そのマネーをどうするのか?:自分の生涯必要額の算出についてもっと知るべき

先日、日本のテレビニュースの特集で老後の年金生活について放映していました。2か月に一度の年金支給日にはATMの前に高齢者の列ができるというシーンもあれば年金を使わず蓄財している方もいました。年金と一口に言ってもそれまでにどの年金にいくら掛けたか次第で受給金額はまるで違います。企業年金をフルでもらえ、持ち家で健康障害もないなら年金だけで年に1-2度の旅行もできるし、程よい外食をしても一生暮らせそうです。

お金に対する感性も人によって雲泥の差があります。何歳になってもお金遣いが荒い人もいればよくそんな少ない金額で生活できるな、という方もいます。

そんなことは語る理由も必要もないわけでもちろん今日のテーマでもありません。それよりも自分の消費癖に見合った生涯必要額の算出についてもっと知るべきではないかと思うのです。更にお金を残してしまっても意味はない、という点も考えてみたいのです。

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私にとって死ぬとき、残してもよいと思うものは2つだけ。1つは自分の会社の株です。小規模零細企業ですが、不動産所有を通じた事業なので比較的事業継承はしやすい業種です。生前にバトンタッチしようが死後に遺言に基づき誰かに渡しても支障はほとんどないという事情はあります。同じ小規模事業者でも特定のスキルに基づく事業ですとその方の持つ能力で事業が成り立つ場合もあるため、先々事業継承は難しいケースは多くなります。例えば町工場経営や個人経営の飲食店は継承しにくいと思います。

もう1つの残しておいても良いところは自分の住む所です。持ち家VS賃貸の議論は盛り上がる話ですが、ある程度の年齢になると持ち家vs.賃貸に老人ホームという選択肢が加わります。老人ホーム入所だと自分の持ち家を売って入所金にする方も多いでしょう。一方、持ち家にずっと終末まで住み続けるなら家は残さざるを得ないとも言えます。私はグループホームを経営する中でそこに入所したいか、と聞かれるとできれば訪問介護の方が良いかなと思っています。(もちろん、健康上やむを得ない時は別です。)

これが一般的に当てはまるかどうかは別として、これを前提に考えると現預金という資産と年金というインカムに基づいて自分の余生を経済的に計算して、終末までにある程度使い切るというプランが基本になります。「何歳まで生きるかわからないのにそんなことできるわけがない」とおっしゃる方に対して私が言いたいのは感性としてコンサバになりすぎたり楽観視せず、もう少し自分の消費性向を客観的に見たうえで現実的になるべきと思うのです。報道で2000万円必要だと言われ、その枠組みにはめられた人は多いと思います。そうではないのです。

私のアプローチは平常月にいくら使うか、一年に一度から数回程度の非日常出費がどれぐらいあるのか、いざという時の出費とはどのような「いざ」を見込み、それはそれぞれいくらなのか、ここまで計算していくとずいぶん大雑把ながらも生涯必要経費はあらかたつかめると思います。

実は私はとりあえず、2036年までの計算はし終わっています。今から11年分、75歳という括りまでです。計算して驚いたのは仮に今日、リタイアしてもお金が増え続けるという現実でした。理由はカナダなので運用益が多く、一方で個人的に費消が少ないからです。また年金を何歳から貰うべきか、これも計算したのですが、結論からすると日本の年金は65歳から貰うのが正解であります。理由は70歳以降まで年金受給を引き延ばしてもその増額分にキャッチアップするには83歳ぐらいまで待たないと「得をしない」計算でした。その年齢まで健康ないし、生きている確率と年金受給の損得勘定ではおのずと応えは出てくるのです。

私の場合、平常月は何歳まで生きても増えるという計算になるので自分の余命が何歳だろうが関係ないのです。何歳まで生きようが平常月という考え方のアプローチをすればエクセルシートの列を右にどんどん伸ばしていけばよいだけで困難な計算ではありません。

非日常出費である旅行や子供や孫への出費も年齢と共に減ってくるものでしょうから、これも管理可能数値です。とすると最後、わからないのが老人ホームへの入所や健康障害による想定外の出費であります。多分、その出費は人生の最も後半から末期に起こりやすいことなのでそれは資産の取り崩しをすればよいと考えればどうでしょうか?

平常月は年金と運用で収支をプラスにすることで老後は困らないという結論に至ります。さて、年金は決まった金額ですが、運用益はどうするか、です。私が資金運用を長年実践してきたのはこの感性を養う為もありました。その上で私の考えを述べると、もしも一定年齢から運用を始めるなら基本は配当株ないし、REITの配当という手堅いもので安定した収益を得るのが良いと思います。個人的に投資信託でよい思いをしたことはないです。

株の配当もよく知らない小さな会社よりもなじみのある大手企業や金融機関などは比較的業績も安定しており、配当狙いとしては王道でしょう。仮に1000万円分を配当4%の会社に投資すると年40万円ないし月33000円が加算されます。(税金はここでは考えません。)株価は下がるじゃないの、と思われますが、別にずっと所有しているなら減配がない限り年40万円はゲットできます。これがJ-REITなら8%台の利率になるのです。つまり年80万円、月に66000円。ほぼ国民年金と同額になるし、国民年金受取額が2倍になるとも言えるのです。

全然貯金がないという方にはアドバイスにはならないかもしれませんが、考え方として平常月という捉え方をすると老後不安は少し緩和されるのではないでしょうか?少なくとも持っている金融資産に一生懸命働かせる、これが私の意見です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年8月17日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。