだと思います。

価格を重視する人が増えたのはインフレの中で賃金の上がらない人たちが増えて実質所得が減少しているからです。

株高や不動産価格の高騰で資産を保有する人は資産が大きく増加しています。一方で資産を持たない人は恩恵を受けることができる実質賃金の低下に苦しんでいる。

このような「格差社会」によって価格志向の消費者が増えているのです。

コンビニの脅威となっているのは、より低価格で商品提供を行う小型スーパーのまいばすけっとやディスカウント店のトライアルです。

まいばすけっとは撤退したコンビニエンスストアの居抜きの物件を活用して初期投資を半減させ、生鮮品や割安の商品を提供し店舗数をこれから5年で2倍以上に増やすそうです。

また、まいばすけっとは全店舗が直営なので店舗同士の競合を考える必要がなく、店舗全体で収益を得られるような戦略を立てることができます。

トライアルは「トライアルGO」(写真)という小型コンビニを九州で展開し、今年7月にはスーパーの西友を買収しました。

西友を母店にして小型店舗を展開し総菜などの商品を配送することで競争力を高める戦略で東京に進出します。

店舗は基本は「無人店」で店舗にカメラを設置して売り場を遠隔管理。会計はセルフレジで廃棄ロスを減らす値下げの自動化システムもあるようです。

コンビニが通常3人体制なのに対し、トライアルGOでは平均1人以下とコスト削減できます。また価格の引き下げはコンビニではあまり行われていません。

コンビニは高級品志向の富裕層に対応した商品提供ができず、価格志向の強い実質賃金の下がっている消費者にも価格で対応することができず「日本の格差社会」に取り残されつつあります。

大手コンビニエンスストアは氷河期の恐竜のようになってしまうのか?新たなイノベーションが求められています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年8月日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。